第193話 俺の気持ちがわからん

「まぁ、そうだけどよ、でもそのチャンスさえも奪う方が可哀想だろ? 心変わりだってあるかもしれないし」


「一週間で心変わりなんてあるはずねぇだろ、現実的に考えろ」


「そうか? 自分のことを思ってくれる子だぞ?」


 二人の言うことは最もだ。

 どっちも俺は正しいと思ってしまう。

 流石はどっちもモテるだけあって、アドバイスが的確な気がするな。


「でも、なんで急にそんなことを聞くんだよ? 俺はノート見せて貰えれば何でもいいけど」


「あぁ、ちょっと相談されてな」


「嘘付け、どうせ自分ことだろ?」


「ん、んなわけねぇだろ…」


 九条の奴感が良いな。

 なんで俺のことだってわかったんだ?

 流石はクラスで数少ない常識人の男子だな。


「え? 違うのか? 俺もそうだと思ってたんだけど」


 お前もか八代!

 なんでだ?

 なんでこいつらにバレてるんだ?

 ちゃんと前置きはしたはずなんだが……。


「大方、井宮とかだろ?」


「仲良いもんな」


「はぁ? なんで井宮が出てくるんだよ?」


「いや、お前に告白するのなんて井宮さんくらいしか思い浮かばねぇし」


「まぁでも、まさか井宮がこんな早くに告白するとは思わなかたな」


「確かに、もっと奥手だと思ったんだがな」


 おいおい、何俺を放って盛り上がってるんだ?

 なんで俺が井宮に告白されたことになってんだ?


「待て待て、いつ誰が告白されたなんて言ったよ」


「え? さっきの話しって前橋と井宮のことじゃないのか?」


「ちげーよ、それとあんまり大声で言うな。頭のおかしいうちの男子に聞かれたら、色々面倒だろうが!」


「ま、まぁそうだな。悪かった」


「あいつら、集団になると不良集団よりも恐ろしい集団になるからな……」


 そういえば九条は文化祭の後、埋められたんだっけな。

 とはいえ、あの打ち上げ以降クラスの男子達は大人しい。

 打ち上げのおかげで、教室内での女子と男子の関係は良くなりつつある。

 それが影響しているのでは無いかと思うが……。


「まぁ、誰の話しでも良いけどよ。どっちにしろハッキリさせることはハッキリさせるのが一番だぞ」


「九条、答えをはぐらかしたままにして中学のとき修羅場ったもんな」


「八代、そのことは言うな……思い出すだけで震えがとまらん」


「あ、悪い悪い」


 一体何があったんだ?

 まぁ、でも英司と同じような答えだったし、きっとそういうことなんだろうな。

 はぁ……どうしたものかな?

 授業中にも俺は高ノ宮のことを考えていた。

 あいつとは友人として付き合ってて、一回酷いことをして……。


「はぁ〜どうしたもんなかなぁ……」


「何悩んでんのよ」


「ん? あぁ、ちょっとな」


 話し掛けて来たのは井宮だった。

 この前のあのファミレス以来だ。

 あの時はかなり起こってる感じだったが、今日は普通だな。


「ちょっといろいろあってな」


「もしかしてだけど、あの失礼な後輩の件?」


「……まぁな」


「あっそ、流石はアンタの後輩って感じだったわ」


「それ、どういう意味だよ」


「そのままよ、アンタに似て失礼な子ってことよ」


「俺は失礼では無いと思うが?」


 俺がそう言うと井宮は深くため息を吐き、俺の方をジト目で見ていた。


「自覚が無いのは厄介ね……」


「な、なんだよ?」


「別になんでも無いわよ。アンタってさ……」


「なんだ?」


「あの子のこと好きなの?」


「はい?」

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