第215話 寝不足だけで仕方ない

 あぁ、そろそろ眠くなってきたなぁ。

 早くこの人を追い払って寝ないと厳しいな。


「まぁ、そういうわけなんで俺は眠いので寝ますんで」


「もう、仕方ないなぁ~じゃぁお家デートで良いわよぉ~」


「そう言う事じゃないんですけど……」


「もう、せっかくのオフに会いに来て上げたんだよ! もっと喜んでよ!」


「嬉しくないんで」


「そんなハッキリ言わなくても!!」


「だって眠いし……」


「睡魔に私が負けるなんて……」


 時と場合にもよるが大人気アイドルと眠気、一体どっちを取るかと言われれば恐らく一般人は大人気アイドルを取るだろう。

 しかし、俺は一般人ではなく少しひねくれた高校生なので普通ではない選択する。

 もうそろそろ瞼が重くなって来たな。

 早くお部屋のベッドで眠りたい。


「じゃぁ、お昼まで寝てて良いわよその間私は貴方の寝顔でも見て待ってるから」


「何で午後から一緒に出掛ける前提なんですか……」


 帰る気はないようだな。

 マネージャーの岡島さんに引き取りに来てもらうか?

 いや、でも川宮さんがオフでもマネージャーさんは仕事か。

 さて、どうするかな。

 面倒だし、このまま午後まで待っててもらうか?

 

「せっかくのオフなんですから、他の人とどこかに行っては?」


「だからここに来たのよ?」


「それは光栄なことで……」


 そんなキラキラした目で言わないでくれ。

 この人の気持ちを知っているからか、なんだか申し訳ないな。

 大人気アイドルだし、俺以上に休みなんて無いだろうし。

 仕方ないか……。


「はぁ、じゃぁ少しだけですよ」


「本当に!? 良いの?」


「はい、まぁ貴方にはお世話に……」


 なってねぇな。

 良く良く考えたら。





「さぁ! どこ行く? 映画? それとも買い物? それともホテ……」


「買い物でお願いします」


 俺は眠たい目をこすりながら、準備を済ませ川宮さんと街にやってきた。

 川宮さんもいつもの変装メイクで素顔を隠し、今は俺の腕にしがみついている。

 いつから俺はこんなに他人に甘くなってしまったのだろうか?


「買い物? も、もしかして私の下着を選びたいの?」


「他にも買い物っていろいろあるでしょ……」


「し、仕方ないなぁ……圭司君が選びたいなら……」


「話し聞こえてないのかこのスケベアイドル」


 とりあえず俺達は近くのアパレルショップにやってきた。

 

「どうかな? 圭司君?」


「良いんじゃないですか」


 試着した服を見せながら川宮さんは俺にそう尋ねてくる。

 

「もう! ちゃんと見てよ!」


「見てますよ」


「あら、可愛い彼女さんですねぇ~彼氏さん」


「え?」


 うわっ!

 出たよ、服を見ているだけなのに声を掛けてくるアパレルショップ店員!!

 はぁ、俺こういうの苦手なんだよなぁ。


「彼女じゃないっすよ」


「もう! そんなテレちゃって~彼女さんにちゃんっと可愛いって言ってあげないと!」


「はぁ……」


 うぜぇ……まぁ、この店員さんも仕事でやっているんだろうしな。

 大変だな、働くって。


「それにしても羨ましいですねぇ~彼氏さんもイケメンで、美男美女なんですね」


「はい、自慢の彼氏です~」


「おい、さらっと嘘つくな」


「えぇ~カップルじゃないんですか?」


「はい、この人の妄言です」


「もう! 妄言だなんて失礼ね! 将来はそうでしょ?」


「どうでしょうね」


 なぜか店員さんは俺と川宮さんに興味深々だった。

 いい加減どっかに行かないかな?


「可愛いらしい方じゃないですか、何が不満なんですか?」


「いや、不満っていうか……」


「そうよ! さっさと私と付き合ってよ!」


「川宮さんは黙ってもらえます?」


 なんでアパレルショップで店員と川宮さんに詰められなきゃいけないんだ……てか、店員仕事しろよ!!

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