第205話 何か誤解してませんか?
*
高城に説教された日の翌日。
俺はスマホのメッセージで井宮を呼び出した。
場所は屋上。
そこなら人は居ないだろうと思ったのだが……。
「なんで今日に限ってこんなに人が居るんだよ……」
なんでか知らないが、今日に限って屋上には人が多い。
なんでだ?
まぁ、昼休みだし人が多いのはわかるが……。
しかもなんでか知らないがみんな俺を見ているような?
気のせいか?
「それにしても井宮遅いな……」
約束の時間はもう過ぎているというのに井宮は現れない。
一体どうしたんだ?
今日は学校にも来ていたし、ちゃんとメッセージも送って返信も受け取った。
約束を破るような奴じゃないはずだが……。
そんなことを俺が考えて居ると、ようやく屋上の扉が開き井宮が現れた。
「お、お待たせ」
「いや、そんなに待ってねーよ」
井宮が着た瞬間、なぜか屋上に居た奴らは一斉にこちらを見た。
なんだ?
なんでこいつらは俺たち二人をこんな凝視するんだ?
これじゃぁ話しずらいじゃないか!!
「それで……話って何よ?」
「え? あ、あぁ実はな……」
……と話そうとするのだが、なんでか屋上に居る生徒全員が俺と井宮に注目していた話しずらい。
なんだこいつら!
一体なんで俺と井宮をこんなに凝視するんだ!!
*
屋上になぜ大勢の生徒が居たのか、その理由は井宮が圭司から受け取ったメッセージにあった。
「あ……」
「どうしたの? 椿?」
「ん、メッセージ来てさ……」
「え? だれだれ?」
「どうせ前橋君でしょ? 良いわねぇ~仲良くて。まぁ、椿の容姿ならお似合いよね」
「べ、別に私とあいつはそんな関係じゃ……」
「出たわよ、そんな関係じゃない。それ本当? 見てる限り付き合ってるようにしか見えないわよ」
「これで付き合ってないなんて、前橋君が鈍いのか、それとも椿が奥手すぎるのか……」
井宮はクラスの女子たちと話をしていた。
丁度その時は前橋と井宮の関係について女子たちは大盛り上がりしていたところだった。
そこに来た前橋から井宮へのメッセージ。
食いつかない訳がない。
「それで、なんてメッセージだったの?」
「別にこれと言って変な内容じゃないわ。昼に屋上に来てくれ、大事な話しがあるって……」
「え?」
「嘘……」
「そ、それって!?」
「「「「告白ぅ!?」」」」
「え?」
井宮はこのメッセージを受け取った時、おそらくこの間から続いている喧嘩のことだろうと認識していたが、他の女子たちはそれを知らなかった。
そのため、このメッセージの内容を聞いた時、その場に居た女子全員がこう思った。
『愛の告白!』
青春真っ盛り女子高生にとって、これ以上面白いイベントはない。
人の色恋沙汰に口を出したくなるのが女子高生というものだ。
しかも厄介なことに女子高生は噂好き。
学年一、いや学校一のイケメンが告白をするという噂は瞬く間に学校中にあふれた。
「え!? 前橋が!」
「まさか井宮さんとは……」
「俺は高城さんかと思ってたけど」
「でもお似合いだよなぁ……悔しいけど」
「あれ? でもあいつって彼女が出来たんじゃ……」
当然この噂は前橋のクラスの血気盛んで嫉妬深い男子たちの耳にも届いた。
いつもならこんな話しを聞けば前橋の元に飛んでいく男子たちだったが、今回は違った。
「そうか前橋様が……」
「仕方ないよな?」
「それに、ここで落ち着いて貰えれば海で女子を全員持っていかれずにすむ」
「恐らくあの方はそれすら見越しているのだよ」
「流石はわれらが神」
海旅行の件で神扱いされており、嫉妬の対象にはならなかったのだ。
当の本人はというと……。
「はぁ……井宮にちゃんと話せるかな? あぁ上手く話せなくて噛んだりしたらどうしよう……」
気まずい相手と久しぶりに話しをすることに緊張していた。
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