第195話 まさかの事実

「あるかもしれないだろ!」


「絶対無いわよ」


 そんな話をしている時だった。

 後ろから誰かが走ってくるような足音が聞こえてきた。

 そして、その数秒後。


「圭司くーん!」


「ごふっ!!」


「え?」


 誰かが私の隣いた彼に突撃してきた。

 金色の髪に赤い瞳。

 間違いない、あの子だ。


「いてて……な、なんだよ急に……」


「もぉ~、偶然会えたのに冷たいですねぇ~」


「お前も今帰りか? てか離せ」


「まぁまぁ、良いじゃないですか」


 私を置いて話を始める彼と彼女。

 やっぱり面白くない。

 というか、なんでこの子はこんな公衆の面前で抱き着けるのよ!

 あいつもまんざらでもなさそうだし!


「あ、居たんですか」


「えぇ居たわよ」


 何が「居たんですか?」よ!

 絶対に気が付いてたでしょ!

 何しに来たのよこの子!

 マジでムカつく!

 私年上よ!


「これから勉強会なんだよ」

「そうなんですか? テストですか?」


「そうだ、こいつあんまり成績良くないからな」


「ちょ、ちょっと!」


 なんでよりによってこの子にそのことを言うのよ!

 絶対に馬鹿にしてくるじゃない!

 私がそんな事を考えていると、案の定彼女はニヤニヤしながら私の事を見てきた。


「へぇ~そうなんですか~? 良く高校に入れましたねぇ~」


「余計なお世話よ、おこちゃま」


「はぁ!? 私のどこがおこちゃまなんですか!」


「そうやって他人を見下すところとかよ、おこちゃま」


「な! と、歳が上なら大人ってことは無いと思いますけど? 精神年齢っていうものもありますからねぇ~」


「何? それは私の精神年齢が低いとでも言いたいわけ?」


「直ぐにムキになるのはその証拠だと思いますけど?」


「はぁ!?」


「お前ら、あんまり道の真ん中で騒ぐなよ」


 彼に注意され、私と彼女は口論をやめた。

 本当に失礼な子ね。

 まぁ、きっと私を敵視してるからだと思うけど……。


「じゃぁ、悪いけど俺らはこれでな」


「え? 私も行きますよ?」


「はぁ? なに言ってんのよ、今から私達は勉強会だって言ってるでしょ?」


「私もついて行きます。これ以上先輩に悪い虫が付くのは困りますから」


 この子、本当に積極的ね。

 でも、こんな事彼が許すはずがない。

 

「馬鹿言うな、高校のテストの勉強をするんだ、お前は受験生だろ? 受験勉強しろよ」


 よし!

 彼にそう言われれば何も言えないはず!

 さぁさっさと帰りなさい!

 どうせ、帰っても家隣なんだから会えるでしょうが!

 

「うぅ……わかりましたよ。でも私は浮気は許しませんからね! 今の貴方の彼女は私なんですから!」


「へいへい、わかって……ってバカ!!」


「え?」


 え?

 なんかとんでもないセリフが聞こえてきた気がする。

 何?

 この子なんて言った?

 今、彼女は私とか言った?

 いやいや、まさか。

 だって、この鈍感で面倒くさがりで色々拗らせちゃってる面倒な彼が彼女なんて……。


「え!?」


 私は思わず大きな声を出して彼の方を向いた。

 彼は真っ青な顔をしながら汗をダラダラと掻き、フリーズしていた。


「じゃぁ、圭司君また後でね!」


 そう言って爆弾を落として彼女は去って行った。

 これは最早勉強どころの騒ぐでは無い。


「あ、あのこれはその……」


「……中、入りましょうか?」


「は、はい」


 私は静かに彼にそう言い、ファミレスの中に入って行った。

 彼からは色々と聞かなかなければ行けないことがたくさんありそうだ。

 幸いまだ後の二人は来ていない。

 詳しく話しを聞くことが出来そうだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る