第186話 お前の名は?
それからだった、高ノ宮は事あるごとに俺に付きまとってきた。
登校の途中、学校での昼休み、下校時間。
正直言ってうざかった。
「先輩! 今日もボッチですねぇ~」
「うるせぇ、どっか行けよ」
「そうしたら先輩本当に一人になっちゃいますよ?」
「別に俺はそれで良いんだよ」
「なんでですか? そんなの寂しいじゃないですか?」
「全然、俺はこれで良いんだ」
俺は学校内ではヤバイ奴として認識されていた。
だからなのだろう、俺に話し掛ける高ノ宮を色々な人間が止めていた。
「ねぇ高ノ宮さん、あの人に話しかけるのやめなよ」
「なんで?」
「だって、ためらいなく暴力振るってくるらしいよあの人」
「二年の不良の人たちも怖がってるくらいのやばい人なんだって、危ないよ!」
そんな話を聞いてしまっては、高ノ宮にも影響が出かねないと思い、俺は高ノ宮から距離を取った。
しかし、高ノ宮は離れてくれなかった。
「お前さぁ、俺と居ると噂になるだろ? もう話し掛けるなよ」
「別に私の勝手じゃないですか? それより先輩髪切らないんですか? 暗く見えますよ? その見た目」
「良いんだよ……」
一向に俺と距離を置こうとしないので、俺は仕方なく高ノ宮と会うのを放課後の体育館裏だけにした。
俺のせいで高ノ宮がいじめられても嫌だからな。
そんなある日だった。
「あぁ? 好きなタイプ?」
「はい! 是非教えて欲しいです」
「特になし」
「いや絶対嘘でしょ! 先輩も男なんだから好きなタイプくらいありますよね?」
「別にない、そもそも女子とそう言う仲になりたいなんて思わない、面倒だからな」
「面倒ってなんですか~、恋人同士なんてきっと楽しいですよぉ~」
「一人でゲームやってる方が何倍も楽しいね」
「じゃぁ、私が先輩に告白したらなんて答えます?」
「帰れ」
「その回答おかしくないですか!?」
こんな感じで俺と高ノ宮の関係は続いた。
最近では高ノ宮は何かとしつこい。
一緒に遊びに行こうだの、連絡先を教えろだの、面倒な事ばっかり行って来るようになっていた。
ま、俺は他人と遊んだり連絡先を交換したりする事をしたくなかったので、高ノ宮にも同じように対応した。
そんなある日だった。
「あの先輩……」
「なんだ?」
「私、告白されたんですけど……」
「自慢か?」
「そうじゃなくて! その……告白を断るのを手伝って欲しくて」
「なんで俺が?」
「先輩のクラスの人なので……」
「あぁ、それならなおさら嫌だね、俺がクラスでも浮いてるの知ってんだろ?」
「それは知ってるんですけど……もう来ちゃいました」
「え?」
そう言う高ノ宮の指さす方向を見ると、そこにはなんだか怒っている様子の男性生徒が一人居た。
「お前! なんでお前が高ノ宮さんと一緒にいるんだ!」
「っち……面倒くせぇ……」
「んだとぉ! お前同じクラスの前橋だろ! なんでお前が超絶美少女の高ノ宮さんと会ってるんだ!」
「いや、別に俺も好きで会ってるわけじゃ無くてだな……」
「ちょっと! 先輩それ酷くないですか!?」
「お前は黙ってろ、話がややこしくなる」
思い人が他の男と一緒に居るのが気に食わないのだろう。
男子生徒は怒りをむき出しにしながら俺に迫って来た。
「答えろよ! このマリモ野郎! お前なんか怖くねぇぞ!」
「別に何もしねぇよ、頼むから俺の話を聞いてくれ」
「なんで俺がお前の話を聞かなきゃいけないんだ!」
「おまえ、自分が無茶苦茶言ってるって知ってる?」
なんなんだこいつ?
無茶苦茶言いやがって。
てか、同じクラスらしいけど名前知らねぇな。
「んで、お前は何? 高ノ宮が好きなの?」
「お前じゃねぇ! 笹原英司だ!」
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