第209話 しっかりとしよう


 こうして、俺の家での井宮強化合宿が始まった。


「さぁ、井宮さんこれからは私のことは先生と及びなさい」


「どっから持ってきたんだ、そのスーツ……」


 レディーススーツに眼鏡まで掛けてやる気満々の姉貴であった。


「よ、よろしくお願いします」


 しかし、喧嘩する様子が無くてよかった。

 また姉貴が俺が女子を家に連れて来たと文句をいうと思ったが、約束をしたことで今回は大丈夫なようだ。


「そこはこうやって解いた方が良いわ」


「はい」


 勉強も順調そうだ。

 姉貴がいれば俺はいらなさそうだな。

 リビングで真面目に勉強する井宮に気をつかい、俺は部屋に戻った。

 俺も気を抜くと赤点をとりかねない。

 部屋に戻って俺は俺で勉強を始めた。

 しかし……。


「圭司くん遊びにきましたぁー!」


「またお前か……」


 今日も高ノ宮がやってきてしまった。

 

「勉強してるんだ、邪魔しないでくれるか?」


「わかってますよ、私は今日も部屋でゴロゴロしてますから」


「全く、おまえも受験生だろうが」


 俺は高ノ宮に構わず勉強を続けた。


「そういえば誰か来てるんですか? それにお姉さんも来ないし」


「あぁ、井宮が姉貴に勉強を見て貰ってるんだ」


「え? 井宮さんってこの前会った?」


「あぁ、あいつ赤点取りそうでやばいからな」


「ふーん……」


 なんとなくだが、高ノ宮の機嫌が悪くなるのを感じた。


「でももう遅いですよね?」


「あぁ、今日は家に泊まるんだよ」


「私も泊まったことないのに……」


 まぁ、そりゃそういうよな?

 俺は井宮を連れてくる前に高ノ宮のことも考えていた。

 井宮が泊まるといえば高ノ宮も泊まると言いだすのは必然だ。

 だから俺は先手を取ってこういった。


「お前も泊まってけよ」


「え!?」


 俺の提案が意外だったのか、高ノ宮は驚いていた。

 まぁ、今まで突っぱねてきたから驚くのも無理ないか。


「じゃ、じゃぁ一緒に寝ましょうよ」


「あぁ、いいぞ。風呂先入って来いよ」


「えぇ!?」


 これも俺の計算通りだ。

 恐らく井宮と姉貴は徹夜で勉強をするだろう。

 何もいわなけれな高ノ宮がいることさえバレることはないだろう。

 だから俺はこの機会を利用して、こいつと向き合ってみようと考えたのだ。


「あ、あの圭司君何か変な物でも食べました?」


「別に普通だよ、良いから風呂入って来い」


「は、はい……覗いても良いですよ?」


「馬鹿、早く行け」


「は~い」


 高ノ宮の機嫌は戻っていた。

 さて、高ノ宮用の布団を敷いて置くか。

 俺は来客用の布団を一階に取りに向かった。

 一階のリビングでは井宮が一生懸命勉強していた。

 あいつも頑張ってるんだ、俺もちょっと頑張らないとな……。


「本当に良いんですか? 一緒の部屋で……」


「あぁ、仕方ないだろ」


 高ノ宮に続き俺も風呂に入り、部屋に戻ってきた。

 明日も早いのでもう今日は寝るつもりだ。


「ベッドはお前が使えよ、俺は床でいいから」


「あの一緒に寝るって選択は?」


「ない、いいからさっさと寝ろ」


「はーい」


 電気を消し俺は布団に入った。

 とはいえ、このまま眠る気はない。

 

「高ノ宮」


「ユマリです」


「……ユマリ」


「はい、なんですか?」


「なんで俺なんだ?」


「なんでとは?」


「なんで俺と付き合いたいんだ?」


 今日俺はちゃんと高ノ宮……いや、ユマリと話しをしようと考えていた。


「そんなの圭司君が好きだからですよ」


「それは素直に嬉しいよ、ありがとよ」


「もう、なんですか急に?」


「俺とお前の関係をしっかさせておきたいと思ってな……」


「………まだ一週間経ってませんよ?」


「わかってる、でもお前に話しておきたいことがあるんだ」

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