第167話 四人目の美少女

 カーテンを締め、俺は部屋のパソコンの電源を入れた。

 最近出来なかった分を取り返そう!

 俺は意気揚々とオンラインゲームの中に入っていく。





「ん? もう夜か」 



 気が付くと、辺りは既に真っ暗だった。

 どうやら夢中で四時間もプレイしていたらしい。


「腹減ったなぁ~」


 両親はからは忙しくて今日は帰れないとメッセージが来ていた。

 何か冷蔵庫にあっただろうか?

 俺はそんな事を考えながら、一階のリビングに下りて行った。


「あ、圭ちゃんお腹減った?」


「姉貴も居たんだ。何か食うもんある?」


「あるわよ、はい。お姉ちゃんをた・べ・て」


「パスタ茹でるわ」


「ちょっ! なんでスルーするの!」


 相変らず姉貴には困った物だ。

 パスタは十分あるけど、問題は味付けだな。

 たらこパスタの素でも入れるか?

 でも無いな……。

 というか、パスタ自体があっても味を付ける食材や素が一切ない。


「買いに行くしかないか……」


「何買い物? じゃぁ久しぶりにおねぇちゃんと……」


「姉貴が居ると注目されるから俺一人で行くよ」


「もう! そんな事ないわよ! それに圭ちゃんも同じでしょ!」


「いやいや、なんでだよ」


 俺みたいな不細工が歩いてても別に注目はされねぇよ。

 俺は上着を来て近くのスーパーまで歩いて行った。


「えっと、パスタの素は……あ、あった」


 ミートソースにたらこ、カルボナーラも捨てがたい。

 にしても袋から出して混ぜるだけでその味になるんだから、この商品ってすごいよな?

 発明した人天才だろ。


「気分的にたらこだな」


 たらこスパゲッティーの口になっていた俺は、たらこスパゲッティーの素をカゴに入れて売り場を後にした。

 

「そう言えば姉貴がアイスとか言ってたな」


 出てくるときに姉貴から買い物に行くならと頼まれたのだ。

 まぁ、一緒に行くっていって断ったのは俺だし、それくらいは買っていかないとな。

 ついでに俺もなんか買おう。

 

「どれにしようかな……」


 売り場で俺が悩んでいると横からすいませんと声が聞こえてきた。

 ヤバイ、悩んでいて他の人の迷惑になっていただろうか?

 

「あ、すいません」


 俺はそう言いながら、その場をどけた。

 そして声の主の方を見ると俺は一瞬驚いた。

 長い金髪に赤い瞳、整った顔立ちの美少女がそこに居た。

 そんな彼女を見て驚き、そのままその場から……。


「ヤバイ!!」


 逃げ出した。


「え? あ、もしかして先輩!? ねぇ! 前橋先輩ですよねぇ!!」


「ひ、人違いです!!」


 ヤバイ、俺の人生の中でプライベートで遭遇したくない奴トップスリーに該当する奴と出会ってしまった。

 なんとかあいつから逃げなくては!

 そう思うが俺のカゴの中にはまだ清算を終えていない大量の商品がある。

 これをその場に放置して逃げる分けにはいかない。

 一体どうしたら?

 なんて事を考えていると……。


「やっぱり先輩だぁ! お久しぶりです! 前橋先輩!」


「な、なんでお前がこの町に……」


「最近引っ越してきたんですよぉ~」


 そいつは俺に追いつくと俺の背中にガッチリ抱きついてきた。

 俺が引きはがそうと力を込めるが全く動こうとしない。


「おい、さっさと離れろ高ノ宮!」


「もう! いつまで苗字で呼ぶんですか? 私の名前はユマリですよ?」


「うるせえ! お前はただでさえ目立つんだから大人しくしろ!」


 高ノ宮ユマリ(たかのみや ゆまり)、母親がロシア人で父親が日本人の女の子で俺の中学時代の後輩だ。

 その目立つ外見で当時は学校内でも人気が高かった。

 俺の黒歴史である中学時代を知る一人でもあり、高校に入学してから連絡を取っていなかったのだが……まさかこんな所で会うなんて……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る