第209話 しっかりとしよう
*
こうして、俺の家での井宮強化合宿が始まった。
「さぁ、井宮さんこれからは私のことは先生と及びなさい」
「どっから持ってきたんだ、そのスーツ……」
レディーススーツに眼鏡まで掛けてやる気満々の姉貴であった。
「よ、よろしくお願いします」
しかし、喧嘩する様子が無くてよかった。
また姉貴が俺が女子を家に連れて来たと文句をいうと思ったが、約束をしたことで今回は大丈夫なようだ。
「そこはこうやって解いた方が良いわ」
「はい」
勉強も順調そうだ。
姉貴がいれば俺はいらなさそうだな。
リビングで真面目に勉強する井宮に気をつかい、俺は部屋に戻った。
俺も気を抜くと赤点をとりかねない。
部屋に戻って俺は俺で勉強を始めた。
しかし……。
「圭司くん遊びにきましたぁー!」
「またお前か……」
今日も高ノ宮がやってきてしまった。
「勉強してるんだ、邪魔しないでくれるか?」
「わかってますよ、私は今日も部屋でゴロゴロしてますから」
「全く、おまえも受験生だろうが」
俺は高ノ宮に構わず勉強を続けた。
「そういえば誰か来てるんですか? それにお姉さんも来ないし」
「あぁ、井宮が姉貴に勉強を見て貰ってるんだ」
「え? 井宮さんってこの前会った?」
「あぁ、あいつ赤点取りそうでやばいからな」
「ふーん……」
なんとなくだが、高ノ宮の機嫌が悪くなるのを感じた。
「でももう遅いですよね?」
「あぁ、今日は家に泊まるんだよ」
「私も泊まったことないのに……」
まぁ、そりゃそういうよな?
俺は井宮を連れてくる前に高ノ宮のことも考えていた。
井宮が泊まるといえば高ノ宮も泊まると言いだすのは必然だ。
だから俺は先手を取ってこういった。
「お前も泊まってけよ」
「え!?」
俺の提案が意外だったのか、高ノ宮は驚いていた。
まぁ、今まで突っぱねてきたから驚くのも無理ないか。
「じゃ、じゃぁ一緒に寝ましょうよ」
「あぁ、いいぞ。風呂先入って来いよ」
「えぇ!?」
これも俺の計算通りだ。
恐らく井宮と姉貴は徹夜で勉強をするだろう。
何もいわなけれな高ノ宮がいることさえバレることはないだろう。
だから俺はこの機会を利用して、こいつと向き合ってみようと考えたのだ。
「あ、あの圭司君何か変な物でも食べました?」
「別に普通だよ、良いから風呂入って来い」
「は、はい……覗いても良いですよ?」
「馬鹿、早く行け」
「は~い」
高ノ宮の機嫌は戻っていた。
さて、高ノ宮用の布団を敷いて置くか。
俺は来客用の布団を一階に取りに向かった。
一階のリビングでは井宮が一生懸命勉強していた。
あいつも頑張ってるんだ、俺もちょっと頑張らないとな……。
「本当に良いんですか? 一緒の部屋で……」
「あぁ、仕方ないだろ」
高ノ宮に続き俺も風呂に入り、部屋に戻ってきた。
明日も早いのでもう今日は寝るつもりだ。
「ベッドはお前が使えよ、俺は床でいいから」
「あの一緒に寝るって選択は?」
「ない、いいからさっさと寝ろ」
「はーい」
電気を消し俺は布団に入った。
とはいえ、このまま眠る気はない。
「高ノ宮」
「ユマリです」
「……ユマリ」
「はい、なんですか?」
「なんで俺なんだ?」
「なんでとは?」
「なんで俺と付き合いたいんだ?」
今日俺はちゃんと高ノ宮……いや、ユマリと話しをしようと考えていた。
「そんなの圭司君が好きだからですよ」
「それは素直に嬉しいよ、ありがとよ」
「もう、なんですか急に?」
「俺とお前の関係をしっかさせておきたいと思ってな……」
「………まだ一週間経ってませんよ?」
「わかってる、でもお前に話しておきたいことがあるんだ」
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