第188話 後悔してももう遅い

「まぁ、そうだな……こんなことを引きずってたらいつまで経っても彼女なんて出来ない」


「立ち直りが早くて良かったよ」


「おい、どこ行くんだ?」


「決まってるだろ? 帰るんだよ」


 笹原にそう言って俺は立ち上がり、家に帰ろうとした。

 

「待てよ、まだお前には聞きたいことがあるんだよ」


 歩き始める俺に笹原はついてきた。


「なんだよ、別にもう良いだろ? それに俺と一緒にいるとお前もやべー奴だと思われるぞ」


「そんなの俺が決める。周りの意見や噂なんて当てにならない。それに……」


「なんだよ?」


「お前みたいなブサイク陰キャがどうやって高ノ宮さんと仲良くなれたかを聞かなきゃいけないからな!」


「やっぱりお前馬鹿だろ?」


 笹原は家までついてきて、しつこく高ノ宮と仲良くなった経緯を聞いてきた。

 どこまで馬鹿なんだか、女にモテることしか考えてない。

 翌日以降も笹原は俺にしつこく聞いてきた。

 どうやったら可愛い女の子と仲良くなれるのかと。

 毎日毎日しつこく聞いてくるが、俺は人が居るところでは無視し続けた。


「なんで無視すんだよ!」


「お前馬鹿か! 俺は学校では一人で居たいんだ! 話かけるなよ!」


「別に良いだろ! 何が悪いんだ?」


「お前なぁ! 俺クラスで浮いてるの知ってるだろ? お前もボッチになりたくなかったら、学校では話しかけるな!」


「お前に話掛けた程度で俺の学校での評判も落ちると?」


「そうだ」


「はぁ、あのなぁ……悪いけど俺はお前と違ってクラスでは結構信頼されてるんだよ。お前と違ってな」


「何が言いたい?」


「お前と一緒に居て、俺の評判が下がるなんてことはまずねぇんだよ、覚えておけ! そして俺に美少女との出会い方を教えろ!」


「とありえず、お前がどうしようもない馬鹿だってことはわかったよ」


 確かに笹原はクラスでも信頼されていた。

 まぁ、女子から白い目で見られることもしばしばあったが……。

 男子からの信頼は厚かった。

 そんなこんなで数カ月が過ぎると……。


「なぁ、圭司。今度はあの子に告白しようと思ってるんだけど?」


「また玉砕すっからやめろ」


「そうですよ、笹原先輩やめた方が良いですよ」


「うるせぇな! お前ら少しは応援しろよ!」


「英司が振られるに一票」


「私は振られてボコボコにされるに一票」


「高ノ宮!? お前俺がどんな目に会うと思ってるの!」


 三人で居ることが多くなった。

 そんなある日。


「先輩……あの少し話し良いですか?」


「なんだ?」


 高ノ宮と二人で下校しているときだった。

 急に高ノ宮がなんだか真面目な表情で話し始めた。


「あの……ま、前に先輩に私と付き合って見ないか聞いたじゃないですか……」


「あぁ、お前の冗談な」


「……じょ、冗談じゃないって言ったら、どうしますか?」


「え? あぁ……」


 なんでそんなことを言うのか、この時の俺は理解出来なかった。

 だから、この時もそんなに良く考えないで答えてしまった。


「ありえねぇだろ?」


「……そ、そうですよね……」


 この時の俺の言葉が、どれだけ高ノ宮を傷つけることになったのか、それを知るのはまだ先だ。

 そして、この会話をした日、俺は姉貴に髪をバッサリ切られた。

 正直俺は嫌だった。

 姉貴は見た目が重要だからと俺の伸び放題でボサボサの髪を短くし、見た目を少しはマシにした。

 これで何か変わるわけでないこともわかってる。

 髪を切っても俺は陰キャブサイクだ。

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