第208話 家庭教師
「ごめん、遅れちゃって」
「いや、俺らも今着たとこだ」
「先生に捕まっちゃって……二人とも仲直りしたんだね」
「おかげさまでね」
「色々心配させて悪かったな」
「ううん、大丈夫。でも本当に良かったよ」
高城も加わり、俺達は勉強を始めた。
そしてそこで重大な事実を俺たちは目の当たりにした。
「井宮! お前点数下がってんじゃねぇかよ!」
「し、仕方ないでしょ! 色々あったんだから!」
「だからってなんでこんなに下がるんだよ! テストはもう少しなんだぞ!」
井宮の成績がかなり落ちていた。
まぁ、確かに俺との事とか最上の事とか色々あったのは分かるけど、だからってここ数日でここまで下がるか?
「お前、このままじゃ赤点だぞ」
「わ、分かってるわよ!」
まずい……いくら学年一位の最上や成績優秀な高城が教えていると言っても、これじゃぁ放課後の勉強会だけで赤点回避なんて難しいぞ。
「時間的に今日はここまでだね」
「あぁ、そうだな……だが、後数日で点数を伸ばすなんて出来るか?」
「少し厳しいかもね……」
「う……ご、ごめん」
さて、どうするか。
このままだと井宮は夏休みに補習地獄だし……。
教え用にも時間が無い。
なんとか効率的にしかも短期間で点数を伸ばせれば良いんだが。
「そんな都合の良い方法ないよな……」
「じゃぁ、僕はここで親友また学校で」
「あ、おう」
「私も帰るね、バイバイ」
「あぁ、じゃぁな」
勉強を終え、俺たちははファミレスを後にした。
帰る方向が逆な最上と高城とはファミレスで別れた。
残った俺と井宮は歩きながらどうやって成績を伸ばすか考えていた。
「はぁ……徹夜で勉強するしかないかな?」
「まぁ、だろうな」
徹夜で勉強すると言っても効率的にやらないと覚えられない。
このままじゃ、イベントに二人で行けないなぁ……。
それは俺にとっても困った事態だ。
よし!
「井宮、今から俺の家に来れるか?」
「え? え!?」
「どうなんだ?」
「い、いや……も、もう遅いし……迷惑じゃ……」
「うちは両親がほとんど家に居ないから大丈夫だ」
「で、でも帰り遅くなるし」
「なんなら泊れ」
「えぇぇ!?」
「うちで勉強するぞ」
「ま、マジ………」
なんで顔を赤くするんだ?
風邪か?
俺達はまずは井宮の家に向かい、着替えなどの泊るのに必要な物を取って俺の家にやってきた。
「き、来ちゃった……」
「ま、入れよ。あ、でもちょっと待て、姉貴に話して来るから」
「あぁ、そっか……あのお姉さんも居るのね」
玄関の扉を開け、玄関先で井宮を待たせ、俺はリビングの扉を開けた。
「あら圭ちゃんお帰り!」
「あ、あぁただいま。姉貴……頼みがあるんだけど……」
「どうしたの? ん? なんか……別な女の匂いが玄関からするんだけど?」
時々姉貴が超能力者何じゃないかと俺は思ってしまう。
仕方ない、正直に言うか。
「実は井宮の勉強を見てやって欲しいんだ」
「え? あの子の?」
うわっ……一気に機嫌が悪くなったよ。
姉貴は成績がかなり良い。
しかも、教えからも抜群に上手い。
受験勉強の時に姉貴には家庭教師をして貰い、その指導力の高さを知っている。
だから井宮を家に連れてきたのだ。
だが、このままじゃ姉貴は家庭教師役を受けてくれないぞ……。
はぁ……イベントのためだ、これくらいは我慢しよう。
「手伝ってくれたら、今度一日買い物でもなんでも付き合います」
「それは本当!?」
「本当です……」
「すっごい嫌そうな顔ね、心配だからボイスレコーダーにさっきの言葉録音していい?」
「手伝ってくれるなら良いですよ、それでどうするんですか?」
「やるわ!」
「即答ですか……」
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