第174話 お前は頑張った



 前橋の奴、なんで休日の午前中からこんな所にいるのかしら?

 確かあいつ、昨日は徹夜でログインしてたはずだけど……。

 まぁでも、ここで会ったのも何かの縁だしご飯にでも誘おうかしら?

 この前は奢ってもらっちゃたし、今回は私が奢るって言えばあいつ多分来るし。

 それに休みの日に折角会えたんだし、どうせなら一緒に居たいなぁ……。


「って私は何を考えてるのよ!」


 あぁ~なんか最近私ずっと前橋の事を考えてる気がする……。

 この前の文化祭のミスコンもなんかあいつカッコよかったし、それに打ち上げとかセッティングしてあいつなりに頑張ってたし。

 しかもあいつあんな事言ってたけど、神影の事をサポートしてたし!

 あいつ、口は悪いけど基本的にかなり良い奴なのよねぇ……だから人気あるんだろうけど。

 

「それにしても前橋遅いわねぇ……」


「それにしても圭司先輩遅いなぁ……どこ行ったんだろ?」


「え?」


 何、今この子圭司先輩って言った?

 確か前橋の名前って圭司よね?

 しかも先輩?

 何この金髪の美少女!!

 めっちゃ可愛いんだけど!

 え?

 まさかあの残念イケメンの知り合い?

 ま、まぁ可能性は十分あるわね、道を歩いてて大人気アイドルと知り合いになるくらいだし……。

 私は思わず圭司の名前を口にした子を見てフリーズした。

 しかし、そんんま私に気が付き、彼女はニコッと笑って私に尋ねた。


「あの、もしかして出すけど、前橋圭司先輩のお知り合いですか?」


「え? あぁうん、そうだけど……貴方も?」


 先手を取られてしまった。

 なんだろう、何となくだけど負けた気分……私歳下って苦手なのよねぇ。

 

「はい! あ、私は圭司先輩の中学時代の後輩で高ノ宮ユマリって言います!」


「へぇ~ユマリちゃんって言うんだ~」


 なんであの無自覚イケメンにはこうも可愛い女の子がくっ付いて来るのかしら?

 ただでさえライバルが手ごわいのにこれ以上競争相手を増やさないでよ!

 てか、あいつ中学時代も今もモテないとか言ってるけど嘘じゃない!

 モテモテよ!

 顔面に見合ったモテモテぶりじゃない!

 はぁ……もっと早く好きだって気づいてれば、ライバルが増える前になんとか出来たのかなぁ……。


「あの? 大丈夫ですか?」


「え! あ、あぁ大丈夫よ! もしかして前橋と来たの?」


「はい! 実は先輩の家の隣に越してきまして、買い出しの手伝いをしてもらってるんです!」


 えぇ……何その展開。

 ラブコメ漫画みたいな事になってるじゃない。

 あいつ、こんな後輩が居るなんて何で言わないのよ!

 まぁ、言う必要もないんだろうけど!


「そ、そうなんだ」


「貴方は先輩とどういう関係なんですか?」


「え? いや、私はただのクラスメイトで……」


「あぁ~やっぱりそうですよねぇ~」


 え?

 やっぱりどういうこと?


「先輩に私以外の女性の知り合いなんて居るわけ無いですもん、だって先輩超卑屈だし、クラスにも馴染もうとしないし、それに顔だけで先輩に近づく女性が多いので、先輩すっかり女性は信用してないんです。私意外」


「は?」


 何言ってんだろ、この金髪。

 それは昔の前橋でしょ?

 今のあいつは変わろうとして努力してるのよ。

 無自覚かもしれないけど、少しづつあいつは変わってる。

 まぁ、相変らず自分がイケメンだとは気が付いて無いけど……。

 私はこの子の言葉を聞き、今の前橋が否定されてる用ようで腹が立った。

 しかも私意外ってなに?

 私は前橋の事分かってますから的な?

 ふざけないでよ、オンライン上では私が一番付き合いが長いのよ!

 大体この子、なんで私にそんな話しするのよ?

 なんて事を考えながらユマリちゃんを睨んでいると突然私たちの前に見知った顔が現れた。


「やぁお二人さん! こんなところで偶然だねぇ~何をしているんだい? ちなみに僕はさっき排便を済ませて来たところだよ!」


「死んでください」


「一回死ねば」


「……すいません」


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