第154話 文化祭編43


「それでは結果発表をしたいと思います!」


 体育館では校長が長々と話をし、ようやく文化祭の結果を発表しようとしていた。

 正直言うと結構ドキドキする。

 ここまで学校行事で勝ちたいと思ったのは初めてかもしれない。

 まず各学年のクラス賞が発表される。

 三年は二組、二年生は一組がクラス賞を手にしていた。

 

「最後は一年生です! 一年生は初めての文化祭にも関わらず、どのクラスもユニークで楽しい出し物でした。その中でも最も優秀だったのは……」


 俺達一組か?

 それとも最上達の三組か?

 この校長の言葉で俺と最上の勝負の決着が付く!


「発表します! 一年生クラス賞は……」


 校長なんでこんなに溜めるんだよ!

 スッと言ってくれ!!

 なんか知らねーけどメチャクチャドキドキすんだよ!!


「………一年三組です!!」


「「「「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」」」」


 三組から歓声が巻き起こる。

 逆に俺たちのクラスはお通夜みたいな空気になってしまった。


「そ、そんな……」


「やっぱり勝てないのか」


「あれだけの売り上げだったのに……」


「………」


 俺も悔しかった。

 本当に勝ちたかった。

 勝ってあいつに証明したかった。

 諦めなければどんな状況からでも人は逆転出来るんだと……。


「くそっ!」


 ゲーム以外でここまで悔しいと思ったのはいつ以来だろうか。

 この調子だと総合優勝も三組か?

 なんて事を思っていた俺たちだったが、なんと総合優勝は三年一組だった。

 聞いた話によると、俺たちや最上のクラスの売り上げは上級生の他のクラスに比べると劣っているらしい。

 

「結局、俺たちはやっぱり一年なのか……」


「なんの話だよ?」


「別に……なんか悔しいだけだよ」


 教室に戻りながら、俺は英司と話をしていた。

 英司の知っている先輩のクラスは売り上げが二日合わせて軽く50万は行っていたらしい。

 一体どんな出し物をしたらそんなに稼げるんだ?


「ま、うちの学校の学園祭はハイレベルだ、それに初参加の一年が食らいついてっただけで上出来だよ」


「そうだけどよ」


 あんだけ頑張って恥を晒したというのに……やっぱりあんな手法で儲けられる金額なんてたかが知れてるんだな。


「前橋君」


「ん? お前……」


 クラスに戻る途中、俺達は最上と会った。

 どうせ「ふっ! 勝ったのは僕達クラスのようだね!」とか言ってくるんだろうな……。

 そんな事を考えていると、最上は穏やかな表情で俺に言った。


「負けたよ……」


「はぁ?」


 何言ってんだこいつ?

 勝ったのは三組だろ?


「おい、耳の調子でも悪くなったのか? 勝ったのはお前たちだろ?」


「あぁ、そうだよ……でも、僕は君に負けたよ……君はすごいな」


「何がだよ」


 別に何もすごいことなんてしてないんだが?


「君は僕と違って難しい状況で決して諦めない粘り強さを持ってる。もしかしたら、クラス賞だって取っていたのは君たちのクラスだったかもしれない」


「なんだよ、皮肉か? 心配しなくても次は勝つよ」


「……君は本当に強いな」


「なんだよ、馬鹿にするんならまた今度に……」


 俺がそう言いかけると、最上が頭を下げてきた。


「ミスコンではすまなかった。自分から勝負を仕掛けてあの態度は失礼だった。謝罪する」


「え? あ、いや……そんな改まって言われるとなぁ……」


「来年は負けない! 今年は君が勝ったかもしれない、でも! 来年こそは僕が勝つ!」


 え?

 何?

 俺来年もミスコン出るの?

 絶対嫌だよ!

 あれ?

 てか、今年のミスコンの優勝者って結局誰なんだ?

 そう言えば俺途中で抜けて来たから全然知らねぇな。

 まぁ、でもやっぱり最上はこのテンションじゃないとなんかしっくりこねーわ。


「何言ってんのかいまいちわからねーけど。俺のライバル名乗るなら簡単に諦めんなよ」


「あぁ!」


 最上はそう言って俺に手を差し出してくる。

 なんで握手?

 そう思ったが、俺は何となく流れでそれに応じた。

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