第202話 俺の評価


「あっそ、俺は経験無いからわから……」


 わからない。

 そう言おうとした瞬間、俺の頭を高ノ宮の顔が浮かんだ。

 そうか、俺も今から女子を一人振らなきゃいけないかもしれないのか……。


「やっぱ……きついのか?」


「あぁ、君が思う数倍はきついよ」


「そうか……」


「好きな人から拒絶されるんだ、そんなの辛くないわけがない」


「………だよな」


 心なしか最上の元気がない気がする。

 やっぱりショックだったのか……。

 俺がまたあいつを振ったら、あいつもショックを受けるんだろうか?

 なんだか、振るのが怖くなってきたな。


「はぁ……」


「溜息なんてはいて、何か思うところでもあるのかい?」


「まぁ……な」


「彼女のことかい?」


「なんのことだ?」


「とぼけなくても良いよ、井宮さんから聞いたよ」


「なんだよ、知ってたのか……」


「お試しとはいえ、付き合うって言ったんだから、その子のことをちゃんと見てあげた方が良いと僕は思うよ」


「そんなのわかってるよ」


「まぁでも、君はもしかしたら振るのに慣れていた方が良いのかもしれないな……」


「残念ながら慣れるほど告白なんてこれから先されねーよ」


「それはどうだろうね」


 結局俺と最上は二人してホームルームをさぼった。

 なんだか文化祭以来、こいつと一緒にいる機会が増えた気がする。

 流石に一時限目は出なければということで二人で教室に戻る途中、最後に最上は俺に言ってきた。


「親友、君はもう少し自分の評価を改めた方が良い、無自覚な思いは誰かを悲しませるからね」


「はぁ? 何言ってんだよお前」


 俺の評価なんて決まってる。

 ゲームオタクの底辺陰キャ。

 それが俺だ。

 クラスの陰で生きていて、決してクラスの祭りごとやイベントで中心にはならない。

 そういうキャラだった。

 なのに……。


「おい、前橋今度は何をしたんだ?」


「俺らのクラスの男子って元気だよなぁ~」


 クラスに戻ると必ず誰かに話し掛けられる。

 しかも相手はクラスでも中心にいる九条や八代。

 

「あ、前橋! 実は夏休みなんだけどクラスのみんなで海に行かないかって話しになっててさぁ、一緒に計画を立てるのを手伝ってくれないか?」


 挙句の果てにはクラスのイベントをやる際の幹事役までさせられる。

 

「池内、なんで俺にそんなことをいうんだよ」


「え? この前の打ち上げだって君が主体だったじゃないか? 君が誘ったからクラスの出席率も良かったから、今回もお願いしたいんだけど」


「お前がやれよ、俺は嫌だ」


「そんなこと言わないで手伝ってくれよ、みんなだって目標があった方がテスト勉強がはかどるだろう?」


「なんで俺がそんなこ……」


 俺がそう言いかけた瞬間、誰かが俺の肩を強くつかんだ。


「やぁ前橋君」


「今朝の話の続きをしようか……」


「縄と結束バンドどっちで拘束されたい?」


「そもそも拘束してほしくないんだけど……」


 忘れてた、クラスの男子の一部はいまだに俺を狙ってるんだった……。

 くそっ!

 こいつらに掛かれば、一瞬で俺を中庭に埋められる!!

 どうする!?


「おいおい、待てよ。今、前橋と夏休みにクラスで行く海旅行の計画を立てようと思ってたんだから」


「いや、だから俺は……」


 そんな計画をに参加する気も感じをする気もない。

 そう言おうとした瞬間、俺を掴んでいた男子たちの手が緩んだ。


「海!」


「海といえば水着!」


「水着の女子!!」


「「「「前橋様、ご無礼をお許しください」」」」


 そういってさっきまで俺にさっきを飛ばしていたクラスの男子たちは一斉にその場で土下座をしてそう言ってきた。

 手のひら返しもここまで来るともはやすがすがしいな……。

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