第168話 俺とあいつは複雑な関係
「何をしてんだよ、てか離せ 」
「だから言ったじゃないですか~、引っ越してきたんですよこの辺に」
「あっそ、じゃぁ俺は帰るから」
「あぁもう! なんで久しぶりに会った後輩にそんな態度なんですか! もっと何かあるでしょ! てか、なんで私に連絡先を教えないで卒業したんですか! 先輩からは第二ボタンももらったのに!」
「お前が無理矢理取って行ったんだろうが!」
「それは先輩が意味わからないこと言っていつまでたっても私にくれなかったからですよ!」
てか、さっさと離れろ!
鬱陶しい!
なんで俺がこんな目に……。
ようやく文化祭も終わってゆっくり出来るかと思ったのに。
てか、目立ってるから早くどっか行ってほしい。
俺は高ノ宮に付きまとわれたまま、レジに行き会計を済ませてスーパーを出た。
「先輩元気でした?」
「まぁ、それなりにな」
「もう、またボッチでいるんですか? 仕方ないですねぇ、私がいないと先輩ボッチなんですから~」
「別にお前が居なくてもいいんだけど」
「先輩、中学卒業してから家族で引っ越したじゃないですか? ここら辺に住んでたんですね」
「まぁな」
「学校はどうですか? ま、どうせボッチでしょうけど」
まぁ、中学時代の俺を知るこいつならそういう予想をするのも無理はないな。
昔の俺なら、クラスの行事に積極参加したり、クラスの奴らとカラオケなんて絶対に行かなかった。
まぁ、こいつにその話をする必要はないし、別に話そうとも思わないが。
「まぁ、ぼちぼちだ」
「そうですか、じゃぁ私が入学する来年まで待っててくださいねぇ~、直ぐに行きますから」
「いや、来なくていい」
「何でですか!」
お前と知り合いだってことがクラスの奴らにバレると殺されかねないからだよ!
まぁ、性格はこうだがこいつは一応美少女だ。
あの個性豊かなクラスメイト達にそれを知られたら……。
「前島、一緒にサッカーしようぜ! お前ボールな!」
「前島! 人って裸で山に放置するとどうなるんだろうな?」
なんてことを言いかねない連中だ!
「またまた~そんなことを言って~、本当は私が恋しいくせにぃ~」
「んなわけねぇだろ、てかお前いつまでついてくるんだよ?」
俺はただ家に帰ろうと元来た道を戻っていたのだが、高ノ宮の奴はいつまでも俺の後ろについてきた。
「いや、私の家もこっちなんですよ、もしかしたらご近所だったり?」
「それはごめんだな」
歩きながら俺たちは昔の話をしたり、今の話をした。
まぁ、とは言っても高ノ宮が話をしているのを聞いていただけだが。
「先輩、あの……先輩が私に連絡先を渡さなかった理由って、やっぱりあれですか?」
「………まぁ、そうだな」
「……やっぱりですか」
急に空気が重たくなった。
俺が高ノ宮に連絡先を教えずに姿を消したのには訳があった。
それは別にこいつのせいではない。
むしろ、俺が馬鹿だったんだ。
だから、俺は出来ることならもうこいつとは会いたくなかった。
「あの時は悪かった」
「べ、別に良いですよ……私が変なことを言っちゃったから」
「でも、正直お前がいつも通りで少し安心しちまったよ。最低だな俺……」
「そ、そんなことないですよ! いつも通りの方が、私もよかったですから……」
「……第二ボタン、まだ持ってたのか」
「え? あ、はいまぁ……」
俺は気が付いていた。
高ノ宮のスマホについているストラップが俺の中学の頃の第二ボタンであることに。
恥ずかしそうにボタンを見せ高ノ宮は笑顔で言う。
「先輩のって言うと、みんな羨ましがるんですよ!」
「んなわけねぇだろ」
「先輩……」
「なんだ?」
彼女はそう言って俺の背中に抱き着いてきた。
先ほどまでのふざけた感じではなく、真面目にゆっくりと。
「寂しかったんですよ……この数か月」
「悪い……」
「もう、先輩は私を泣かせすぎです!」
「……そうだな」
「一度振った女でも、先輩は前みたいに仲良くしてくれますか?」
「………あぁ」
俺とこいつの関係は少し複雑だ。
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