第170話 俺はなんどミスをするんだ


「あらあら、どこかで見た顔だと思ったら……久しぶりね高ノ宮ちゃん」


「お久しぶりですねぇ~ブラコン先輩」


「ありがとう、最高の誉め言葉よ」


「そんなんだから、圭司先輩に嫌われるんですよ~」


「嫌われてないわ、圭ちゃんは世界で一番お姉ちゃんを愛しているのよ!」


 そんな訳ないだろう。

 なんて事を思いながら俺は二人の口喧嘩を眺めていた。

 もう部屋に帰りたい……。

 というか、なんで姉貴出て来ちゃうんだよ!

 こんな所で喧嘩してたら、ご近所さんから苦情が来るだろうが!

 

「圭ちゃん、早く離れなさい、馬鹿がうつるわ」


「はぁ!? 私馬鹿じゃありません~!」


「成績は良くても馬鹿は馬鹿よ」


「先輩! 早くこの人と縁切った方いいですよ? 多分そのうち先輩を監禁し始めます!」


「私にそんな趣味ないわよ!」


 疑わしいところはあると思うぞ?

 てか、いい加減にしてくれないかな?

 早く俺は家に入って飯を食いたい。


「なんでも良いけど、家に入って良い?」


 いい加減にしてほしい俺がそう言うと、なんでか知らないがこうなった。


「圭司先輩、私ミートスパゲッティーが良いです」


「圭ちゃん、私はカルボナーラね」


「なんで俺が作るはめに……」


 三人で夕食を共にすることになってしまった。

 てか、なんで高ノ宮まで……。

 姉貴は高ノ宮と口論しながら、俺が作るパスタを待つ。

 この二人は最初に会った時からこんな感じだ。

 いつも姉貴か高ノ宮のどちらかが突っかかっていた。

 俺はその度に巻き込まれていい迷惑だ。


「中学生なんておこちゃまが、圭ちゃんの彼女になろうなんて百年早いのよ! 私みたいなアダルティーな女になって出直して来なさい!」


 自分でそれを言うのは恥ずかしいと思うのだが……。

 

「何を言ってるんですか? 先輩は若い子が大好きなんですよ、若ければ若いほど良いんです!」


 高ノ宮は高ノ宮で俺をロリコン見たいに言うな!

 

「何ですって! 圭ちゃん貴方まさか幼女に目覚めt……」


「んなわけねぇだろ!」


「全く、いい加減弟離れしたらどうですか?」


「何を言ってるの? きっともうすぐ私と圭ちゃんは実は血がつながっていないっていう裏設定が発覚して、私の大逆転勝利になるのよ!」


「んなわけねぇだろ」


 言っておくが、俺と姉貴は完璧に血の繋がった姉弟だ。

 そんな裏設定もない!

 てかそんなのあってたまるか!

 俺は人数分のパスタを完成させ、テーブルに並べる。

 

「だから! もぐもぐ……私は……ごく……圭司先輩が心配なんです!」


「もぐもぐ! もぐ! もぐもぐもぐ!!」


「食ってから話せよ!」


 もう何を言ってるのか一切分からない。

 まぁ、どうせしょうもないことを言ってるんだろうけど。

 食事を終え、喧嘩するだけ喧嘩した高ノ宮は隣の新居に帰っていった。


「じゃぁ、ごちそう様でした!」


「はいはい、さっさと帰れ」


「もうなんですか冷たーい」


「うるせぇ、良いから帰れよ」


「もう分かってますよ~、あ! そうだ忘れないうちに……」


 高ノ宮はそう言ってスマホを取り出した。


「連絡先交換しましょ」


「なんでだよ」


「いや、何でって……私に言わせます?」


 あぁ、何となく分かった。

 要する、振られたけどまた仲良くしたいから、卒業前に教えなかった連絡先を教えろってことか……まぁ、良いか、どうせお隣さんになっちまったし。

 俺はスマホを取り出し、連絡先を交換する。


「えへへ~ありがとうございまーす、良かったですね! 先輩の連絡先、女子が二人も登録されてますよ?」


「え? いや、もっと登録し……あ」


 しまった、俺は話の途中でそう思ったのだが、遅かった。


「え? どういうことですか?」


 高ノ宮の奴、興味を持ちやがった。

 はぁ……井宮のこととか高城のこととか、黙ってようと思ったのに。

 これは言うまで帰らねぇな。

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