第150話 文化祭編39
*
「なっ……」
僕は前橋君のクラスを見てビックリした。
とんでもない行列が廊下まで伸びており、その列が階段まで続いて居るのだ。
「な、なんでこんな事に!!」
昨日まではうちは余裕で勝ってた。
この差はなんだ!?
この数時間で一体何をした?
まさか本当にあの差を覆すつもりなのか!
「ねぇねぇ、この店でしょ? あのカッコいい子が居るお店って」
「そうそう! なんでも一緒に写真撮ってくれるんだって!」
カッコいい子……そうか前橋君か。
でも、前橋君一人でここまでの行列を作るとは思えない。
それに並んでるのは女子だけじゃない、男子もだ!
一体どんな秘密が!!
「あ、いらっしゃ……ってんだよ、最上か」
「前橋君……一体何を……」
「何って、お前に負けたくねぇからこうして営業努力してんだよ」
「営業努力?」
「あぁ、それでどうする? テイクアウトか? それとも店内か?」
「え? あ、え?」
「ん? 写真撮影だけだと500円な。ってかお前俺と写真撮りたいの?」
「ま、待ってくれ! 昨日までは普通にコスプレ喫茶だったはずだろ! なんでテイクアウトなんて!」
「お前のクラスに勝つためだ」
「む、無理に決まってるだろ! もうあと三時間くらいで学園祭は終る! そんな三時間でどうこうなんてなるわけ……」
「そうだな……ならねぇかもな、確かにお前の言う通り差もかなり開いてるからな……でもお前と違って俺は諦めが悪いんだ」
そう言った彼の目はものすごく真っすぐだった。
そうか……僕がなんで彼に勝てないのか分かった。
どんな格上でも彼は諦めない。
例え無謀な挑戦だったとしても彼は諦めない。
だから強いんだ。
だから、皆から信頼されるし、不思議と人が集まるんだ。
それに比べて僕は……クラスの皆に頼りきりで、自分の勝負まで投げ出して……。
「それで……お前はどうすんの?」
「……フフフ、決まってるだろ! 僕も全力で答えて上げよう!! それがライバルの務めだ!!」
「やっといつも通りのうぜぇ感じに戻ったな」
「フフフ、せいぜい結果発表を楽しみにしているといいさ!」
僕は前橋君のクラスをダッシュで後にした。
このままでは、結果がどうなるか分からない。
だから僕はクラスに戻って全力で彼を迎え討つ。
*
「前橋! いいぞ! この調子で行けば最終優秀賞も夢じゃねぇ!!」
「よし! てか、ミスコンに行ったあの二人はまだか? あいつらも重要な収入源なんだぞ!」
文化祭終了まで残り三時間、俺は接客をしながら皆に指示を出していた。
まさか店を経営するゲームで得た知識がこんな形で役に立つとは……。
意外と俺って経営者に向いてる?
そんな事を考えていると、廊下がなんだか騒がしくなった。
「なんだ一体?」
「前橋! あの二人が帰って来たぞ!」
「本当か!!」
池内がそう言った後、その二人は直ぐに教室に入って来た。
「ごめん、遅れた!」
「な、なんかすごい声掛けられて……」
「やっと来たか」
やっと高城と井宮が戻ってきやがった。
これで更に売り上げに追い込みを掛けられる!
「井宮、高城! 悪いけど早く店に入ってくれ!」
「前橋? アンタ呼ばれてたけどなんでここに居るのよ?」
「そんなのどうでも良いんだ! お前らどうせミスコンの一位と二位だったんだろ? その注目力が生きてるうちに頼む!」
「え? あ、え!?」
「な、なんでわかるのよ……結果発表も見なかった癖に」
ん?
なんで二人とも顔を赤くしてフリーズする?
今はそんな事をしている暇ではないというのに!
「どうした? 優勝したんだろ? どっちか」
「ま、前橋君もしかして結果発表みてたの?」
「いや、お前ら意外にあのメンツで優勝はねぇだろ」
「っ!!」
「あ、あの……その……あ、ありがとう……」
なんで更に顔を赤くしてフリーズする?
良いから早く準備をしてくれ!
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