第200話 貞操の危機かもしれない
*
翌日、俺は腹に突然現れた重たい衝撃によって目を覚ました。
「はがっ!!」
「おはよう、圭ちゃん!」
「な、なんで朝から俺の上に乗ってるんですか?」
重たい。
なんて言ったらきっと姉貴は怒って面倒な事になるだろう。
だからあえて言わない。
昨日の高ノ宮との一件から姉貴は更に面倒になった。
一緒に風呂に入ろうとしたり、一緒に寝ようとしたり……あ、いつもの事か。
いや、いつもの事って方がヤバイんだけど……。
「もう、お寝坊さんなんだからぁ~」
「まだ朝の6時なんですけど……お寝坊さんどころか早起きさんですよ」
「まぁ、そんなことはどうでも良いのよ」
「言い訳ないです、二度寝するので下りて下さい」
「もう~ダメだぞ! 早く起きなさい!」
「起きるのでその手に持ってる包丁を台所に置いて来てください」
包丁持って起しに来ないでくれ……。
仕方なく俺は目を覚まし、顔を洗って朝食を食べようとリビングに向かう。
珍しく今日は姉貴が俺の分の朝食を作ってくれていた。
「圭ちゃん、今日はお姉ちゃんがご飯を作って上げたわよ!」
「はぁ、それはどうも……」
自分で用意するのは面倒なのですごくありがたいのだが……なんかこう、朝食の割には随分重たいメニューだった。
まず目に入るのは目の前のグラスに入った真っ赤なドリンクだろう。
トマトジュースか?
それにしてはなんだかサラサラしているような……。
「これ何?」
「あぁ、体に良い真っ赤なドリンクよ」
「何が入ってるんですか?」
「大丈夫よ変な物は入ってないわ」
「何が入ってるんですか?」
「なんでも良いじゃない」
「いや、すげー怖いんですけど! それになんですか朝からこのラインナップ! 肉に牡蛎って! 朝から重たすぎるでしょ!」
「全部体に良いのよ?」
「言いにしても朝からこれはおかしいでしょ! 何を企んでるんですか!」
「別に何も企んでないわ」
「いや、明らかに何か企んでるでしょ!」
そう言いながらチラっとキッチンの方を見ると、そこには「必見! 夜の営みレシピ100選」と掛かれたレシピ本が置いてあった。
「作ってくれた事は感謝しますが、朝からこんなに食えませんよ、冷蔵庫に入れて置いてください」
「そんな! それを食べないと圭ちゃんの息子が大人になれないわ!」
「こんなん無くてもなるわ!」
仕方なく俺は自分で食パンを焼いて食べ家を出た。
朝から姉貴に振り回され、散々だ。
しかも学校に行くのも憂鬱だ、井宮と顔を合わせなくちゃいけないし、まだどう謝るべきかも思いついて居ない。
「なんで怒ってるか分からないのに謝るのも逆に怒られそうだしなぁ……」
考えているうちに学校に到着、教室に行くとテストが近いこともあってかいつもは勉強なんてしない連中もテストに向けて勉強していた。
「なぁ、この問題どうやって解くんだ?」
「俺に英語を聞くな!」
「いや、これは数学なんだが……」
「くそっ! なんで今回のテストに保健体育が無いんだ!」
「おい、誰かノート貸してくれ!」
よほど皆夏休みの補習が嫌なようだな。
自分の席を見ると隣の席にはもう井宮が居た。
こういう時に隣の席だと気まずい。
挨拶はした方が良いのだろうか?
いや、でも喧嘩中なわけだし……。
とりあえず俺は席に座り鞄の中を整理する。
井宮はつまらなそうに反対方向を向いてスマホを弄っていた。
「………」
「………」
気まずい……何か行った方が良いのだろうか?
でも、怒らせたのは俺だし、昨日の今日で普通に話しかけるのもなぁ……。
そんな事を考えていると、高城さんがやってきて井宮に声を掛けた。
「い、井宮さん、これ昨日頼まれてたノート」
「あぁ、ありがとう。今日も悪いんだけどお願いね」
「ううん、全然良いよ。あ、えっと……圭司君も今日は来るよね?」
不安そうな表情で高城が俺に尋ねる。
高城も俺と井宮の様子がおかしい事に気が付いているようだ。
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