第173話 なんで俺が悪い感じになってるの?

 まぁ人気があるのは知っていた。

 確かにあいつは見てくれだけは可愛いからな。


「それなのにお前は彼女を振り! 彼女を悲しませた!! あぁ、なんか腹立ってきたな」


「まてまて、過去の話だろ」


「思い出すとやっぱり腹立つ! イケメン死ね!」


「イケメンじゃねぇよ、ただあいつに気に入られただけだろ?」


 やっぱりこいつに言わない方が良かっただろうか?

 まぁ、こいつ一人なら襲い掛かってきてもなんとかなるだろう。


「ってか、本題はそこじゃない。なんとか井宮にバレないようにこの場をやり過ごしたいのだが……」


「なんでだよ、別にバレても問題はねぇだろ?」


「いや、いろいろ質問されるのが面倒だ。なるべくそういう面倒ごとは起こしたくない」


「そこまでかよ……まぁ確かに井宮さんは面倒になるかもな……お前にとっては」


 何を言ってるんだこいつは?

 まぁいいや、とにかくわかってくれたみたいだし、どうにかして英司には井宮を引き付けててもらおう。


「そこでお前には井宮を引き付けててほしい、俺はその隙に高ノ宮を連れて逃げる」


「よし良いだろう! 報酬は……」


「わかってるよ、コンビニのチキンな」


「流石わかってるじゃないか! それじゃぁ俺の鍛えぬかれたコミュ力を見ていろ!」


 英司はそう言って井宮のところに向かっていった。

 さて、これで井宮は大丈夫だ。

 問題は高ノ宮だが、一体どこに行った?

 なんでカーテン売り場に居ないんだ?

 そんなことを考えていると、俺はトントンと肩を叩かれた。

 そこには井宮を足止めに行ったはずの英司が居た。

 そして英司は表情を引きつらせながら俺にこう言った。


「すまん……」


 そう言う英司の後ろには高ノ宮と井宮が居た。

 しまった、遅かったか!!

 俺はその場から逃げ出したい気持ちを抑えて、平静を装い二人に言った。


「やぁ、お前らどうした?」


「先輩?」


「前橋」


「「この子誰?」」


 なんでだろう。

 お互いが俺とどういう関係なのかを聞いているだけなのに、圧がすごい。

 なんだろう、別に悪いことをしているわけではないのにすごく悪いことをした気分だ。

 

「じゃ、じゃぁ俺はこれで……」


「おい待て英司! 俺を一人にするな!」


 この気まずい空間に俺一人はまずい。

 俺は英司を道連れにし、二人に状況を説明し始める。


「えっと、高ノ宮。こいつは高校の同じクラスので井宮だ、俺のゲーム友達なんだ」


「こんにちは、お嬢ちゃん」


「こんにちは! おばさん!」


 なんでいきなりこの二人は喧嘩腰なんだよ!

 誰か教えてくれ!

 



「どれが良いかなぁ~」


 私、高ノ宮ユマリはカーテンを見ながら先輩のことを考えていた。

 卒業式以来に会った先輩は変わってなかった。

 昔みたいに優しくて、なんだかんだで私に構ってくれる。

 今日も朝はアクシデントがあったけど、こうして買い物と称して先輩とデートが出来る。

 ずっと好きだった。

 振られた日はもちろん大泣きしたし、それから会えなくてすごく落ち込んだ。

 でも、私はあきらめなかった。

 先輩がどこの高校に行ったかを先生や先輩に聞き、私も来年はその高校を受験しようと思っていた。

 でも、まさか引っ越し先が先輩の家の隣なんて本当に私はついてる!

 きっと私と先輩は運命の赤い糸で繋がっているんだわ!

 

「それにしても圭司先輩遅いなぁ……どこに行ったんだろ?」


「それにしても前橋の奴遅いわねぇ」


「「え?」」


 え?

 この女の人、今前橋って言った?

 もしかしてだけど、先輩の知り合い?

 てか、すごい綺麗な人……いや、でも先輩って中学時代はバリバリのボッチだったし……高校でこんな美少女と仲良くなってなるかしら?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る