第163話 あいつの得意分野
「よぉぉぉし! 王様は俺だぁぁぁ!!」
「畜生!」
「何を命令する気だこの駄王!」
「それじゃぁ……一番と十二番が……この激辛ハバネロ入りポテトをいっき食いだぁぁぁぁぁ!!」
「な、なんだと!?」
「この鬼! 悪魔! 人でなし!!」
「はぁ~っ! はっはっはっは!! 王様の命令は絶対だぜぇ~?」
「くそぉぉぉぉぉ!! ………虚しいな」
「うん、知ってる」
「男だけで何が楽しいんだよ……」
「ハバネロポテト食べる?」
「いや、別に良いよ。食べなくても」
まぁ、そりゃそうだろうな。
無理やりテンション上げてたみたいだけど、どうやら目が覚めた見たいだ。
こいつらやっぱりアホだな。
しかし、このままじゃ打ち上げの意味もねぇし……神影がクラスに馴染めねぇ。
いや、なんか神影がこのクラスに馴染んで染まっていくのもどうかと思えてきた。
「ねぇ、男子歌わないの?」
「え?」
そう言って来たのは女子のギャル三人組だ。
おぉ!
女子からお誘いだぞ!
ここで上手く女子と男子の壁を崩せれば!!
「え、そ……そこまで言うなら俺が……」
「待て待て、お前は持ち歌アニソンしかないだろ? 俺の美声に酔いしれろよ」
「おいおい、初っ端からデスボイスかますなよ、俺がいく」
あぁ、全くこいつらは女子絡みだと男子同士でいざこざを……。
このままじゃ埒が明かないし、仕方ないな。
「おい英司、お前行けよ」
「よっしゃ任せとけ!」
俺がそう言うと英司は立ち上がり、デンモクに曲を入れてマイクを握った。
「全く、カラオケキングの俺を置いて楽しむなんて許さないぜぇぇぇぇ!!」
「な! まさか英司が!」
「しかもこの曲は最近の人気曲!」
「トレンドまで押さえているというのか!!」
英司は意外にも歌唱力がある。
普段はお茶らけているし、馬鹿だし、アホだが、こいつは歌においては意外にも普通の高校生よりも恐らく上手い。
俺はこいつの歌唱力だけは評価している。
「お、おぉ……」
「普通に上手い……」
「笹原の癖に」
まぁ、男子が驚くのは当たり前だよなぁ。
英司の馬鹿な部分しか知らない奴らからしたらそりゃあ驚くよな。
よろけべ英司、女子からも好印象だぞ。
「へぇ~笹原って歌上手いんだ」
「意外ねぇ~」
「いつも馬鹿だけどねぇ~」
よし!
この調子で男女の仲を良好にし、神影をクラスに慣れさせる!
順番的に次は女子だろう、女子にデンモクを渡して次に歌う奴を決めて置こう。
「おい、井宮!」
「ん? 何よ?」
「英司が歌い終ったら、女子の誰でも良いから曲入れて歌ってくれ。折角の打ち上げなのに女子と男子が別々の事やってたら面白くねえだろ?」
「確かにそうね……アンタ、なんか段々仕切り役になって来たわね」
「今回は仕方なくだよ。良いから女子の中で決めてくれ」
「良いわよ、なんかアンタも頑張ってるみたいだし、協力して上げる」
俺は井宮にデンモクを渡して男子の方に戻る。
丁度英司も歌い終わったらしい。
終った後にはクラスの奴ら全員が歓声を上げていた。
「うぉぉぉ! 笹原やるじゃねぇか!」
「見直したぜおまえただの馬鹿じゃ無かったんだな!」
「ほんと、ただの馬鹿じゃなかったのね!」
「俺はてっきり前橋のおまけかと」
「お前ら散々言うじゃん」
良い感じで男女の壁が無くなってきたぞ!
あとは神影だな……なんとかクラスに馴染ませてやりたいけど……。
そんな事を考えていると、クラスメイトの女子がアイドルの最新曲を歌い始めた。
「神影、次お前が歌ったらどうだ?」
「え……いや、僕は……」
「歌は苦手か? それなら安心しろ、俺も音痴だ」
「いや、でもなんか気まずい空気になったら嫌だし……」
「大丈夫だ、ここはカラオケ。歌を歌う場所だ」
「そうだけど……」
まぁ、確かにクラスメイトの前でいきなり歌うのはハードル高いか。
少し様子を見た後にもう一回言ってみるか。
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