第204話 ライバルと友人

 あいつとは熱くなると冷静に話せないからな。

 あの時も俺は一方的にお前には関係ないだろってことしか言わなかったな。

 もし、あいつが心配してくれていたのだとしたら、あの言い方はなかったかもな。


「井宮さんもだけど、圭司君もちゃんと話さないから話が拗れちゃうんだよ?」


「そうかも……」


 はぁ……まさか高城に説教されるとは。

 でも、高城の言う通りだな。


「ちゃんと話すよ、いつまでもこんな空気じゃ高城や最上にも悪いしな」


「うん。頑張ってね」


「おう」


 やっぱり高城はいいやつだなぁ~。

 こういう所は昔のままだ。

 よくよく考えると、性格も良いうえに容姿まで良くなった今の高城って完璧じゃないか?

 なんだか手の届かない所に行っちまった気がするなぁ~。


「あ、あのさ……」「


「ん? なんだよ?」


「圭司君は高ノ宮さんのことを振っちゃうの?」


「………あぁ、そのつもりだ」


 残り五日間。

 俺は彼女のことをもう一度振る。

 今の段階ではそのつもりだ。

 高ノ宮は俺の妹のような存在であることに変わりはない。


「圭司君は誰とも付き合わないの?」


「まぁな、てか俺なんかと付き合っても面白くねーし、直ぐに振られるのが目に見えてるからな」


「……そんなことないと思うけど」


「え? 何か言ったか?」


「う、ううん! なんでもないよ! じゃ、じゃぁ井宮さんのこと頑張ってね!」


「お、おう」


 高城はそう言って自分の席に戻っていった。

 俺もせっかく同じ趣味を共有できる友人と出会えたのだ、そんな友人とこんな形で仲たがいなんて嫌だ。


「テスト前になんとかしないとな……」


 井宮のことを考えながら、俺はスマホを開いて宿泊先の候補一覧を池内のスマホに送信した。





「井ノ宮さん?」


「ん? どうかしたの? 高城さん」


「いや、あの……さっきから全然ページが進んでないけど大丈夫?」


「あ、ご、ごめんね……ぼーっとしてた」


 私は今日、高城さんと二人で勉強会をしていた。

 最上君とは昨日いろいろあって今日は居ない。

 前橋ともいろいろあって、今日はこの場に居ない。

 はぁ……私何してるんだろう。

 つまらないことで嫉妬して、嫌な女だなぁ……。

 

「前橋君のこと?」


「え? あ、まぁ……う、うん……」


「早く仲直りしたほうが楽だと思うよ?」


「そんなこと言って良いの? 貴方にとってはチャンスなのよ?」


 何言ってるんだろう私。

 せっかく高城さんが心配してくれているのに……。

 

「……私は井宮さんとちゃんと勝負したいから」


「え……」


「私、井宮さんが羨ましいんだ……だって、私は圭司君と喧嘩なんてしたことないから……」


「それは良いことなんじゃ……」


「喧嘩するほど仲が良いっていうでしょ? 私も圭司君と本音言い合える仲になりたい」


「わ、私とあいつはそんなんじゃ……」


 よくよく考えると、私はおそらくあいつと一番近しい女子なのかもしれない。

 趣味も同じで教室も同じ、しかも席も隣だし、あいつからは夏休みにイベントにも誘われている。

 よく考えると私が一番優位なのかもしれない。

 他のみんなは私のような環境に居ない。

 

「……だからね、井宮さん……いや、椿ちゃん。私負けないからね」


 高城さんは私の顔を見て笑顔でそういった。

 きっとこの言葉は高城さんから私への宣戦布告なのかもしれない。

 だから、私もそんな高城さんに応える。


「望むところよ優菜」


 受けて立つと。

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