第213話 それはご都合展開
「それで、お前はどうだったんだ?」
俺は隣で成績表を見つめる井宮に尋ねる。
「……」
「おい、聞いてるのか?」
「あ、あのさ……これって誰かの成績表と間違えてない?」
「は?」
まさかあんまり伸びてなくて現実逃避か?
まぁ、付け焼刃みたいな勉強だったし、そこまで伸びてなくても仕方ないだろうな。
俺はそんなことを考えながら、井宮の成績表を見る。
「えっと、80……78……93……はぁ!?」
なんと、成績は爆上がりしていた。
しかもクラス内の順位は5位とかなり高い。
こいつ、もしかしてやらないだけでやれば出来るタイプか?
「いやいや、絶対これ私の成績表じゃないって! 絶対先生間違えてるよ!」
「自分で疑うレベルかよ……でも出席番号も名前も全部あってるだろうが」
「ほ、本当だ……」
「良かったじゃねぇか、赤点回避どころか成績が大幅に伸びて」
あんなにテスト中も焦ってたのにまさかここまで高得点とは……。
こいつ、いままで勉強の仕方を知らなかったのか?
「これでイベントには行けるな」
「まさか私って……天才?」
「図に乗るなよ」
何はともあれテストは終了。
残念ながら夏休みに赤点で補習になった生徒もいたが、お盆周辺なら補習も終わっているということで死んでいた男子達は無事息を吹き返した。
「しっかし、どうするよ? 40人だぞ?」
「そうだよね、かなりの団体だしやっぱり保護者とか必要なんじゃないかな?」
「流石に夏休みの真っ只中で40人が泊まれる宿も見つからないしな」
放課後、俺は池内と海旅行の打ち合わせを教室でしていた。
計画は難航していた。
まずはその人数の多さだ。
40人なんて大人数が宿泊する貯めにはそれなりに大きなホテルや旅館が必要だ。
しかし、夏休みの一番忙しい時に一か月前からでは予約が難しい。
俺と池内は頭を悩ませていた。
いや、てかなんで俺が幹事なんだよ、他の奴頼むから変わってくれよ!
「どうするよ?」
「俺に言われてもなぁ」
こればっかりはどうにもならない。
はぁ~あ、どっかに金持ちでホテルとか経営してる親がいるとかいう奴居ねぇかな?
「ん? やぁ、親友じゃないか!」
「最上、お前何してんだよ放課後に」
「先生の手伝いでね、君たちは何を?」
「海旅行の打ち合わせだよ、丁度良いからお前も考えろ。40人泊まれる宿なんてあるか? この時期じゃやっぱり厳しい……」
「あぁ、それならうちのホテルに来るのはどうだい?」
「は?」
「そうか、その手があった!」
最上の提案に池内が大声を上げて立ち上がった。
「最上の親はホテル経営にリゾート開発、それに娯楽施設の建設に携わってる企業の代表だった!」
マジかよ……てかこんな都合よくそんなキャラ出る?
「お、お前の家ってそんな金持ちなの?」
「あれ? 言ってなかったかい? 最上コーポレーションってうちの会社なんだ」
そういえば聞いたことがある。
確かにCMもやってたな、有名な女優が出てたっけ。
「確か父さんが新しく建設したリゾートホテルの試験営業をするって言ってて、丁度その時のお客さんを探していたんだ」
「なんだそのご都合主義……」
「本当か! やったな前橋! これで計画が進むぞ!」
「あぁ、はいはい」
最初から最上に頼れば良かった……。
しかし、最上は親とあんまり上手く言ってない感じだったけど、大丈夫なのか?
まぁ、他人の家の事情に口を出すのも無粋だけど。
「お前が迷惑じゃないなら、俺たちには願ってもない提案だが……いいのか?」
「あぁ、もちろんだ。それに……うちの両親に親友を紹介したいと思っていたしな!」
え?
なんで?
どういうこと?
てか、親ってあの厳しそうな母ちゃんだろ?
うわぁ……紹介されたくねぇ……。
そんなこんなで海旅行の問題は解決した。
夏休みはもうすぐそこだ。
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