第198話 結局は



「はぁ……」


 家に帰り一人で勉強していたのだが、集中出来ない。

 気が付くと井宮の事を考えてしまっている自分が居る。

 なんで井宮はあんなに怒ったんだ?

 何が気に食わないんだ?

 訳が分からん。

 これは俺と高ノ宮の問題であって、井宮には関係ないと言っただけなのに。

 

「このことを相談しても井宮だって困ると思ったんだが、まさか怒るとはな……」


 俺なりに気を使ったつもりだったのだが……。


「面倒だけど……謝った方が楽だよな」


 しかし、謝るにはなんで怒っているかを把握する必要がある。

 何で怒ってるの?

 なんて聞いて簡単にあいつが教えてくれるか?

 教えるわけないな、そう言う奴だ。

 

「はぁ~どうしたもんかなぁ~」


「何を考えてるんですか?」


「うぉっ!」


 俺が机に座って考えことをしていると、突然視界に高ノ宮が現れ俺は椅子から落ちてしまった。

 

「いでっ! お、お前なんで俺の家に?」


「鍵開いてましたよ? 不用心ですね」


「しまった……帰ってきて鍵を掛けるのを忘れてた」


「どうかしたんですか? なんかぼーっとして」


「誰のせいだと思ってんだよ」


 そもそもこいつが急に現れ無ければ、井宮と喧嘩する必要は無かったのに……。

 はぁ、なんでこいつは俺の周りをひっかき回すんだ?

 それになんでか俺の知り合いと仲が悪いし。

 

「帰ってくるの早かったですね」


「まぁ、色々あってな」


「じゃぁ、私と遊びましょうよ!」


「見てわかるだろ? 俺は勉強中だ、お前も受験勉強をしろ」


「じゃぁ勉強しましょう!」


「なんだ、珍しく聞き分けが良いな」


「はい、じゃぁ保健体育の授業を……」


「待て、なんで脱ぎ始める? この露出狂」


「え? いや、教科書はわ・た・し? 的な感じで行こうかと」


「帰れ」


「えぇ~酷くないですか? こんな美少女が迫ってるのに、そんな事をいうなんて……先輩ってもしかして不能なんですか?」


「ふざけるな馬鹿」


「もしくは……ホモ?」


「帰れ」


「あぁ、もう! そんな怒らないで下さいよぉ~」


「くっつくな馬鹿」


 高ノ宮は俺の背中に抱きついてきた。

 一応こいつとは今現在恋人同士。

 恋人だったたらこういうのは普通なのだろうか?

 しかし、お試しの間に一線を越えるのはまずい。

 年齢的にもまずい。

「圭司君勉強なんてしてないで、私とイチャイチャしましょうよぉ~」


「あのなぁ、お前受験生だろ? 勉強しろ勉強」


「だから、保健体育の勉強を……」


「それはもういい、部屋に居るのは許してやるから邪魔をしないでくれ」


「ちぇー。わかりましたよぉ~」


 俺がそう言うと、高ノ宮は俺のベッドに寝転がってスマホを操作し始めた。

 部屋に自分意外の誰が居るなんてなんだか久しぶりだ。

 まぁ、姉貴はなんでか時々侵入してくるけど。

 姉貴以外はこいつが始めてだな。


「圭司くん、そろそろ私が好きになって来たんじゃないですか?」


 こいつはまた返答に困りそうな質問をしてきやがる……。

 

「さぁな」


「あ、今誤魔化した」


「悪いか?」


「悪くはないですけど、ハッキリ言われるよりそっちの方が傷つきます」


「え? マジ?」


 ヤバイ、返答を間違えてしまったようだ。

 正直、皆がいうようにこんな恋人ごっこはさっさと終わりにするべきなのかもしれない。

 でもこいつの気持ちを考えると、今更やめにしようなんて言えない。

 ここは一週間、こいつと恋人を続けるしかないのだが……。

 俺は結局こいつを一週間後に振らなきゃいけないんだよな。

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