第201話 振られる気持ち
「あ、あぁ……」
「別に前橋は居なくて良いんじゃないの?」
「あぁ?」
「可愛い彼女とラブラブしてなきゃいけないでしょ?」
「え!?」
「「「「え!?」」」」
井宮の言葉にその場に居た高城とクラスメイト全員が俺のほうを見て目を見開いた。
井宮の奴、余計なことを言いやがって!!
「井宮! だから言っただろう!? あれは違うんだって!」
「何言い訳してるのよ、良かったわねモテて」
「だから言ってんだろ! 高ノ宮は……」
そう言いかけた瞬間、俺はクラスメイトのバカ共(男子)に満面の笑みで肩を叩かれた。
この笑顔がなんだかすごい嫌な気がする……。
「前橋く~ん」
「彼女出来たのぉ~?」
「俺たちを方って?」
「不潔だよ前橋君! 僕がいるのに!!」
クラスメイトたちはどこからか荒縄を取り出し俺に向けて笑っていた。
あ、やばいこれ……。
「まて、お前ら! 違うんだ! 別に本当の彼女って訳じゃなくて……」
「でも、そういう関係の人はいるんだな?」
「良し、殺そう」
「いや、苦しめて殺そう」
くそっ!
女子と仲を取り持ってやっても扱いは変わらないのか……さて、そろそろ逃げないと殺されかねないな。
「くそっ! 井宮め!!」
「あ、逃げたぞ!」
「追え! イケメンを許すなぁぁぁぁ!!」
俺はクラスの男子たちから逃げ教室の外に走った。
*
「な、なんとか撒いたか……」
教室から逃げて数分。
俺は屋上に身を隠していた。
あの感じじゃ、ホームルームには出ない方が良いかもしれないな。
殺されかねない。
「はぁ……井宮は怒ったままだし、男子からは追いかけられるし、散々だな……」
そんなことを言いながら、屋上の壁にもたれて座っていると、屋上のドアが開き誰かが入ってくるのを感じた。
俺は直ぐに逃げられる体制をとり、ドアの方を見る。
「ん? やぁ、ここにいたのか親友!」
「最上? なんだお前か……」
「朝から随分騒がしかったけど、何かしたのかい?」
「あぁ、ちょっといろいろな」
「君は本当に人気者だな」
どこの世界に朝から集団リンチされそうになる人気者がいるんだよ。
「それで井宮さんとは何があったんだい?」
「まぁ、いろいろな」
「そうか、まぁ僕も昨日彼女とはいろいろあったんだ」
「どうしたんだ?」
井宮の奴、イライラしてるからって最上にまで何か言ったのか?
「いやぁ~そんな大した話じゃないさ、ちょっとふられてしまってね」
「はぁ?」
え?
振られた?
何をこいつ、告ったの?
あの機嫌の悪い井宮に?
すごいな……。
「何やってんだよ、機嫌の悪い井宮に告っても成功するわけねぇだろ?」
「まぁ流れでね……でも好きな人がいるって振られてしまった」
「そうなのか……」
まぁ、井宮は最上のことを最初からなんとも思ってなかったしな。
もう少し仲良くなってから告白すれば、成功率も上がったかもしれないのに。
「彼女なんて居ても面倒なだけだぞ」
「そういうものかい?」
「俺もよくわからないけどな」
「君はモテるだろ? 彼女とかいたことないのかい?」
「居るわけねぇだろ、この顔だぞ?」
「いや、だから言ったんだけど……」
なんだこいつ、嫌味か?
「そういうお前は? 顔は良いだろ、モテたんじゃねーの? 井宮以外にも良い女子なんているだろ?」
「あぁーまぁ……それなりにはね」
やっぱりこいつモテるのか!!
顔は良いし、成績も良いからな。
性格さえ我慢できれば、やっぱりモテるのか……。
「今なんか失礼なこと考えなかったかい?」
「え? あ、いや何も?」
「まぁ、僕は告白は基本的に断るようにしてきたからね」
「なんでだよ、もったいない」
「高校入学前は入試に集中したかったからって理由で、高校に入ってからは今は彼女とかはいらないと思って」
贅沢な断り方だな。
「まぁでも……よくわかったよ」
「なにがだ?」
「告白を断られるって、こんな気持ちなんだなって……」
そう言いながら最上はどこか遠くを見つめていた。
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