第179話 奴らはどこにでもやってくる



「へぇ~知与の弟かぁ~」


「やっぱりこの子可愛い~持って帰っていい?」


「馬鹿! そんな事したら知与に殺されるわよ!」


 俺は今、席を強制的に移動され姉貴たちの席に来ていた。

 四方八方にモデルやアイドルが居る。

 しかも、なんだかこの空間だけ良い香りがする。

 珍しいものでも見るように彼女たちは俺を凝視していた。

 恐らく姉貴の弟と言うので珍しいのだろう。


「もう! せっかく泥棒猫共から奪還してきたのに、これじゃあどっちが安全かわからないじゃない!」


 そう思うなら家に帰してくれ……。

 俺は姉貴の愉快な仲間たちにもみくちゃにされながら、無心で飲み物を飲んでいた。


「ねぇねぇ、圭司くんだっけ? 彼女居ないの?」


「え? あぁ、いないっす」


「え? 嘘!?」


 なんでそこまで驚く?

 俺に彼女なんて出来るわけないだろう?

 あぁあれか、この人たちは高校に入れば自動的に恋人が出来る感じの人たちだ。

 出来ないなんてありえない、そう言う認識なんだろうな。

 しかし、俺のメンタルはそろそろ限界だ。

 さっさとこの場を後にしよう。

 別な席の方々の視線も痛いし。


「姉貴、悪いけど俺は帰る。疲れた」


「えぇー! お姉ちゃんの撮影見ていかないの?」


「やだ」


「ぶー!」


 そう言う姉貴をよそに俺は立ち上がる。

 すると姉貴の愉快な仲間たちは俺に手を振って笑顔でお見送りをしてくれた。

 恥ずかしいからマジでそう言うのやめてほしい。

 このまま帰ると流石に井宮達がうるさいので、井宮達の机にも挨拶をしていく。


「悪い、ちょっと急用でな先に帰るな」


「はい、先輩また後で!」


「圭司君? 今夜貴方の家に行くわ」


「じゃ、じゃぁね……」


「ふん……」


 相変わらずの空気に俺は気まずさを感じる。

 ファミレスを出てそのまま家に帰ろうと歩き始めた俺。

 しかし、出て直ぐに何者かに拉致られた。


「むー!むー!」


「全く、お前は休みの日まで」


「イケメンなど滅べばいい」


「前橋、お前はどこまでも俺達を裏切るんだなぁ!」


 決してクラスメイトではない。

 こんな醜悪な犯罪者みたいなやつらがクラスメイトだなんて認めたくない。

 てか、なんで休日にこんなところに大勢で居るんだよ!


「流石笹原隊長だ!」


「休みの日までリア充撲滅委員会の活動をしているなんて!」


「ふふ、そうだろう?」


「お前かよ!」


 そこに居たのは伊達メガネを掛けた英司だった。

 こいつ逃げたと思ったら仲間を集めてきやがった!

 てか、別にあんな状況嬉しくも何でもないぞ!

 ただの地獄だ!

 

「てか、お前ら俺のおかげで女子と打ち上げ出来たの忘れてない!?」


「それは感謝している、しかし!」


「「「「それはそれ、これはこれだ!」」」」」


「このクズどもが!!」


「あ、逃げたぞ!」


「追え!腕を縛ってるから遠くまではいけないはずだ!」


「ころせぇぇぇ!!」


 どうやら、無意味な打ち上げだったらしい。

 良く見るとところどころ人数が少ないように見える。

 休日だから予定があった奴がいたのか?

 そんなことを考えながら逃げていると、前方にクラスメイトの小野君と大滝さんを発見した。

 ん?

 待て、あの二人のあれって……デートじゃないか?


「おいお前ら止まれ!」


「なんだ?」


「命乞いか?」


「なら靴を舐めろ」


「三回周ってにゃんといえ」


「なんで猫なんだよ! そうじゃなくて、あそこに居るの同じクラスの小野じゃないか?」


「何!?」


「ほ、本当だ! なんで大滝さんと?」


「クソッ! なんか打ち上げで仲良くしてると思ったらそう言う事だったのか!」


「これは由々しき自体だ!」


「裏切り者を粛清するぞぉぉぉぉ!!」


「「「「ぉぉぉぉ!!」」」」


 そう言って俺を追いかけていたクラスメイト達は小野を追いかけて行ってしまった。

 ふぅ……小野には悪いがこれで俺は逃げられる。

 しかし、ちゃんと成果を出した奴も居たんだな。

 なんてことを考えながら帰ろうとすると。


「逃がさんぞ」


 増援が来た。

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