第153話 文化祭編42
「三組の売り上げも油断出来ねぇな……」
「何を難しい顔してんだよ」
「ん? なんだ英司かいつまで緑色で居るんだ?」
「あぁ、なんか慣れちまってなこの恰好」
「慣れるなよ……」
俺が考え事をしていると英司が俺に話かけて来た。
現金を数え終え、クラス委員の池内が実行委員会の本部まで売り上げ報告を持っていったようだ。
「なんかお前、変わったな」
「え?」
「ミスコン出たり、なんか色々頑張ってみたり、どうしたんだ?」
「なんだよ、どうしたって? 別にどうもしてねぇよ」
「そうか? 昔のお前は学校行事にも全く参加しなかったし、クラスの為に頑張るなんて絶対しなかったぞ」
「まぁ……そうだな」
言われて見れば確かにそうだ。
俺は目立たないのがクラスでの立ち位置だった。
なのに、なぜだろうか。
流されるまま俺はミスコンに出たり、クラスの勝利の為に尽力したり。
中学までの自分とはまるで別人のようだ。
なんでだろう……別に俺がミスコンに出る必要は無かった。
もっと言ってしまえば、あんな勝負受けなくても良かった。
しかも、最上に負けたく無いがために俺はクラスの出し物にまで全力で協力した。
「……なんでだろうな」
「分からねぇか……ま、俺は何となく分かってるけどな」
「なんで分かるんだよ、教えろ」
「嫌だね、これはお前が気が付かなきゃ意味がねーんだよ」
「はぁ?」
全くなんなんだこいつは、意味の分からない事ばかり言いやがって。
意味が分からないのはそのコスプレだけにして欲しいものだ。
「ふっ……お前にこの学校を進めて良かったのかもしれねぇよ」
「なんだよ、急に昔話か?」
「いや、別に……なぁ、楽しいか?」
「は? 何がだよ?」
「学校だよ」
「馬鹿か、面倒なだけだね。授業はだるいし、クラスの奴らも毎日うるせぇ」
「そうか」
「……まぁ、でも……退屈はしないな」
「……そうかよ」
英司はそう言うとストレッチをし始めた。
なんだ?
なんで体を動かす準備を始めてるんだ?
「さて、最後にもう一仕事あるだろうし、着替えてくるかな」
「そうしろそうしろ、お前のその姿は見てて不気味だ」
「うるせぇ!」
英司はそう言いながら教室を出ようとした。
その瞬間、英司は俺の方を向いた。
「圭司!」
「ん?」
「クラス賞取れるといいな!」
「お、おう?」
そう言って英司は教室を出て行った。
なんで今そんな事を言ったんだあいつ?
わからん。
なんかあいつ変だぞ?
そんな事を考えていると、今度はクラスの奴らが俺に話かけてきた。
「よぉ前橋! やっぱり流石だな!」
「宿泊学習の時も思ったけど、かなり頭の回転早いよね!」
「顔が良いだけじゃないんだよなぁ~」
「イケメンで出来る男って完璧よねぇ~」
「お、お前らなんだ! 集まるな散れ!」
「おいおい~そんな照れるなよぉ~」
気が付くとクラスメイトに囲まれていた。
宿泊学習の時からというものもいつらはなんだか俺を過大評価してないか?
「あのなぁ、別に俺一人がすごかったわけじぇねぇだろ? 全員で頑張ったからこういう結果になってんだよ。俺一人が頑張ったみたいにいうな、お前らも頑張ったろうが、自覚しやがれ」
何を勘違いしてんだ?
俺一人でやった訳じゃねーし、今回に至っては皆で準備もしてただろうが。
「お、おぉ……」
「ヤバイ、私キュンと来たかも……」
「顔面もイケメンの癖にこういうところもイケメンかよ……反則だろ」
「流石だな前橋は」
「ま、埋めるけどな」
うるさい奴らだ。
まだ結果発表もまだだろうに……まぁでも……。
「……結構楽しかったな」
こんな事を思うのは学校の行事では初めてだな。
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