第175話 嵐の予感



 このファミレスも常連になってしまった。

 しかしなぜだろうか、このファミレスに来ると俺はいつも注目を浴びている気がする。

 

「へぇ~高校で二人は仲良いんですね」


「そうなのよぉ~、前橋とは気が合うのよぉ~」


「……」


 俺はインテリアショップを後にし、昼食を食べるためにファミレスに来ていた。

 俺は英司と震えながら並んで座り、目の前にはニコニコしながらどす黒いオーラを放ち、井宮と高ノ宮が話をしていた。


「何で俺を巻き込んだ! お前の修羅場に俺を巻き込むな!」


「仕方ねぇだろ! 勝手にあいつらが修羅場ってるんだよ! 親友なら助けろ!」


「ふざけるな! 俺にあの二人をなんとか出来ると思ってんのか! さっき死ねってストレートに言われてるんだぞ!」


 目の前の事態を一人で処理するのは不可能と考えた俺は、英司を無理矢理ファミレスに連れてきた。

 というか、なんでこの二人の仲はこんな悪いんだ?

 そして英司はなんで二人から死ねって言われたんだ?

 謎が多いな……。


「それで前橋、この子と買い物なんてアンタ珍しいわね、いつもは家に引きこもってゲームするか、私と! ゲームしてるのに」


 なんで私を強調した?

 まぁ、良いけど。

 うーんを下着を見てしまったからなんて言えないし……。

 なんてことを考えていると高ノ宮が代わりに答えた。


「何を言ってるんですか? 先輩と私は昔かなり仲良かったんですよぉ~一緒に買い物くらい毎日! でもしますよぉ~!」


 今度は毎日を強調したぞ。

 高ノ宮、悪いが毎日は俺も付き合わないぞ?

 非常に重たい空気の中、料理が運ばれてきた。

 店員もテーブルの雰囲気に気が付き、気まずそうに料理を置いて去って行った。


「なぁ、前橋。俺これ食ったら帰るからな、ここにいたらあまりの空気の重さに吐く」


「まて、帰るなら俺も一緒にしてくれ、俺一人でこの二人を何とかするのは無理だ」


「馬鹿野郎、お前がまいた種だろうが! 責任とってどっちかをさっさと選べ」


「一体何を言ってんだよ!」


 俺と英司が食事をしながらこそこそ話をしていると、二人がこちらを向いた。

 

「前橋、あんたモテないとか言ったけど、結構モテるのね、これで何人目?」


「い、いや何を言ってんだよ、俺は見ての通りのブ男だモテる訳がない」


「先輩相変わらず卑屈ですねぇ~、そんな先輩が私は大好きですよ。あ、でも先輩がモテる件に関してはあとで詳しく教えてくださいね」


 二人とも笑顔なのにすごく怖い。

 一体俺が何をしたというんだ!


「ま、まぁ二人ともそんなギスギスしないで」


 お、英司が動いた!

 流石は俺の友人だ、きっと俺を助けるために何か……。


「じゃぁ、俺は帰るかた金はここに置いておくね」


 野郎逃げやがった!

 しまった、座るときに俺が通路側に座っていれば!

 英司は金を置いてそのまま去って行った。

 残された俺は井宮と高ノ宮に凝視される。


「ねぇ前橋、今度アンタの家に連れて行きなさいよ、私の部屋に来たのに不公平よ」


「いや、でもうちには姉貴が……」


「じゃぁ、先輩。うちに来ればいいじゃないですか! 隣だし、お姉さんから逃げることも出来ますよ!」


「お前の部屋、まだ何もねぇだろ」


 なんでこいつらは張り合うように話を進めるんだ?

 正直俺はもう限界だぞ。

 早く家に帰ってゲームしたい。

 その後にアニメ見たい!

 なんてことを考えながら注文した若鳥のチキンを口に入れる。

 そんな中、俺は気が付かなかった。

 新しいトラブルが二件、近づいていることに……。


「あ、やっぱり、圭司君と井宮さんだ」


「え? あ、高城」


 声を書けてきたのは高城だった。

 なんだ高城かと、俺は内心ほっとしたがよくよく考えたら安心できない。

 ここには高ノ宮が居る。

 高ノ宮は今でも俺が好きで近づく女をあまり良く思わない。

 そして高城は俺の初恋の相手。

 うん、詰んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る