第155話 文化祭編44



 文化祭の片付けは翌日に行うことになっている。

 その理由は大規模な出店をしたクラスや部活は一日では片づけが終らないからだ。

 その為、文化祭が終った俺たちはそのまま教室でホームルームをして帰宅となるはずだったのだが……。


「……おい」


「なんだ圭司?」


「なんで俺はクラスの男子に囲まれている?」


 なんでか俺は四方八方をクラスの男子生徒に囲まれていた。

 いや、なんで?

 さっきまで結構良い雰囲気だったんだよ?

 皆で負けたけどよくやった!

 って、盛り上がってたんだよ?

 でもなんで今の皆は怖い顔で俺を睨んでるの?


「よぉーし! お前ら圭司を山に埋めに行くぞー!」


「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」


「いや、待て待て!!」


「なんで? 命乞いか?」


「ちげーよ! なんで俺が殺される流れになってんだよ!」


「とぼけんじゃねぇ!! お前はうちの二大美少女を独占しただけでは飽き足らず! 美人なお姉さんとそのお友達とも親密で! しかも謎の美少女とまで親密な様子だった! これが嫉妬せずにいられるかぁぁぁぁぁ!!」


「コロス!」


「一緒に虫の死骸を埋めよう……」


「へへへへへ!!」


「酷いよ前橋君! 僕というものがありながら!」


 忘れてた、こいつら馬鹿だった……。

 てか英司、さっきまでのあの空気感どこにやった?

 よくさっきの最上との会話の流れから、こんなにキャラチェン出来るな!

 てか、一人おかしな事を言ってる奴いるぞ!

 別な意味で怖いわ!!


「ふっ、全くお前という奴は……文化祭でリア充のような振る舞いをするからこうなる」


「俺がいつリア充みたいな事をしたんだよ!」


 文化祭中は働いたりミスコン出たり、井宮達と出店を見て回ったりしかしてないぞ!

 結構普通の事しかしてないし、別に羨まれることなんてしていない。

 

「全く、自覚の無い奴はこれだから嫌だぜ」


「自覚も何も、別に俺はリア充見たいなことなんて……」


「美少女二人と文化祭を回った時点でもうリア充じゃねーか」


「それだけで!?」


 いや、クラスメイトと文化祭を回っただけだろ……。

 

「我々一年一組の男子の鉄の掟! 忘れた訳じゃあるまいな?」


「いや、まず鉄の掟が初耳だよ」


「抜け駆けするべからず! お前はこの掟を破った!!」


「あれ? 俺の話聞こえてる?」


 英司はそう言いながら額に『隊長』と書かれたハチマキを巻く。

 お前、いつから隊長になったんだよ……。


「ちきしょう! やっぱり顔なのかよ!」


「羨ましいぞこのやろう!」


「てか、お姉さんを紹介しろ!」


「そうだ! 将来的には俺の弟になれ!」


 クラスメイトが涙を流しなら俺にそう言う。

 あんな姉で良いならいくらでも紹介するが……いや、やっぱりダメだな。

 姉貴のことだ、俺の変な話をするに違いない。

 

「はぁ……それでお前らは俺をどうするつもりだよ」


「だから言ってるだろ?」


 英司がそう言った瞬間、男子のクラスメイト達が背後からスコップや軍手を取り出す。


「埋める」


「いやいや! それ犯罪! 暴行罪!」


「バレなきゃ犯罪じゃねーんだよ」


「極悪人か!」


 ヤバイこいつら目がマジだ……なんとかしないと。


「ん? そう言えば九条はどうした? さっきから姿が見えないが……」


「あぁ、九条ならもう……」


 そう言いながら英司はスマホの画面を俺に見せてくる。

 そこには、洲巻にさた九条が教室に倒れている画像が写っていた。


「制裁を加えた」


「九条……」


 お前一体何をしたんだよ……。

 まぁ、イケメンだし女子にモテるだろうけど、ここまでするか?


「九条は二組の双海(ふたみ)さんから文化祭デートに誘われていた! そんな抜け駆けを俺たちは許さない!!」


「誘われただけでこうなるの!?」


 うちのクラスの男子怖すぎないか?

 ひょっとしたらそこら辺の不良とかよりもヤバイんじゃ……。

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