第148話 文化祭編37
『あ、あれぇ!? 前橋くんが居ない!!』
『全く、困った教頭先生ですね』
『ははは、困ったのはこちらですよ、だからアイドルなど呼ばない方が良いと行ったんです』
あぁ、なんかすげー審査員同士の空気が悪くなってるなぁ……この中で出ていくのはかなり気まずいだろうなぁ。
なんか最上に悪い事したかもしれない。
俺は舞台裏に戻り、次に控えていた最上の方を見る。
「なんか悪い……」
まぁ、俺のせいでこんな出にくい状況になっている訳だし。
これはもう勝負所の話しじゃ……。
ん?
「おい、最上?」
「え? あ、あぁ……何か言ったかい?」
なんだか様子がおかしい。
いつものあのうざったいくらいの元気がない。
「大丈夫か?」
「う、うん……大丈夫さ」
『さて、続きましては最後の一人! こちらも注目の一年生! 最上吉秋くんです!!』
「じゃ、じゃぁ言って来るよ」
そう言って最上は元気が無いまま壇上に上がっていった。
あいつ……意気揚々と俺に勝負を持ちかけたくせに……てか、どうせ俺よりも点数は上だろ?
なんなんだあいつ。
もしかしてあの母親が原因か?
その後の最上の番は面白味も無く普通に終った。
俺を巻き込んだ癖になんなんだあいつ……。
「………」
人を巻き込んで置いてあんなやる気の無い態度なのはなんだか腹が立った。
これじゃぁ少しでもあがいて見ようと思った俺が馬鹿見たいじゃないか。
『はーい! 男子はこれで終了です! これからはお待ちかね女子の部になりまーす!!』
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
女子の部が始まり、男子生徒は盛り上がっていた。
そんな中舞台裏に戻って来た最上は一人だけお通夜みたいな空気だった。
「おい、最上」
「え……あぁ、なんだい?」
「お前なんだよ、俺を巻き込んだ癖にやる気無しか?」
「……いや、ごめん、……あの歓声を聞いた瞬間、なんだかもう結果は見えたように思えたから……」
「……はぁ?」
それはなんだ?
俺を馬鹿にしてるのか?
勝って当たり前だから手を抜いたってことか?
こっちは一応真面目に準備して来たってのに!!
「おい、あんまり馬鹿にすんなよ。コッチはお前の我がままに付き合ってやってんだぞ」
「………」
「俺だってな、お前に対抗しようと色々悪あがきしてきたんだよ、なのにお前のあの態度はなんなんだよ! やる気出した俺が馬鹿見てぇだろうが!!」
「……君には分からないさ」
「あぁ?」
「君には分からないさ! 結果だけを求め続けられた僕の気持ちなんて!」
最上は突然大声でそう言い出した。
やっぱりあの母親に何かを言われたらしい。
「……すまない、突然怒鳴って」
「……知らねぇよ」
「え……」
「知るかって言ってんだよ、お前の事情なんて。自分から仕掛けた勝負も最後まで全力を出さねぇで終わらせる中途半端な奴の気持ちなんてなぁ」
「な、なんだと!」
「結果が全ては当たり前なんだよ! 努力なんて認められないのが当たり前なんだ!」
「な……努力する事だって立派な……」
「馬鹿か! 努力しても負けたらお仕舞なんだよ! スポーツだってそうだろ! 努力を誇っちまったら結果なんて要らねぇだろうが!!」
「うっ……それは……」
こいつとの勝負なんて正直どうでも良かった。
でも、なんか腹が立つ。
自分から仕掛けておいて、こんな適当に勝負を投げ出すような奴とは思わなかった。
いくら自分が勝つと分かっていても全力で相手をして欲しかった。
俺だって一応やる気を出したのに……。
「決めた、ミスコンはまぁもう終っちまったから仕方ねぇ。それにあの審査員じゃどっちが勝っても納得行かないかもしれねぇ。だから、文化祭の出し物勝負……こっから俺のクラスが巻き返す!」
馬鹿にされたまま終るなんて俺は出来ない。
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