第197話 あいつは俺を親友と呼ぶ
*
僕の名前は最上吉秋。
家にはそれなりの金があり。
優秀な家系に生まれた意外はごく普通の男子生徒だ。
最近僕にはとある親友が出来た。
いままで生きてきた16年間で親友と思えたのは恐らく彼だけだろう。
彼とは知り合って間もないが、僕は彼を信頼している。
何事にも真剣でどんな人にも平等に接し、決して自分の力を過信しない。
僕はそんな彼を尊敬してもいた。
そんな彼の様子がおかしい。
どうしたんだろうか?
恐らく仲の良い井宮さんと何かあったのだろうが、本人にそれを聞くには雰囲気が悪すぎる。
明らかに機嫌の悪い彼女は黙々と問題集を解いていた。
たまに隣の彼女の友人である高城さんに質問をするが、それ以外は全く何も話さない。
一体何があったのだろうか?
余計なお世話かもしれないが、親友が困っているなら力になりたい。
「ごめん、ちょっとトイレ行くね」
「う、うん分かった」
井宮さんはそう言って席を立った。
僕はその好きに城崎さんに今日の井宮さんの事を尋ねる。
「高城さん、井宮さんはどうしてしまったんだい? なんだか親友と何かあったようなんだが……」
「そ、それが私にも分からなくて……って言うか圭司君絡みなんですか?」
「あぁ、親友の様子がどうにも変なんだ、なんだか揉めていたようだし何かあったのかと思って」
「そうなんだ……うーん」
「どうした?」
「何となく理由はわかるような気がするけど……どうだろう?」
「その理由って?」
「……え、えっとその……最上君には言い憎いかな」
「え?」
続きを聞こうとしたが、井宮さんが帰ってきてしまった。
それから僕たちは一時間ほど勉強をして別れた。
だが、僕は少し井宮さんの様子が気になり、高城さんが居なくなったタイミングで彼女に尋ねた。
「井宮さん、どうかしたのかい?」
「別に……てか付いてこないで」
「余計なお世話なのはわかっているが、僕は親友から君の成績を上げる事を頼まれている。このままじゃそれどころじゃ無くなってしまう」
「うるさいわね! アンタに関係ないでしょ!」
「………」
親友のように上手くはいかないな。
きっと親友も学園祭で俺に怒鳴られたとき同じ気持ちだったんだろう。
あの時と感情は違うかもしれない。
でも、似たような気持ちだろう。
心配しているのに突き放されるこの気持ち……親友はこんな気持ちになっても僕に付き合ってくれたのか。
やっぱり、僕は彼の力になりたい。
僕はそう思い、彼女に食らいついた。
「関係なくないよ。僕はもう君を友達と思ってる、それに順序は違うけど僕は君が好きだ。だから君が悩んでいるなら力になりたい」
「余計なお世話よ! それにあんな顔が好みなんてふざけた理由で告られても……」
「今は違うよ」
「え……」
「君を知って、僕は更に君を好きになった、親友と楽し気に話す君や勉強に一生懸命な君を見て、僕は君をドンドン好きになった」
「………」
「すまない。急にこんな事を言っても困るよね……じゃぁ気を付けて」
「……アンタだから言えないのよ」
「え?」
「……ごめん、イライラしてて……言い過ぎたわ」
「いや、僕も少しデリカシーが無かった」
「理由、教えても良いけど……アンタにも関係あることなのよ……」
「それはどういうことだい?」
「……言って良いの? アンタ多分ショックを受けるわよ」
構わない。
そう直ぐに言おうと思ったが、一瞬俺は嫌な予感がして言葉を止めた。
そして一呼吸置いて、僕は井宮さんに言った。
「良いよ」
「……じゃぁ言うわ」
彼女は真剣な顔で僕を見ると、頭を下げてこういった。
「ごめんなさい。私、前橋が好きなの」
そう言われた瞬間、僕は様々な事に納得がいってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます