第152話 文化祭編41

「たく……」


 姉貴たちも見送ったし、さてあとは接客に集中……。


「圭司君!」


「ぶふっ!!」


 姉貴たちの次に並んでいたのは、フルメイクで変装した川宮さんだった。

 ニコニコしながらなぜか知らないが札束を握っている。

 一体その札束で何をする気だ!

 往復ビンタか!?


「あ、あの……騒ぎになるので帰ってください」


「平気よ、圭司君以外は私だって気が付いてないから。それにしても……圭司君やれば出来るじゃない!」


「何がっすか?」


「今日はどうしちゃったのぉ~? ミスコンなんていつもの圭司君じゃ絶対に出ないようなイベントに出てるし、それに……こんなカッコ良くなっちゃってぇ~。お姉さんトキメイちゃったわ~」


「あぁ、そうですか。お世辞でもうれしいです。それじゃぁ一枚とってそのまま帰ってもらえます?」


「嫌よ、何のためにATMでお金を下してきたと思ってるのよ!」


「下ろさないで下さい」


「とりあえず1000枚分お願い」


「馬鹿なんですか?」


「良いから撮りなさい! 金はあるわ!」


「成金のセリフですよ、それ……はぁ、一枚で我慢してくださいよ」


 俺はそういいながら、撮影の準備を始める。

 

「もう、圭司君は意地悪なんだからぁ~」


「意地悪とかじゃないですよ、いきますよー」


「え、もう!? 今!? メイクを直す時間は!?」


「それ以上可愛くなってどうしたいんすか……」


「っ! い、いきなりそういうことを言うのは卑怯よ!!」


「何がですか……もう撮りますよ」


 なぜか川宮さんが顔を真っ赤にしているうちに写真を撮影する。

 

「はいはーい、それじゃあ後は私が預かるから」


「あ、マネージャーさん」


「もう、この子はすぐに先に行っちゃうんだから……前橋君ごめんね」


「いえ、じゃあお願いします」


「え!? もう終わり!! ちょっとマネージャーさん! 私の恋路を邪魔するのはやめてください!! そんなんだから彼氏居なイタッ!」


「真奈? それ以上言ったら怒るわよ……」


 あ、岡島さんの目がマジだ。

 婚期を逃した女性に結婚関連の話しはしない方がいいよなぁ……。

 ここまで怒った岡島さん初めてみたかも。

 

「なんだか知り合いばっかり来る気がするなぁ……」


 そのせいかクラス内で変な噂が立ってるぞ。

 

「なんか前橋君って意外と女性の知り合い多いのね」


「まぁ、あの顔だからねぇー」


「てか、男子がなんか怖いんだけど……」


 女子は良い、ただ噂をしているだけだから放っておけば収まるだろう。

 やっぱり問題は男子だ。

 

「ふひひひひひ! 埋めるだけじゃ気が済まねぇ!! お前ら木の苗を用意しろ! 前橋を植えたところに木を植えて養分を吸わせるんだ!」


「待て! それは時間がかかる! 裸にして木に吊るそう!!」


 なんかさっきよりも恐ろしいことを考えてるぞ……。

 文化祭が終わったら速攻で帰ろう。

 さて、もう誰も来ないよな?

 よし、接客の続きをするか……。



『以上で文化祭全日程を終了いたします。一般のお客様は速やかにお帰りください。在校生は体育館にて閉会式を行います。閉会式は一時間後です。各クラス、まだ売り上げ記録を出していないクラスは速やかに実行委員会本部まで持ってきてください』


 文化祭が終了した。

 俺たちは一日目と二日目の売り上げを計算していた。

 

「どうだ英司?」


「一日目が12万、二日目は……26万だ!!」


「マジかよ!」


「昨日の倍以上じゃないか!」


「やっぱり前橋のテイクアウト手法が聞いたか!」


「もしかしたら、総合優勝も狙えんじゃね?」


 クラスの奴らは金額を聞いて盛り上がっていた。

 それもそうだろう、昨日の倍の売り上げの二倍だ、普通に考えて期待してしまう。

 だが、俺はそこで浮かれることができなかった。

 おそらくうちでここまで売り上げだ。

 最上のところはもしかしたらもっと多くの売り上げを出しているかもしれない。

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