第206話 ずいぶんあっさりしてるなぁ……


 おかしい。

 絶対におかしい。

 なんで今日に限ってこんなに屋上にギャラリーが居るんだ?

 しかも俺のことをめっちゃ凝視してない?


「ね、ねぇ……」


「え? あ、ど…どうした?」


「要件は何よ? 何か言いたいことがあって呼び出したんでしょ?」


「あぁ……そうなんだが……」


 こうも注目されていると言いにくい。

 なんでこいつらこんなに俺らに注目を集めているんだ?

 マジで意味が分からんぞ……。


「なんか人多くね?」


「そ、それは私も思ったわ……なんでこんなに屋上に人が居るのかしら?」


 俺はこっそり井宮に耳打ちをした。

 絶対にこんな状況はおかしい。

 何かの作為が働いているのはではないかと勘繰ってしまう。


「なぁ、場所変えようぜ、なんか話しにくい……」


「別に良いけど、どこに行くの?」


「まぁ、適当に校舎裏とかか?」


「なら早く行きましょう。昼休み終わっちゃうわよ?」


「そうだな」


 そう言って俺と井宮は移動を始めた。

 移動を始めたのだが……。


「なんか、ついて来てね?」


「確実について来てるわよ! あんた何をしたの!?」


「何もしてねぇよ! お前が何かしたんじゃないのか?」


「私だって何もしてないわよ!」


「じゃぁなんでみんなついてくるんだよ! なんか怖い!」


「私だって怖いわよ! もう、このままじゃ埒が明かないわ! どっか隠れるわよ!」


「わっ! 馬鹿! 引っ張るな!」


 俺は井宮に引っ張られ走り出した。


「あ、逃げた!」


「追え! 逃がすな!!」


 なんで後ろの方々は俺達を追ってくるの!?

 俺何かした?

 俺たちはしばらく逃げた後、空き教室に逃げ込んだ。

 

「ここまでくればなんとか……」


「なんでこんなことになってるのよ……」


「俺が聞きたいよ」


 一体なんであいつらは俺達を追いかけてたんだ?

 全くわからん。

 

「はぁ、もうお昼休み10分も無いじゃない……」


「げっ! 俺まだ飯食ってないのに!!」


「私も食べてないわよ! 早く要件済ませて教室戻るわよ!」


「よし! この前は言い方とかいろいろ悪かった、出来れば許して欲しい」


「私も熱くなりすぎたわ、ごめん」


「いや、あれは俺の言い方が悪かったし」


「じゃぁ、あいこってことで」


「了解。よし! 飯食いに行くぞ!」


「あと七分よ!」


「マジかっ!」


 あとから思ったが、なんともあっさりとした謝罪だった。

 逃げている間にお互いにいつもの感じに戻ってしまい、いつの間にか緊張はなくなっていた。

 そのおかげで俺達はすんなり仲直りが出来たのだが……。


「おい前橋! 井宮さんとはどうなったんだよ」


「そうよ! 隠れるなんて酷いわ!」


「はぁ?」


 何かすさまじい誤解を受けている気がする。

 


 その日の放課後、俺は井宮と一緒にファミレスに向かっていた。

 理由はもちろん勉強会のためだ。


「アンタも聞かれたの?」


「なんだ、お前もか?」


「えぇ、良く変わらないけどなんて言われたの? ってみんな聞いてくるのよ」


「それで、お前はなんて言ったんだ?」


「普通に答えたわよ、許して欲しいって言われたから私も謝ったって答えたのよ」


 そこは普通に仲直りしたでいいのでは?

 また変な誤解を生んでいないといいが……。

 

「それで、あんたはあの子のことどう思ってるの?」


「え?」


「大事な事でしょ? そのまま彼氏になるの?」


「あぁ……今のところそれは無いよ」


「なんでよ? 可愛いじゃない」


「正直、彼女とか今はどうでもいいし。それに、あいつを好きでもないのに同情だけで付き合うのも失礼だろ?」


「なら、早めに振った方が良いと思うわよ。多分、期待が大きい分、期待を裏切られたときの反動が大きいから」


「だろうな……なぁ、人を振るってやっぱり辛いか?」


「なんで私に聞くのよ」


「経験が多そうだからな、お前は可愛いしモテるから、そう言う決断も多いんじゃないかと思って……」

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