第182話 お前じゃないとダメなんだ
勉強は順調に進んだ。
とは言ってもまだ一日、井宮の成績が急激に良くなるわけではない。
だから、当分は勉強会が続きそうだ。
最上も特に井宮に絡むことがなく、意外に普通だった。
親友親友うるさかったけど。
「じゃぁ、僕はここで」
「あぁ、サンキューな」
「またいつでも呼んでくれ」
「あぁ、もしかしたら何回かまた呼ぶかもな」
「じゃぁ丁度良い、連絡先を交換しよう。また連絡してくれ」
「あぁ、言い分かった」
まさかこいつと連絡先を交換する日が来るとは。
でも、こいつ頭良いしな。
教え方も上手いし、また頼もう。
「それじゃぁ、また学校で」
「あぁ」
そう言って最上は帰って行った。
第一印象こそあまり良くなかったが、意外と良いやつだなあいつ。
「さて、俺も帰るかな」
「あ、じゃぁ私は電車だから」
「そうか、じゃぁ高城もここで」
「うん、バイバイ」
高城も行ってしまい、残ったのは俺と井宮だった。
「俺らも帰ろうぜ」
「そうね」
俺と井宮の家の方向は途中まで一緒だ。
帰り道、ゲームの攻略やイベントの話しなんかを話して帰るのが俺のたまの楽しみだったりする。
「はぁ~当分はゲームも出来ないわね」
「マジか? 俺はするぞ」
「なんでアンタはそれで高得点が取れるのよ」
「俺は要領が良いんだよ」
「そうは見えないけど、まぁ点数が良いから何も言えないわ」
「まぁ、何とか頑張って赤点回避しろよ、お前とは夏休みにしたいことがあるんだからよ」
「え……そ、それって……あの……」
「夏イベは熱いんだぞ! 補習なんかしてる場合じゃねぇ!」
「あー、はいはい。なんかわかってたわ」
「ん? なんか全然燃えてないな。お前だってわかるだろ? 夏のイベントの豪華さ!」
「わかってるわよ、でもさ……せかっくの高一の夏よ? 海とか夏祭りとか他にもいろいろあるでしょ?」
「はぁ? 暑い中海に行ったり、祭りに行ったり、何が楽しいんだ? 俺はクーラーの聞いた部屋でゲーム三昧が良いね」
「はぁ……あんな、本当にその顔なのに残念よね」
誰が残念な顔面だ!
そんなの俺が良くわかってるわ!
だが、夏休みには行きたいゲームイベントがある。
そこには行きたいかもしれないな。
そうだ、今のうちにこいつを誘ってみるか?
そうすれば赤点回避の目標も出来て良いかもしれないな。
「なぁ井宮」
「何?」
「来月だけど、大きなゲームイベントあるの知ってるか?」
「えぇ、知ってるけど?」
「一緒に行こうぜ、俺一人だと不安だからさ」
「え!? い、一緒って……ふ、二人で?」
「俺達意外に誰と行くんだよ、行ってみたかったんだよ。でも陰キャの俺にはハードル高くてなぁ~」
「ま、まぁ良いけど……なんで私なの?」
何を聞いてるんだこいつは?
そんなの決まってる。
「お前じゃないとダメなんだよ」
ゲーム仲間であり、俺の数少ない友人の一人。
井宮と行けばきっと楽しいし、二人で盛り上がれる。
他の奴と行っても俺のテンションについていけなくて疲れさせてしまうかもしれないからな。
「ま、そういうわけだ」
「……そ、そう……わ、わかったわ」
「ん? どうした? 暑いのか? 顔真っ赤だぞ?」
「な! そ、そんなことないわよ! じゃ、じゃぁ私こっちだから!」
「お、おう? またな」
井宮は顔を真っ赤にしてそのまま先に行ってしまった。
具合でも悪いのだろうか?
これであいつもきっとイベント行きたいだろうし、良いって言ってくれたし、あとは補習にならないように勉強を教えるだけだな。
「さて、俺も帰るか」
そう言って歩き出そうとした瞬間、俺の背中に誰かが抱き着いてきた。
家から近いこの場所でこんなことをしてくるのは、限られる。
恐らくあいつだろう。
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