第144話 文化祭編33

「え、あぁ……それは……」


 あれだよな?

 宿泊学習での俺の話を聞いて聞いてんだよな?

 でもなんでそんな事を聞くんだ?

 もしかして、いまでも好かれてないかのチェックか?

 いや、でもそんな事をするような奴じゃないし……。

 

「ま、まぁ……昔の話しだけどな……」


「そ、そっか……」


「わ、悪い……変なこと言っちまって……まさか高城がそのブーちゃんだとは思わなくて」


「む、無理ないよ。みんなから言われるから」


 気まずい、なんて言えば良いんだ?

 昔は好きだったっていうのが良いのか?

 でも、なんかそれはそれで今を否定しているような……。

 じゃぁ、今でも好きっていうか?

 それはもう意味合いが変わってきちまう。

 てか、何を言ってもやばそうだな……。


「まぁ、ただの昔話だから……気にしないでくれ」


「そ、そっか……で、でもあの……」


「ん?」


「私はその……好きって言ってくれて嬉しかったよ……」


「………そ、そうか」


 やっぱり高城って良い奴だなぁ~。

 俺みたいな不細工のあんな言葉でも嬉しかったなんて言ってくれるなんて……。

 はぁ、ブーちゃんが綺麗になっちまって、かなり動揺したけど、やっぱり優しい所は変わってねぇな。

 ま、恥ずかしがりやなとことか変わってねぇけど、今も顔真っ赤だし。


「あ、そう言えばそろそろミスコンの時間だな」


「本当だ! 早く準備に行かないと!!」


「そうだな、お互い頑張ろうぜ」


「うん!」





 ミスコン、それはミスターコンテストやミスコンテストの略称だ。

 まさか俺には一生縁が無いと思ったけど……。


「まさか出場することになるとはな……」


「ふふふ、どうしたんだい? 酷い顔じゃないか」


「誰のせいだよ」


 現在俺はミスコン出場のための準備をしていた。

 グランドのステージ脇にテントが設営されており、出場者はそこで着替えやメイクを行う。

 俺も準備の為に来たのだが……。


「まさかお前の隣とは……」


「まぁ、これも僕たちの宿命さ」


「あっそ」


 俺はそんな話をしながら準備を進める。

 その間も最上は話を続ける。


「僕はこの前の宿泊研修で君に負けて、ずっと再戦の機会を伺っていたんだよ」


「ふーん」


「正直、君はすごい。クラスメイトからの信頼は厚く、言葉には重みがあり、それでいて顔も良い、まさにパーフェクトだ」


「へー」


 んな訳ねぇだろ、こいつは誰の話をしてんだ?

 俺は根暗でボッチでゲーマーな不細工だぞ。


「だから、僕は君に勝ちたいんだ、そして自信を付けたいんだよ! 僕も出来るという自信をね!」


「………」


 俺に勝ってもなんの自慢にもならねぇだろうが……。

 全くこいつは何を言ってるんだか、てかなんでこいつはそんなに勝負にこだわるんだ?

 まぁ、良いか。

 あいつもなんか本気みたいだし、少しはあがいてみるか。


「じゃぁ、僕はちょっと用事があるから先に行くね」


「はいはい」


 そう言って最上は椅子から立ち上がり、テントから出て行った。

 さて、俺は準備を進めるか。

 ステージからは大歓声が聞こえてくる。

 今は川宮さんのステージライブらしい。

 その後にミスコンって……。

 なんか比較されそうで嫌だなぁ。


「よし! こんなもんか」


 俺はセットを終えて、鏡の前で最後のチェックをする。

 まぁ、これなら普通ぐらいには見えるだろう。

 ヤバイ、ミスコンの開始の時間まで残り5分だ!

 早くステージ袖に向かわないと!!

 俺はテントを出て、直ぐにステージの方に向かった。

 すると、テント裏から何やら声が聞こえてきた。


「お久しぶりです母さん」


 ん?

 この声って……最上か?

 へぇ~最上の親が来てるのか、少し来になるなぁ~ちょっと覗くぐらいの時間はあるよな?

 俺は好奇心からテントの裏を覗きに行った。


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