第169話 ラスボスってお前……

「お前、俺に抱き着くなよ」


「なんでですか?」


「他人から誤解される」


「誤解されてしまえばいい」


「なんでだよ」


「だって、まだあきらめきれないんですもん」


「………」


 昔、俺は高ノ宮を振った。

 まぁその前にもこいつとは中学時代にいろいろあったのだが。

 とにかく、俺がこいつを振ったのだ。

 だから、俺はこいつ連絡先を教えずに姿を消した。

 その方がこいつのためにもなると思ったからだ。


「先輩、私まで先輩のこと大好きですよ」


「そうかよ……」


「心変わりして付き合ってみません?」


「………」


 なんでだろうか、いつもなら直ぐに断るのが俺なのに。

 すこし考えてしまった。

 こいつと付き合うということを……。

 なんでだろうか?

 俺は一人が好きだったはずなのに……。

 こいつを昔振ったからだろうか?


「あほか、新しい男でも見つけろ」


「えぇ~相変わらずなんだからぁ~」


 はぁ……この感じ、高ノ宮って感じだな。

 年下のくせに先輩の俺を舐めてやがるし。

 ま、なんだか懐かしい感じはするが……。


「おい、そろそろ俺の家だけど、お前の家はどこなんだ?」


「え? そこですけど?」


「は? 俺の家はここだが?」


 俺は自分の家を指さした、そしてその隣の真新しい家を高ノ宮が指さした。

 まさか……。

 

「お前まさか……」


「あ、お隣さんみたいですね!」


 笑顔でそういう高ノ宮。

 俺は思わず持っていた買い物袋を落としてしまった。

 やべぇ……何がヤバイってうちの姉貴がやべぇ……何をしでかすかわかんねぇ……。

 

「そうか、じゃぁあんまり干渉しないようにお互い静かに生きて行こうな! それじゃぁな!」


「待ってくださいよ! どうせなら先輩の家にお邪魔させてくださいよ! どうせご両親いないんでしょ?」


「なんで知ってるんだよ!」


「先輩が買ったのパスタの材料ですよね? しかも家族用にしては量が少ないし、アイスの個数も二個だけ、これは先輩とお姉さんが今日は二人きりっていう証拠ですよね?」


 え?

 何?

 こいつ探偵なの?

 いや、そうじゃなくて!


「お前馬鹿か! うちにはあの姉貴が居るんだぞ! お前もあの姉貴のこと知ってるだろ!」


「えぇ、私からしたら知与さんはラスボスですから、早めに倒したいんです」


「なんだよ倒すって……」


 ちなみに姉貴と高ノ宮は面識がある。

 まぁ、すげー仲悪いけど……。

 それもそうだ、ブラコンの姉と俺を好きな高ノ宮、仲が良いはずがない。

 ん?

 てか、今考えると俺って川宮さんと合わせて二回告白されてるんだよな?

 美人で不細工と結婚するもの好きが居ると聞いたことがあるが、俺の周り物好きが多すぎないか?


「とにかく帰れ! GOHOME!」


「犬じゃないんですから! 良いじゃないですか! 少しくらい!」


「だめだ! 女なんか家に入れてみろ! 夜中に姉貴が全裸でベッドにもぐりこんで来るんだぞ!」


「いや、マジっすか……」


 ほら姉貴引いてる!

 何が裸で寝る文化の国もあるから~だ!

 高ノ宮の奴がちで引いてるからな!


「そんなの聞いて先輩をあの家においておけると思います? じゃぁ私の家にどうぞ」


「なんでだよ!」


「このままじゃ先輩、実の姉に持っていけれますよ!」


「何をだよ!」


 まぁ、言いたいことはわかるが……時々俺も身の危険を感じるし。

 だからといってこいつの家に行くわけにはいかない。

 俺は家に帰ってパスタを食べるんだ!

 そんなこんなで騒がしくしていると、突如俺の家の玄関がゆっくり開いた。


「圭ちゃん? どうしたの? 夜にそんなさわいじゃ……」


「あ、姉貴!?」


 ヤバイ……死んだ。

 俺はその瞬間自分の顔から血の気の引くのを感じた。

 なんでこう次から次へといろいろなことが起こるんだよ!

 

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