第184話 いやぁーそう言われても

「いらっしゃ〜い」


「え? あぁ……どうも……」


 しかし、戻ってきたのは高ノ宮ではなかった。

 いや、高ノ宮ではあるのだが……。


「あ、あの高ノ宮のお母さんですか?」


「えぇ、そうよ。娘がいつもお世話になっております」


 お母さん出て来ちゃったよ。

 どうしよう、何を話せばいいんだろ……。

 てか、なんで本人が帰って来ないんだよ!

 と言うかわかっていたけど、母親もすげー美人だなぁ〜。

 学生時代とか絶対に男子が放っておかなかっただろうな。

 なんてことを考えていると、高ノ宮のお母さんは俺の顔をじーっと見てきた。


「あ、あのなんでしょうか?」


「あ! ごめんなさいね。まさか娘がこんなイケメンの彼氏を連れてくるなんて思わなくて」


 あぁ、流石お母さんだ。

 ちゃんと俺みたいな子供にも気を使ってくれている。

 大丈夫ですよお母さん。

 俺は自分をブサイクだと認識してます。

 娘はあんなに失礼なのにな。

 しかし、俺はお母さんに一言言いたい。

 

「あの、すいません俺は彼氏では……」


「お母さん!」


 俺がお母さんに自分が娘の彼氏でないと言おうとしたその瞬間、本人が戻ってきた。

 

「なんで部屋に勝手に入って来てるのよ!」


「お母さんにも彼氏さん紹介してよぉ〜」


「良いから! お母さんは出てって!」


「もう〜、強引なんだからぁ〜」


 高ノ宮は母親を追い出し、部屋の扉を締めた。


「すいません、うちの親が……」


「別に良いけどよ、お前母親に俺のこと彼氏って言ってるのかよ?」


「違いますよ、お母さんの勘違いです」


「なら良いけど、ちゃんと訂正しておけよ」


「わかってますよ、婚約者ってちゃんと訂正しておきますから」


「なおさらやめろ」


 とりあえず俺は飲み物を飲んで落ち着く。

 最近熱くなって来たからな、氷入りの麦茶が美味しい季節になったもんだ。


「さて、帰ろう」


「いや、早すぎでしょ!」


「もう用はない」


「え? 何? うちにただ飲み物飲みに来ただけですか?」


「まず来る気はなかった」


「酷いです! うちは休憩所じゃないですよ!」


「それじゃぁまた今度な」


「いやいや! もっとお話とかしましょうよ!」


「話すって何をだよ」


「この前のお知り合いの方々についてなんてどうですか?」


 なおさら帰りたくなってきたぞ。

 どうしよう高ノ宮の奴ドアの前に座って俺を帰さないつもりだり……。

 さて、どうするか……。


「言っておくけど、川宮さん以外は別になんでも無いぞ?」


「なるほど、それでその川宮さんって人とは何をしたんですか?」


「別に何もしてねぇよ」


 話しながら高ノ宮は俺のことをジト目でじーっと見てきた。

 どうやら俺と川宮さんの関係を疑っているようだが。

 川宮さんがアイドルの宮河真奈だって言ってもどうせ信じないだろうしな……。

 どうしたものか……。


「部屋には入ったんですか?」


「ま、まぁ入ったけど」


「ふーん」


「な、なんだよ」


 なんでこいつが怒るんだよ。

 別に悪いことなんてしてねぇだろ?

 てか、部屋に入っただけでなんでここまで威圧的なんだ?


「まぁ良いです。それで先輩は私が告白したら付き合ってくれるんですか?」


「いきなりだな……なんでそんな話しになる?」


「この前のあんな状況を見たら普通焦るでしょ? どうですか? 昔も言いましたけど、私って結構優良物件ですよ?」


 確かに顔は可愛いし、スタイルも悪くない。

 唯一の欠点とすれば胸くらいだ。

 しかし、俺は高ノ宮のことを一度振ってるわけで。

 それでも好きとか言われても、少々困るぞ?

 


 

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