第143話 文化祭編32

 メイクを落としながら、最上は爽やかな笑顔で続ける。

 

「前橋君どうしたんだい? まさか偵察に?」


「いや、なんか普通に気になって」


「ふふふ、強がらなくても良いよ、僕達のクラスがどんな風に集客しているか気になったんだろ?」


「いや、そういうんじゃない」


「そ、そうかい……よ、よかったら見て行くと良いよ、君たちのクラスとの格の違いを教えて上げるよ」


「かなり並んでるだろ? やめとくよ」


「あぁ、大丈夫大丈夫、一度に入れる人数は5人だから直ぐに回ってくるよ」


「そうなのか?」


 一度に五人入って大丈夫なのか?

 まぁでも確かに列がドンドン進んでいくな。

 

「いくらなんだ?」


「一人800円だよ」


「結構するのな」


「まぁ、準備や用意に結構苦労したんだ、これくらいは勘弁してくれ」


「高城どうする? 入ってみるか?」


「え? あぁ……そ、そうだね……折角だし……」


 うーん、あんまり乗り気ではなさそうだな。

 あんまり無理をさせるのは可哀想だし、やっぱり断るか。


「悪い、こういうの無理なんだよな? 最上悪いな、また後で来れたら来るよ」


「そうかい。ふふっ、レディーに気を使うなんて、流石は僕のライバルだね」


「だからライバルじゃねぇーっての」


 俺は最上にそう言い、三組を後にした。


「ご、ごめんね」


「いや、別に俺も入りたいわけじゃないしな……にしてもあいつすげーな」


「そうだね、一年生でこれだけの事をするのはかなり大変だったと思うよ」


「だろうな……」


 あいつ、結構ガチで勝負にきてたのか……。

 なんか適当にやってて悪い事したな。

 

「変な奴かと思ったけど、実はすごい奴なのかもな……」


「前橋君のライバル?」


「だからライバルじゃねぇって」


 そんな話をしながら、俺達は外に出た。

 学園際の一般公開が始まったばかりだというのに、もう既にすごい人だ。


「昨日よりもすごいな」


「まぁ、うちの文化祭は有名だからね」


 それにしてもすごい人だ。

 人酔いしそうだし、何処か人の居ないところに行きたいが、生憎休憩所は人が多い。


「あ! ミスコンの出場者が二人そろって歩いてるぞ!」


「本当だ、付き合ってるのかな?」


「まぁ、それなら納得だな。あれには勝てねぇ」


 なんだか視線を感じるな……。

 まぁ、こんな格好だし仕方ないか。

 それに隣にいるのはミスコン出場者にして最有力候補だしな。


「な、なんか見られてるね」


「あぁ、あんまり落ち着けねぇし、飲み物で買って人の少ないところにでも行くか」


「うん」


 俺たちは適当に飲み物を買い、文化祭の会場から離れた校舎裏にやって来た。


「はぁ……疲れた」


「すごいね、クラス大丈夫かな?」


「まぁ、大丈夫だろ? こういう祭り事の好きなやつらだし」


 高城や井宮が店に戻ったら結構忙しくなりそうだな。

 しかもミスコンの後のシフトだから、かなりの宣伝効果も見込める。


「ミスコン頑張れよ」


「う、うん、でも……井宮さんもいるし他にも先輩がいるし……」


「まぁ、確かにそうかもしれねぇけど、高城も負けてねぇから頑張れよ」


「ふぇ!? あ、う…うん……」


 まぁ、こんな人事みたいに言ってるけど、俺も一応出場するんだよなぁ……。

 俺は高城や井宮と違って有力候補でもないし、まぁ俺は恥をかかないようにする事が重要だな。


「ね、ねぇ……そう言えばずっと聞きたかった事がるんだけど……」


「ん? なんだよ」


「あ、あのさ……昔、私の事を好きだったって本当?」


「え……」


 なんかいきなりすごい事を聞いてきたんだけどこの子……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る