第172話 みんななんでここに?

「先輩! どうしましょう!」


「何が?」


「どれがいいかさっぱりわかりません!」


「好きにしろうよ」


 カーテンの売り場にやってくると高ノ宮はどれにしようかと迷っていた。

 さっさとあの窓にカーテンを付けて、今朝のような事故が無いようにしてほしい。

 そんな事を考えながら高ノ宮の買い物に付き合っている俺。

 そう言えば最近、俺の部屋の椅子もガタが来ていた。

 これを機に少し良い椅子でも買ってみようか?

 でも、ゲーミングとかの方がやっぱり良いののかな?

 なんて事を考えながら、俺はカーテン売り場の隣のデスクチェアーのコーナーに目を移す。


「色々あるんだなぁ……」


 あ、これなんて良いな。

 なんて事を思っていると、回りに気が付かずに誰かにぶつかってしまったりする。


「あ、すいません」


「いえいえ、こちらこ……って、なんだ前橋じゃない」


「え? って井宮!?」


 そこに居たのは私服姿の井宮だった。

 ヤバイ、非常にヤバイ!

 高ノ宮と一緒に居るとこなんて見られたら、色々質問されて面倒だ。

 しかも高ノ宮もあんな性格だから、絶対に俺と井宮の関係を変に疑ってくるぞ……。


「お、おう……奇遇だな、それじゃぁな」


「何よ、もう帰るの? てかなんか挙動不審よ」


「そ、そうか? いつも通りだろ?」


「いつものアンタはそんな風にマネキンと私を間違えるなんてユーモア持ってないわ」


「え? あぁ、背丈が同じだったから……」


「アンタの中で私はどんな存在なのよ」


 いかん、このままでは高ノ宮がコッチに来てしまう。

 仕方ない、ここは一時離脱だ!


「すまん! ちょっとトイレ!」


「あ、ちょっと!」


 俺はそのまま男子トイレに逃げた。

 ふぅー危ない危ない、寝不足のせいもあってか少々焦ってしまったようだ。

 てかなんでこんな所に井宮が居るんだよ!

 ここは早く店を後にした方が良さそうだな……でも高ノ宮の奴まだ掛かりそうだし。

 どうしたもんかなぁ……。


コンコン


 トイレの個室でそんな事を考えていると、待ってる人がドアをノックしてきた。

 いかん、トイレもしないのに便器を占領しているのは不味いな。


「すいません、今でま……」


「あ、よぉ圭司じゃねぇか!」


「な! 英司!」


 トイレを待っていたのはなんと英司だった。

 なんで俺の知り合いがインテリアショップに大集合してんだよ!

 と、一瞬慌てたものの落ち着け俺。

 英司は俺と高ノ宮の関係を知っている。

 それに英司自体も高ノ宮とは面識がある、

 別に高ノ宮と一緒に居ることを英司に見られてもいつものように理不尽にキレられて殺されそうにはならないはずだ!


「奇遇だな、トイレか? 悪いな占領しちゃって」


「あぁ、全然良いぜ。ちょっと待ってろ、全部出すから」


「待つ必要ある?」


 数分後、英司がトイレから出てきた。

 というかなんで俺は大人しくこいつの大便を待ってたんだ?


「ふぅースッキリスッキリ、それでお前は何しにきたんだ? お前が家具を見るなんて」


「いやぁまぁ……椅子が欲しくてな。それと実はな……」


 俺は隣に高ノ宮が引っ越してきた事。

 そして、偶然にも井宮と遭遇し、高ノ宮の事がバレたくない事を相談した。

 

「なるほどな、要するにあれだろ? お前を殺せば良いんだろ?」


「まて、なんでそうなる!」


「いや、ただの自慢にしか聞こえねぇんだよ! お前なんか死んじまえ!」


「いやいや待て! お前だって知ってるだろ? あの高ノ宮だぞ!」


「あぁ良く知ってるよ! 中学時代の彼女にした後輩ナンバーワン! 金髪に赤目で色白で、付いたあだ名がリリスちゃん!」


「そうなのか」


「なんでお前は知らねーんだよ! あの笑顔に何人の男が散っていったか……」


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