第145話 文化祭編34
「元気そうですね」
「はい、最上家の者として恥じないように勉強も運動も力を入れています」
「そうですか」
「はい、今回も今からミスコンに……」
「そうですか、決して敗北などないように、最上家の男児は完璧で無くてはいけません」
「……はい」
「分かっていますね、貴方は最上家の中では不出来です。もう敗北は許されません」
「……分かっています」
「貴方に求められるのは結果です」
「………」
そう言って最上の母親は最上の元を後にしていった。
なんか、訳アリっぽいなぁ……。
あいつ、なんの悩みもないのかと思ったけど……なんだよ、あの情けねぇ顔……。
「さっきまでの顔とは大違いじゃねぇか……」
なんだか見てはいけないものを見てしまった気がする。
もしかして、あいつが勝負にこだわる理由ってあの母親が原因か?
*
『さぁ! 始まりました!! 第1238回! 千膳高校ミスコンテスト!! 司会は私! 放送部二年、山里苗(やまざと なえ)でお送りいたします!!』
『とりあえず、まずそんなにこのミスコンは歴史ありませんね』
『えぇ、ゲストの教頭先生、ツッコみありがとうございます。そして! スペシャルゲストの紹介です!! 先ほども素晴らしいステージを披露して下さいました! アイドルの宮河真奈さんです!!』
『皆さんこんにちわぁ~』
「「「「こんにちわぁ!!!!」」」」
『すごーい、皆さん元気一杯ですねぇ~』
「「「「はーい!!!」」」」
「すごい歓声だな……」
ミスコンが始まった。
会場は人で一杯だ。
まぁ、アイドルの宮河真奈がさっきまでステージに上がっていたのだ、恐らく今いる観客はその残りだろう。
俺はステージ裏で出番を待ちながら様子を見ていた。
あいにく出場者の中に知り合いは居ない。
居るとすれば、男子では最上くらいだろうが最上はまだ来ていない。
さっきの母親との会話……あいつってもしかして良いところのおぼっちゃんなのか?
母親もなんだか品の良さそうな恰好だったし……。
『それではミスコン参加者の入場です!!』
「おっと、行かないと」
考えている間に入場が始まってしまった。
ミスコンはまず男女の出場者が一斉にステージに上がる。
その後、アピールタイムが一人3分与えられる。
全員のアピールが終ったところで男女ごとに結果発表がある。
結果は審査員の点数と会場のお客さんの票で決まる。
俺はステージに上がり、観客の方を見る。
うわぁ……心なしか皆俺を見ている気がする……そりゃそうか、こんな不細工が出てたら、逆に注目を集めるよな?
いや、でも今日はセットもして少しはまともだと思うけどなぁ……。
『さぁ! 参加者は男女合わせて20人! ……あれ? 男子一人足りなくないですか?』
『どうしたんですかね?』
『あ! 遅れて今登場しました!!』
遅れて来たのは最上だった。
やっと来たか……。
そう思いながらちらりと最上の方を見ると、なんだかいつも浮かべているよりあのキザったらしい笑顔が今日はなんだかキザに見えなかった。
『さぁ! どうでしょうか教頭先生? 今年もかなりの美男美女が集まっているとおもうのですが?』
『そうでうすね、皆さん実に整った容姿をしていますね』
『まるで今日の校長先生のズラみたいに整ってますね!』
『そうですね』
いや、そうですねじゃねぇだろ。
何とんでもない事を暴露してんだ放送委員!
教頭も何爽やかにそうですねとか言ってんだよ!
校長顔真っ赤にして頭抱えちまっただろ!
まぁ、皆ズラってことは知ってたけど、見て見ぬフリしてたんだからやめてあげて!!
『どうですか宮河さん、タイプの男子とか居ます?』
『………』
『宮河さん?』
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