第211話 テスト始まるってさ

「まぁ、欲しいものを追い求めるという点では女子はハンターかもしれませんね」


「良いのか、お前はそれで……」


「はい、私は諦めませんから」


「……」


 中学の頃からこいつは変わった奴だと思ってた。

 なんで俺何かを慕ってくれているのか、理由が未だに分からない。

 ただ、一つだけ分かるとすれば、俺はこんな良い奴を二回も振った最低な男だって事だけだな……。


「まぁ、今日は一緒に寝てくれてるので勘弁して上げます」


「そんな事で許されるのかよ」


「はい、先輩が私に欲情して勝手に私を求めてくれるかもしれないので」


「絶対無いから安心しろ」


「そんな事言ってぇ~先輩も男の子じゃないですかぁ~」


「個人的に女って生き物にはあまり良い印象が無いんでな……」


 まぁ、あの姉貴が生まれた時から傍に居たのが大きな影響だと思うが……。


「へぇ~じゃあこんな事をしても興奮しないと?」


 高ノ宮はそう言いながら俺の布団に入り込んできた。

 風呂上りのせいか、なんだかいつもよりもいい香りがするような気がする。

 それよりもこの状況は色々ヤバイ。


「おい、出ろ!」


「興奮しないなら別に良くないですか?」


「良くねぇよ! 出ろ馬鹿!」


「あぁ、無理です。なんか思った以上に居心地良いので」


「おい馬鹿! 出ろっての!」


「はぁ~クーラーの効いた部屋で暖かい布団に包まって寝るってなんか贅沢ですね」


「冬場に暖房ガンガン聞かせてアイス食べるみたいなこと言ってないで、さっさとどけ!」


「えぇ~良いじゃないですか~これで寝ましょうよぉ~」


「嫌に決まってんだろ!」


 こんなの姉貴にバレたら絶対にヤバイ。

 というか、下に井宮も居るんだった!

 こんな騒いでいると下に居る二人が……。


「圭ちゃん?」


「げっ!」


 やっぱりきやがった。

 ヤバイ、こんな所姉貴に見られたら、買い物に付き合うどころの騒ぎじゃなくなるぞ!

 ど、どうする……。

 いや、多分もう俺は分かってるんだ。

 ここで慌てて無駄な抵抗をしても……。


「開けるわよ?」


「あぁ、はい……」


 結局無駄だということを……。

 姉貴はドアを開け、俺と高ノ宮を見た後満面の笑顔で俺に尋ねる。


「圭ちゃん? これはどういうこと?」


「………」


 人生諦めが肝心だというが、諦めても恐怖心が消える訳じゃないんだな……。

 てか、後ろに井宮もいるし……。

 その後、俺は一階のリビングに連行され姉貴にお説教を食らった。

 まぁ普通に考えて女の子を部屋に連れ込んで寝てたわけだし、当たり前だよな?

 でも、結構重要な理由があったんだけどな……。

 そして翌日。


「どうも、ありがとうございました」


「ま、圭ちゃんのお願いだからね」


「じゃぁ行って来るよ」


「圭ちゃんは浮気しちゃだめよ?」


「姉貴怖いよ……」


 翌朝、俺と井宮は揃って家を出た。

 姉貴の学校は振り替え休日で休み、高ノ宮は日直とかで朝早くに行ってしまった。


「昨日の夜は随分お楽しみだったみたいね」


「ちげーよ、って言っても説得力ねぇか……」


「当たり前よ、アンタも男なんだし。まぁでもアンタにそんな度胸があるとも思えないけど」


「はいはい、どうせ俺はビビりですよ」


「それで、昨日はあの子と話したの?」


「まぁな、でもあいつは俺を諦める気はないらしい」


「でしょうね、あのがどれだけ本気でアンタを好きなのか見てて何となく分かるもの」


「そうなのか?」


「鈍感なアンタには分からないでしょうね」


「俺は鈍感ではないぞ?」


 むしろ流行には敏感な方だ!

 まぁ、流行と言ってもゲーム流行だが……。


「あんたが鈍感じゃなかったら、恐らくアンタの回りの女性関係はもっとスッキリしてるわよ」


「何をいってるんだ?」


「なんでもないわ、それよりアンタイベントに行く準備しっかりしておきなさいよ」


「その前にお前が赤点回避しろよ」


「大丈夫よ。だって……私も行きたいし」

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