第183話 なんでこうなった
「だーれだ?」
「おい、離せ暑い」
「もう、先輩こういう時に乗って来ないんだもんなぁ~」
そう言って後ろにいた高ノ宮が俺の前方に現れる。
恐らく学校帰りなのだろう、制服のままだ。
「なんだよ、今帰りか?」
「はい、なんだか先輩と井宮さんが中良さそうに歩いてたので邪魔しようとしたんですけど、先に井宮さんだけ行っちゃいました」
「そりゃよかった」
またあの二人が遭遇してギスギスした雰囲気になるのはごめんだからな。
「んで、お前もテスト勉強か? 帰りは遅いんだな」
「図書館で勉強してたんですよ、これでも受験生なんで」
「俺の居る高校に入学したいなら、そこまで勉強は必要ないぞ」
クラスの奴らは馬鹿ばっかりだしな。
「まぁ、確かに私の成績なら楽勝なんですけど、そうやって調子に乗ってると落ちちゃうんで」
「良い心がけだな、昔とは大違いだ。昔は授業に出る意味が無いって言ってたくせに」
「先輩が私をこんな風にしたんじゃないですか~」
「俺は何もしてねぇ」
俺は高ノ宮と共に家に帰った。
帰ったのだが……。
「なんでお前が一緒に来るんだよ」
「まぁまぁ、固いことは気にせず」
「気にするわ馬鹿! お前の母親が飯作って待ってるだろ!」
「そんなのわかってますよ! だからちゃんとご飯の時は家に戻ります!」
「その間は?」
「先輩の部屋で勉強します」
「帰れ」
高ノ宮を追い出す。
「なんでですか〜! 先輩の意地悪〜!」
高ノ宮が入ってくる。
「いや、帰れ」
追い出す。
「良いじゃないですか!」
入ってくる。
「いい加減にしろ!」
追い出して鍵を占める。
ガチャリ
「ただいま〜」
鍵を開けて入ってくる。
「なんでお前が鍵持ってるんだよ!」
「先日、偶然先輩のお母さんに会いまして、先輩の面倒を見るって言ったらくれました」
「母さん、変な人に家の鍵かってに渡さないで!!」
なんで母さんそんなに面識のない高ノ宮に鍵渡してんだよ!
危ないとかそういうの考えないの?
馬鹿なの?
くそ!
このままでは俺の平穏な聖域(自室)が汚されてしまう!
しかも絶対に姉貴と揉めて面倒なことになる!!
俺の家に高ノ宮が入らず、なおかつ姉貴と高ノ宮がもめない方法……そうか!
「先輩お茶で良いですか?」
「あぁ、頼む」
俺が高ノ宮の部屋に行けばいい。
そうすれば俺の聖域(自室)が汚される心配もないし、姉貴と高ノ宮が揉める心配もない。
流石は俺だ、こんな名案をあっさり思いつくなんて……果たしてそうか?
冷静に考えて見よう。
確かに高ノ宮は俺の聖域に近づくかない。
しかも姉貴と揉める心配もない。
しかし、ここは高ノ宮の部屋。
高ノ宮は俺が好き。
人気のない所で俺に抱きついてくるくらいのことはする。
うん!
「馬鹿か俺は!!」
思わず叫んじまった。
やべーよ、こんなところに居たら大変だよ。
俺の貞操の危機だよ!
俺は初めては好きな子とって決めてるんだよ!
それか二次元に行く装置が完成したら、二次元女子と!
高ノ宮の部屋はベッドとダンボールだけ。
まだまだ物が揃っておらず、殺風景だがなんか良い香りがする。
部屋の主は今一階のリビングに飲み物を取りに行っている。
「くそっ! 俺の馬鹿! このままじゃ俺の大切な童貞が……」
ん?
童貞って大切か?
ある方が後々馬鹿にされるような?
って、そんなことを考えてる場合じゃない!
さっさと家に帰ってゲームをしよう!
しかし、いきなり帰るって言っても高ノ宮が納得するとは思えないし……。
「どうやって帰ろう……」
俺がそんなことを考えていると、部屋のドアが開いた。
恐らく高ノ宮が帰って来たのだろう。
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