第210話 夜のお話

「なんですか?」


「……俺はお前と付き合う来は無い」


「………」


「別にお前が嫌いとかそう言うわけじゃない」


「……じゃぁ、なんなんですか?」


「今は彼女を作る気が俺にないってのが大きい理由だ。お前に限らず、俺は今誰に告白されても付き合う気はない」


 ま、そんなことをする奴はそうそういないだろうけど。


「そう言う訳だ、分かったらもう諦めろ」


 突き放す言葉が時には優しさにもなると俺はそう思った。

 ユマリは可愛いし、俺なんかよりもきっと良い男が見つかる。

 俺みたいな優柔不断でゲームをすることしか取り柄のない男なんかが振り向くのを待っているよりも、新しい恋を見つけた方が良い。

 そう思っていた。


「そうですか……やっぱりそうですよね」


「なんだよ、やっぱりって?」


「だって先輩、昔から口癖みたいに言ってたじゃないですか」


 なんか俺言ってたっけ?


「恋人なんてクソって」


「そんな直接的に酷い事を言ってました?」


 恐ろしいな反抗期……。


「まぁ、だから正直先輩の彼女に簡単になれるなんて思ってませんでしたよ」


「じゃぁなんでお試しなんて言い出したんだよ?」


「そんなの先輩は高校でモテまくってるからに決まってるからに決まってるじゃないですか」


「はぁ? 俺がモテまくってる?」


 どっからどう見たらそう言う風に見えるんだ?

 モテまくってなんかいないだろ?

 あれか?

 高校入って異性の知り合いが増えたからそれを誤解してるのか?


「圭司君変わりましたね」


「変わった?」


「はい。昔は学校終ったら真っすぐ家に帰って自室に籠ってゲームをする人間でした」


「今でもそうだが?」


「いえ、同じようで違いますよ。少なくともクラスメイトに勉強なんて教える人じゃありませんでした」


 言われてみればそうかもしれないな……。

 前ならこんな面倒なことしなかった。

 ましてや家に連れてきて姉貴に家庭教師を頼むなんて絶対にしなかった。


「高校に入った影響ですか? それとも誰かの影響ですか?」


「さぁな」


「まぁでも私はその変化は良い変化だと思います。昔の圭司君を知ってる私た笹原先輩からしたら安心しますよ」


「そこまでかよ……」


 俺の中学時代。

 それは恐らく世間一般からみたら相当酷いものなんだろうな。

 まぁ、リアルにボッチだったし、軽くいじめにもあってたからな。


「でも、私にとってはライバルが増えて大変ですよ。思わず圭司君に近づく女性全員を権勢しちゃいました、てへっ」


「おい、可愛くねーぞ」


「酷い!」


「あのなぁ、お前は勘違いしてるかもしれないけど、俺はモテないぞ? ちょっと高校に入って色々あって、女子の友人が増えただけだ」


「本当ですかぁ~?」


 まぁ、約一名からはガチで告白されたけど……今はそれは良いだろう。

 

「ま、でも先輩の性格上、彼女なんて当分作らないだろうなとは薄々感づいてましたよ」


「なら……」


「はい、今回は引いてあげます。でも覚悟してくださいね! 最後に圭司君の隣に居るのは私なんですから!」


「何の宣言だよ……好きな奴が出来たらさっさとそっちに乗り換えろ、俺なんかの事を待つ必要はない」


「そうですねぇ、圭司君が私以外の誰かの物になったら考えます。でも圭司君がフリーで居る限り、私は圭司君を狙ってますからねぇ~」


「お前はハンターか」

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