第180話 ちゃんと頭悪いのな、お前
*
「え? 今日の放課後?」
「そうよ」
休み明けの学校、俺は井宮に放課後の予定を聞かれていた。
この間のファミレスでの一件からなんだか機嫌が悪い気がしたのであまり声を掛けないでいたのだが、まさか向こうから話しかけてくるとは。
「まぁ、特に用は無いけど、そろそろテストだろ? 勉強とかしないとだろ」
「だから、一緒に勉強して上げるって言ってんでしょ?」
「え? あぁ、そういうことか」
文化祭も終わり、うちの学校は再来週にはテストが始まる。
テストが終れば楽しい夏休みなのだが、赤点を取ると補修地獄が待っている。
なるほど、夏はアニメやゲームの大きなイベントも多いから、お互いに赤点を回避してイベントに参加しようってことか!
なるほどなるほど。
「別に良いけど、ちなみにお前前回のテスト何点?」
「………き、聞かないで貰えるとありがたいわ」
ん?
こいつもしかして……。
「お前、もしかして赤点あった?」
「……うん」
「ま、まぁ誰だって赤点の一つくらい……」
「………」
「一つじゃないのか?」
「ま、まぁ……」
「何個?」
「……5個」
なんてこった、井宮ってちゃんと馬鹿だったのか。
いや、こういう場合ってあれじゃないの?
ギャルっぽい見た目に反して、実は成績良いですとかそう言うノリじゃないの?
もしかして俺を誘ったのも勉強を教えてもらうためか?
「お前マジでそんな馬鹿なの?」
「ば、馬鹿とは何よ! ちょっと点数が悪いだけじゃない!」
「いや、それを馬鹿って言うんだよ」
まぁでも、行きたいイベントもあるし、一人で行くのは勇気が出ないし、やるだけやってみるか。
俺は井宮に勉強を教えることにした。
ちなみに、俺は学年順位20番に入るくらいの実力を持っている。
顔が悪いんだから、せめて勉強して頭だけは人並みより少し良いくらいになろうと思い、ちゃんと勉強していた。
「アンタさ、自分の事を学園カースト最底辺の陰キャだとか言ってたけど……」
「俺、そこまで言ってたっけ?」
まぁ、陰キャとは言ってたけど。
「最近全然そんな感じしないわよね? ミスコンまで出てたし」
「何を言ってる? 俺は不細工、陰キャ、オタクと三拍子揃った最底辺だろ?」
「そのわりには随分可愛い先輩と後輩が居るのね」
川宮さんと高ノ宮さんの事か……。
こいつ、あのファミレス出の事をまだ言ってるな?
なんでこいつが怒る必要があるんだ?
これじゃぁまるで……。
「まるで彼女みたいな事いうんだな」
「は、はぁ!? 何馬鹿なこと言ってるのよ馬鹿!」
「いや、馬鹿はお前」
顔を真っ赤にして井宮はそう言ってきた。
まぁ、そんな話はありえないけど。
俺みたいな不細工、こいつだってごめんだろう。
物好きはには何でかモテるけど。
「じゃぁ、放課後いつものファミレスで良いか?」
「良いけど、高城さんも誘って良い?」
「あぁ、良いけど。じゃぁ俺も英司を誘うわ」
「なんでよ?」
「女子二人と俺が勉強してるなんてクラスの男子にバレたら……どうなると思う?」
「あぁ、良くわかったわ」
「わかれば良い」
早速俺は英司の元に行き、放課後の予定を聞いた。
「え? 放課後? 悪い用事があってな」
「マジかよ……」
英司がダメとなると、誰に頼もう。
最近ではクラスメイトの名前を覚えて来たし、挨拶する程度のやつも何人が居るが……。
なんせ、クラスメイトに彼女が出来たと知るや否や始末しようとする馬鹿ばっかりだ。
誰を誘って良いか分からん。
「比較的まともな九条や八代は部活連中と行っちまったし……どうするか?」
俺が悩んでいると急に肩を叩かれた。
「やぁ! 困っている用だね親友!」
振り返ると元気の良いイケメンが満面の笑顔でそこにいた。
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