第178話 5人目?

 さて、どうしたものだろうか?

 帰ろうとしても帰れない。

 というか帰してくれない。

 場の空気は悪くなる一方。

 はぁ、この中に姉貴が居たら大変だったろうな。

 仕事で居なくて本当に良かった。

 なんてことを考えながら席に戻ろうとしていると……。


「圭ちゃ~ん!!」


 大きな声で外から俺の名前を呼ぶお姉様がファミレスの外に居た。

 まずい、そう思ったのと同時に俺は更なる地獄が始まるのを感じた。

 姉貴はそのままファミレスに入ってきた。

 ちゃんとした格好をしているということは、恐らく撮影の終わりか休憩中だろう。


「圭ちゃん偶然ね! まさかこんなところで会えるなんて~」


「あ、姉貴……撮影は?」


「今は休憩なんだよ、事務所の子とごはん食べに来たんだぁ~」


 そう言って姉貴の背後から、顔立ちの良い女性達が現れる。

 全員モデルにアイドルなど、顔面偏差値上位者ばかりだ。


「え? もしかしてこの子が知与の噂の弟?」


「へぇ~マジ? 流石姉弟ね」


「ねぇねぇ、彼女いるの~?」


「ちょっと! うちの弟に手を出さないでよね! 圭ちゃんは私の物なんだから!」


「違うっつの……」


 俺はため息を吐きながら、抱き着く姉を引きはがす。

 井宮達でさえも大変だってのに、このモデル軍団を相手になんかできねぇぞ、ここは用事があるとか嘘をついてでもさっさとこの場を……。


「あれ? 知与先輩じゃないですか」


「あら、高ノ宮ちゃんあなたもいたの?」


 言わんこっちゃない……。

 やってきたのは高ノ宮だった。

 先ほど以上に黒いオーラを強くし、姉貴に迫っている。

 高ノ宮は姉貴とその愉快な仲間たちを見ると、俺の方を向いて死んだような目でこう言った。


「先輩、高校デビューですか? 流石ですねぇ~モテモテで!」


「いや、そう言うわけじゃ……」


 高ノ宮からの圧がすごい。

 いや、この人たちとは俺も初対面だから!

 てかもう帰って良いかな?

 俺だんだん疲れてきた。

 その後、姉貴は愉快な仲間たちに連れられて、俺とは離れた席に座った。

 しかし、相変わらず席の空気は悪い。

 しかもさっきよりも更に悪くなっている気がする。

 飯も食ったしそろそろ帰りたいのだが……。

 そこに姉貴がやってきた。


「圭ちゃんどういうこと!? なんでこんなに大勢の女の子とごはん食べてるの?」


「いや……俺も何がなんだか……」


 姉貴は席の女性陣を見まわし、ため息を吐きながら言い放つ。


「はぁ……貴方たちねぇ……いくら圭ちゃんが好きでも女の修羅場に巻き込むのは間違ってるでしょ! 悪いけど圭ちゃんは私がもらっていき……」


「は?」


 姉貴の言葉を遮り俺は声を出してしまった。


「どうかした?」


「いや、姉貴勘違いしてるかもしれねぇけど、高ノ宮や川宮さんはさておき……他の二人はただの友達で……」


「え? 何を言ってるの? ここにいる全員、圭ちゃんのこと好きなんでしょ?」



 姉貴はとんでもない爆弾を投下した。

 井宮や高城はそれを聞いた瞬間、真っ赤な顔で立ち会があった。


「ち、違うわよ! な、ななな何を言ってるのよ!」


「そ、そうです!」


 必死に否定する高城と井宮。

 まぁそうだよなぁ、こいつらとは友達でそて以上の関係じゃない。

 こんな大勢の場でこんな根も葉もないことを言われたら、誰だって訂正したくなるだろう。


「あら、そうなの? まぁ私的には敵は少ない方がいいけど……いいの貴女達それで?」


「うっ……」


「そ、それは……」


 なんだ?

 なんでうろたえ始めたんだ?


「私は先輩のこと好きですよ」


「私も好きよ、圭司君のこと」


「そう、じゃぁ私の敵は貴方たち二人ってことね、ふっ良かったわ、楽勝ね」


「何を言ってんだよたく……」


 うちの姉貴のブラコンにも困ったもんだ。

 そのまま俺は姉貴に連れ去られ、姉貴たちの席に連行された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る