第142話 文化祭編31

「なんだろうね? あの人たち」


「あ、あぁそうだな……」


「すごく綺麗な人たちだったね」


「そ、そうか?」


 あれが姉貴だなんてバレたくない。

 てか、バレたら大変面倒くさい事になる。

 それだけはなんとしても避けないと……。

 てか、姉貴にこんな所を見つかるのもヤバイ。

 恐らく高城さんの事を勘違いして、必要以上に迫って来るだろう。

 

「まさかこんな早くに来るなんて……」


「え?」


「あ、いやなんでもないんだ! そ、それよりこの後どうす……」


 そう俺が言いかけた瞬間、俺はいきなり背後から強く肩をつかまれた。


「あぁー居た居た、前橋君!」


「お、岡島さん? なんでここに?」


 俺の肩を掴んだのは俺が所属する芸能事務所のマネージャーの岡島さんだった。

 普段は川宮さんのマネージャーとして忙しいはずなのだが、一体どうしたのだろうか?

 

「なんで学際に? 仕事はどうしたんですか?」


「あら? 聞いてないの? この学校のステージゲストに真奈が呼ばれてね、真奈と一緒に仕事に来たのよ」


「え!? か、川宮さんも居るんですか……」


 なんでこう、面倒事がやって来るんだ!

 俺はただ平穏な学園祭を送りたいだけなのに!!

 

「真奈は今打ち合わせ中よ、ミスコンのゲスト審査員もすることになってるから大変よ。というか、流石前橋君ね! ミスコンに出場するのよね?」


 うわぁ……ばれてるぅぅぅぅ。

 しかも川宮さん審査員かよ!

 絶対面倒な事になるぞ!


「おっと、そろそろステージが始まるわ。前橋君、またあとで学校を案内してね、それじゃぁ」


 絶対嫌です!

 なんて事を言いたがったが、言う前に岡島さんは行ってしまった。

 まさか、こんな事になるとは……姉貴達にうちの両親、そして川宮さん……このなかの誰か一人とでも関わりがある事がバレれば、絶対に今後の学園生活に支障が出るぞ。

 

「一体どうすれば……」


「え、えっと……さっきの女の人ってもしかて……」


「え? あぁ。俺の事務所のマネージャーさんだよ……どうやらステージゲストで宮河真奈も来てるみたいだな」


「そ、そうなんだ……ま、前橋君仲良いの?」


「あぁ……悪くはねぇけど……」


 言えない。

 まさか告白されたなんて言えない!

 まぁ、言っても信じて貰えないと思うけど。

 だって、俺この顔だし。


「そ、それはそうと次どこ行く? あ、そうだ! 三組の出し物言って見ないか? 俺まだ行ってないんだ!」


「そうだったの? で、でも私は……」


「え? 何か不味いのか?」


「い、いや……不味いっていうか……」


「ん?」





「なるほど、これは確かに目立つな」


「私も存在は知ってたけど……すごいね」


 俺たちは三組までやって来た。

 そこには長蛇の列が出来ており、看板には大きく『巨大お化け屋敷』と書かれていた。

 三組の隣のクラスは二クラスとも空き教室だ。

 その空き教室もつなげて、お化け屋敷はかなり巨大になっていた。

 しかも、既にすごい行列になっていた。


「わ、私お化け屋敷が苦手で……」


「だから、ちょっと嫌そうだったのか」


「ごめん……」


「いや、謝ることなんてねぇよ。無理して入ることはない」


 しかし、これなら昨日の売り上げも納得だ。

 普通に面白そうだし、かなりの手間と時間が掛かっている。

 

「おやおや、誰かと思えば」


「ん、この声は!」


 朝も聞いた声、今度こそ間違わない!

 俺は声のしたほうお振り返る。


「やぁ」


「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」」


 そこにはかなりクオリティの高いお化けが居た。

 俺と高城は思わず抱き合い、叫んでしまった。


「あぁ、ごめんごめん。メイクを落としてなかった……僕だよ、最上だよ」


「な、なんだ……脅かしやがって」


「ほ、本物かと思った……」


「ふふふ、すごいだろこのメイク、うちのクラスにはこういうメイクの上手い子が居てね」

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