第157話 文化祭編46
*
男子から解放され、俺はようやく自由になった。
「はぁ……やっと帰れる」
色々な事があった文化祭だったが、無事に終ってよかった。
そう言えば父さんと母さんは来なかったな……ま、仕事が忙しいんだろう。
そんな事を考えながら昇降口で靴を履き替えていると、急に目の前に飲み物が下りてきた。
「なんだ、誰だよ」
そう言いながら後ろを振り向くと、そこには帰ったとばかり思っていた井宮と高城が居た。
「お疲れ」
「ん? 井宮に高城? 帰ったんじゃないのか?」
「ま、圭司君を待ってたんだよ」
「俺を? なんで?」
「アンタにこれを渡すためよ、はい」
そう言って井宮は俺に金一封と書かれた封筒を受け取った。
なんだこれ?
「優勝おめでとう! 圭司君!」
「え? 優勝? 何で?」
「ミスコンよ、男子の部ではアンタが優勝したのよ」
「おいおい、エイプリルフールはとっくに過ぎたぞ?」
「なんでこんな嘘を付かないといけないのよ」
俺がミスコン優勝?
いやいや何かの間違いだろう?
だって、あのメンツの中だったら俺より顔の良い男子なんていくらでも居たぞ?
それともあの審査員がダメだったから、くじ引きで優勝者を決めたとかか?
それならまぁ、納得だな。
「ま、なんでも良いけどそれはアンタのなんだから受け取りなさいよ」
「ん、まぁ貰えるもんは貰うけど……そう言えば女子の部はどっちが優勝したんだ?」
「え? あぁ……」
「そ、それはあの……」
俺がそう尋ねると、二人は顔を見合わせて複雑そうな表情をする。
どうしたんだ?
まさかこいつらが優勝じゃなかったとか?
まぁ、審査員が審査員だしな……。
「あ、じゃ…じゃぁ……前橋君はどっちが優勝したと思う?」
「え?」
「あ、それ良いわね。どっちだと思う?」
うわぁ……どっちっても答えずらい質問が来たぞ……。
やべぇどうしよう……。
てかひいきとか抜きにしても、こいつら二人のどっちが可愛いって言われても答えられねぇよ。
うーん、ここはどっちにも悪い印象を与えない答えで……。
「どっちも……とかじゃね?」
俺がそう言うと二人ははぁーっとため息を吐いた。
え?
なんで?
俺のこの答何か間違ってた!?
いや、でも難しい質問だぞ!
どっちが一番なんて、アンケートでも票が割れて未だに学校一の美少女決まってねぇんだから!
なんてことを考えながら俺が焦っていると、井宮が残念な人を見るような目でこういった。
「正解……」
「な、なんだよ当たってんじゃねぇか! さっきのため息は何なんだよ!」
「別に……」
「圭司君、あの答えはちょっと……」
「高城まで!?」
いや正解したのに何この扱い!?
てか、二人とも一位だったのか。
まぁあの審査員だったし、そう言うのもあるのかもな。
「ま、でも賞金が半分とは言え手に入ったのはラッキーね」
「そうだね、何に使おうかなぁ~」
「あ、そうか賞金は確か現金5万円か……」
俺は賞金の額を思い出し、渡された金一封と書かれた封筒を確認する。
おぉ!
福沢大先生が5人居る!
やったぞ!
これで新しいゲームが帰る~。
「よし、さっさと帰ってネット通販だな!」
「まぁまぁ、そんな焦って帰らなくても良いじゃな~い?」
「なんだ井宮? 手を離せ、俺は帰る」
「私お腹減ったなぁ~」
「てめぇたかる気か!」
「わ、私もお腹減った……」
「高城も!?」
「奢りなさいよぉ~」
「お前らも金貰っただろうが!」
「奢りって素敵よね?」
「奢られる方わな!」
「わ、私は皆でご飯食べて帰りたいなぁ……」
「ま、待て高城! お前まで井宮みたいになるな!」
「ほら、良いから行くわよ」
「馬鹿、押すな!」
「休みだし、ファミレス混んでそうだね」
こうして俺はあれよあれよとファミレスまで連行された。
俺の貴重なゲーム時間が……。
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