第159話  不参加一名

 しかし、クラスのイベントに参加するなんて初めてだな。

 中学の頃はそう言うの一切参加しないで来たから、なんだか学校以外でクラスメイトと会うのは新鮮だな。


「約束通り切っ掛けは作ってやったんだから、俺を埋めるのはやめろよ」


「埋める? 全くなんの話をしているんだ?」


「そんな酷いことをする奴らがいるのか?」


「まったく、誰だそいつらは! 俺たちがぶちのめしてきてやるよ!」


「いや、お前らだよ」


 全員記憶喪失か?

 調子の良い奴らだぜ、まったく……。

 そう言えば九条の奴、朝から姿を見ないな……洲巻にされてたけど、大丈夫なのか?


「そう言えば九条は?」


「あぁ、あいつなら今頃……いや、なんでもない」


「まぁ、恐らく大丈夫だろ?」


 おい、今何か言いかけたよな?

 本当に大丈夫なのか?

 こいつら一体九条に何をしたんだ!?

 ま、まぁ流石にこいつらも犯罪まがいのことはしないだろうが……。


「分かったらさっさと終わらせて帰ろうぜ、貴重な休みが台無しだ」


「それもそうだな」


「あと少しだし、頑張るか」


 その後俺たちは三組の教室の片付けをし、15時頃に解散した。

 ほとんどのクラスは午前中で作業を終えており、残っているのは俺たちのクラスだけだった。

 帰るころには女子にも打ち上げの話が広まっており、作業が終ったあとは全員で打ち上げの相談を簡単にする事になった。


「んじゃ、駅前のカラオケ予約するから、明日は朝からそこに集合な」


「おう、任せろ! 三時間前から待ってるぜ!」


「いや、普通に来てくれ」


「クラスの皆で集まるなんて初めてだね」


「そうよねぇ~なんか楽しそう!」


 女子も結構乗り気で良かった。

 カラオケなら盛り上がるし、会話に困る事も何か余興を準備する必要もない。

 それに、放っておいてもこいつらは騒ぐし、騒いでもカラオケの個室ならうるさいと怒られる心配が無い。

 結局クラスの奴ら全員参加か……幹事だし俺は絶対出席なのが辛いとこだな。

 なんて事を思っていたのだが、俺は参加者の名簿をスマホで作って確認していると、一人だけ不参加になっている奴を見つけた。


「神影深(みかげ しん)?」


 神影深?

 顔が思い出せないな……なんで不参加なんだ?

 他の奴らは皆参加するのに……もしかして用事でもあるのか?

 それとも俺みたいなタイプで面倒臭いとかか?

 まぁ、そうだった場合気持ちは分かるが……。


「なぁ英司」


「ん? なんだよ?」


「神影ってどこにいる?」


「神影? ……あぁ、神影深か!」


「なんだ、お前も良く知らないのか?」


「正直な。クラスでも影が薄いし、特に仲の良い奴も居なかったと思うぞ? 多分今日はもう帰ったんじゃないか?」


「……そうか」


 自分は参加しないからもう帰ったのか?

 だが、一人だけ参加しないってのもなんかなぁ……。

 みんなで稼いだ金で打ち上げをするわけだし。


「まだ学校に居るかもしれないな……」


 俺はそう思い、教室を出て神代を探しに向かった。

 恐らく急げばまだ昇降口辺りにいるのではないだろうか?

 俺は急いで昇降口に向かった。

 しかし、誰も居ない。

 やっぱり帰ってしまったのだろうか?

 まぁ、参加出来ないと本人が言ってるんだし、そこは相手の意見を尊重するか……。

 俺はそんな事を考えながら、教室に戻ろうとした。

 その瞬間、俺は誰かとぶつかった。


「あいてっ……」


「あ、す……すいません!」


「いや、悪い。俺もよそ見を……」


 そう言って顔を上げると見た事の無い男子生徒がいた。

 眼鏡を掛けた男子生徒でなんだか内気そうな感じがする。

 うちのクラスの下駄箱に行こうとしていたってことは……もしかしてこいつが?


「お前神影か?」


「え? う、うんそうだけど?」






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