第189話 イメチェン

「おはよう」


「……誰だお前?」


「おいおい、酷い事言うなよ。俺だよ、圭司だ」


「はぁ!?」


 髪を切った翌日、英司に話掛けると今まで聞いた事ないような声を上げて英司が驚いていた。

 まぁ、イメチェンして驚くのはわかるがいくら不細工だからって、そこまで驚かなくても……。


「お、お前! そんな顔だったのか?」


「あぁ、姉貴から身だしなみくらいはしっかりしろって言われてな」


「だ、だからって……マジか……」


 英司はかなり驚いていた。

 しかも、二人で登校中、いつも以上に回りから視線を感じた。

 皆、俺のイメチェンを笑っているのだろうか?

 はぁ、ごめんなさいね、不細工で……。


「くそっ! この裏切り者!」


「なんだよ」


「なんでもねぇよ! ギャップ萌えとか一番美味しいじゃねぇかよ!!」


 英司は教室に向かう途中ずっと、わけわからない事を言っていた。

 教室に言っても視線を感じた。

 クラスの奴らがイメチェンした俺を見て、笑っているのが分かった。

 はいはい、すいませんねえ、不細工が背伸びして。


「あ、あのさ……前橋君」


「ん? なんだよ?」


「い、イメチェン? に、似合ってるね」


 今まで俺を避けていた女子が急に話し掛けてきた。

 イメチェンしたから印象が少し変わったのか?

 ま、面倒いから軽く流すけど。


「どうも」


 短くそう答え、俺はトイレに行くふりをして逃げた。

 どうせ影で笑ってるんだ、そんな奴とこれ以上何も話すことはない。


「おい、折角話し掛けてくれたのに無視か?」


「無視はしてねぇだろ? 今まで散々俺の陰口を言ってきた奴らだ、話すことなんてねぇ」


 俺を追いかけて英司がついてきた。


「それはわかるけどよ」


「はぁ、イメチェンしても不細工だと不幸だな、今度は俺を弄り始めるのか? あいつらは……」


「はぁ? お前が不細工?」


「そうだよ、どっから見てもそうだろ?」


「い、いや前はそうだったけど……今のお前かなりのイケメンだぞ?」


「何言ってんだよ、俺もお前と同じ不細工だよ」


「なんだろう、お前のその言葉が嘘じゃないことはわかるんだけど、今すぐにお前を半殺しにした衝動が湧いてきた……殺して良い?」


「なんでそうなるんだよ! てか、殺す気じゃねぇか!!」


「うるせぇ! この裏切り者がぁぁぁ!!」


「うぉ! 馬鹿やめろ!!」


 英司がこんなだから、高ノ宮に会ったら何を言われるのか不安だった。

 しかし、実際に会ってみると。


「………」


「よっ」


「え? あ、あの……誰ですか?」


「お前もかよ……俺だよ」


「え!? せ、先輩!? 嘘!」


 そんなに俺は変わっただろうが?

 ただばっさり髪を切って、顔を出しただけなのだが……。


「え、あ……あの……マジですか?」


「何がだよ……はぁ、そんなに変か?」


「い、嫌変っていうか……なんていうか……」


 高ノ宮は顔を真っ赤にしながら俺の話を聞いていた。

 最近夕方でも暑いからな、外で話すよりどっか涼しい所で話した方が良いかもな。

 熱中症になると大変だし。


「とりあえず、喉渇いたし、店行かないか?」


「い、良いですけど……ふ、二人でですか?」


「当たり前だろ? 何言ってんだ?」


「そ、そんなの緊張しますよ! 笹原先輩も呼んで下さい!」


「あいつと今会うと殺されかねないから嫌だ」


 何分けわかんない事言ってんだこいつ?

 何回も二人で寄り道なんてしてきたろうに……。

 いつもは前を歩くはずの高ノ宮が今日は俺の後ろに下がり、俺についてくる。

 一体どうしたのだろうか?

 そんなに俺のイメチェンは不細工だろうか?

 あいつ、俺の顔真っすぐ見て来ないし。


「あ、あの……なんでイメチェンを?」


「え? あぁ、姉貴に身だしなみをちゃんとしろって言われてさ」


「そ、そうなんですか……グッジョブお姉さん!」


「え? なんか言ったか?」


「な、なんでもないです!!」






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