第150話 文化祭編39



「なっ……」


 僕は前橋君のクラスを見てビックリした。

 とんでもない行列が廊下まで伸びており、その列が階段まで続いて居るのだ。

 

「な、なんでこんな事に!!」


 昨日まではうちは余裕で勝ってた。

 この差はなんだ!?

 この数時間で一体何をした?

 まさか本当にあの差を覆すつもりなのか!


「ねぇねぇ、この店でしょ? あのカッコいい子が居るお店って」


「そうそう! なんでも一緒に写真撮ってくれるんだって!」


 カッコいい子……そうか前橋君か。

 でも、前橋君一人でここまでの行列を作るとは思えない。

 それに並んでるのは女子だけじゃない、男子もだ!

 一体どんな秘密が!!


「あ、いらっしゃ……ってんだよ、最上か」


「前橋君……一体何を……」


「何って、お前に負けたくねぇからこうして営業努力してんだよ」


「営業努力?」


「あぁ、それでどうする? テイクアウトか? それとも店内か?」


「え? あ、え?」


「ん? 写真撮影だけだと500円な。ってかお前俺と写真撮りたいの?」


「ま、待ってくれ! 昨日までは普通にコスプレ喫茶だったはずだろ! なんでテイクアウトなんて!」


「お前のクラスに勝つためだ」


「む、無理に決まってるだろ! もうあと三時間くらいで学園祭は終る! そんな三時間でどうこうなんてなるわけ……」


「そうだな……ならねぇかもな、確かにお前の言う通り差もかなり開いてるからな……でもお前と違って俺は諦めが悪いんだ」


 そう言った彼の目はものすごく真っすぐだった。

 そうか……僕がなんで彼に勝てないのか分かった。

 どんな格上でも彼は諦めない。

 例え無謀な挑戦だったとしても彼は諦めない。

 だから強いんだ。

 だから、皆から信頼されるし、不思議と人が集まるんだ。

 それに比べて僕は……クラスの皆に頼りきりで、自分の勝負まで投げ出して……。


「それで……お前はどうすんの?」


「……フフフ、決まってるだろ! 僕も全力で答えて上げよう!! それがライバルの務めだ!!」


「やっといつも通りのうぜぇ感じに戻ったな」


「フフフ、せいぜい結果発表を楽しみにしているといいさ!」


 僕は前橋君のクラスをダッシュで後にした。

 このままでは、結果がどうなるか分からない。

 だから僕はクラスに戻って全力で彼を迎え討つ。




「前橋! いいぞ! この調子で行けば最終優秀賞も夢じゃねぇ!!」


「よし! てか、ミスコンに行ったあの二人はまだか? あいつらも重要な収入源なんだぞ!」


 文化祭終了まで残り三時間、俺は接客をしながら皆に指示を出していた。

 まさか店を経営するゲームで得た知識がこんな形で役に立つとは……。

 意外と俺って経営者に向いてる?

 そんな事を考えていると、廊下がなんだか騒がしくなった。

 

「なんだ一体?」


「前橋! あの二人が帰って来たぞ!」


「本当か!!」


 池内がそう言った後、その二人は直ぐに教室に入って来た。


「ごめん、遅れた!」


「な、なんかすごい声掛けられて……」


「やっと来たか」


 やっと高城と井宮が戻ってきやがった。

 これで更に売り上げに追い込みを掛けられる!


「井宮、高城! 悪いけど早く店に入ってくれ!」


「前橋? アンタ呼ばれてたけどなんでここに居るのよ?」


「そんなのどうでも良いんだ! お前らどうせミスコンの一位と二位だったんだろ? その注目力が生きてるうちに頼む!」


「え? あ、え!?」


「な、なんでわかるのよ……結果発表も見なかった癖に」


 ん?

 なんで二人とも顔を赤くしてフリーズする?

 今はそんな事をしている暇ではないというのに!

 

「どうした? 優勝したんだろ? どっちか」


「ま、前橋君もしかして結果発表みてたの?」


「いや、お前ら意外にあのメンツで優勝はねぇだろ」


「っ!!」


「あ、あの……その……あ、ありがとう……」


 なんで更に顔を赤くしてフリーズする?

 良いから早く準備をしてくれ!

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