第139話 文化祭編28


 翌朝、俺は姉貴に色々教えて貰いミスコンの準備を整え学校に向かった。

 ミスコンのステージは二日目の昼、それまではクラスの出し物を手伝うので、メイクやセットはまだ良いだろう。

 問題はうちの家族がいつ来るからだ。

 

「はぁ……親にも言うんじゃ無かったかな……」


 後悔しても仕方がない。

 出来るだけ文化祭会場で家族に会わないようにすれば良いだけだ。

 俺はそんな事を考えながら教室に向かう。


「おはよう」


「お、来た来た!」


「おはよう前橋君」


「なんだよ、寝不足か? 眠そうだなぁ」


 俺が教室に入っていくと、なんでかニコニコしながら男子が寄って来た。


「な、なんだよお前ら……」


「いやいや、別になんでもないさ」


「ただ昨日クラスの為に貢献してくれた前橋にお礼をと思ってね」


「そうか……一つ良いか?」


「なんだい?」


「その後ろに隠してるロープはなんだ?」


 男子生徒は全員、何故か背後にロープや軍手、そして極めつけはスコップを隠していた。


「……っち! バレたか! お前ら前橋を吊るせぇ!!」


「俺たちのアイドルを独り占めしやがって!」


「イケメン死ね!」


「おい! 校庭に埋めるぞ!」


「お、お前ら馬鹿! 離せっ!」


 こいつらのアイドルを独り占めにした?

 そんな記憶一切ない……訳もなかった。

 そう言えば昨日、学年一の美少女二人と学際回ったわ……まさか俺がそんなラブコメ漫画の主人公見たいな状況になるなんて予想も出来なかったから、気が付かなかった。


「や、やめろお前ら!」


「うるせぇ!!」


「お前のせいで俺らにチャンスが回ってこねぇんだよ!」


 酷い言いがかりだ……。

 俺は手足を縛られミノムシ状態になってしまった。

 このままでは校庭に埋められてしまう……。


「おいおい待て待て」


「笹原、お前邪魔するのか!」


 俺が男子に縛られていると、英司が男子を止めてくれた。

 流石は俺の数少ない友人だ。

 こういうピンチの時にはちゃんと助けてくれる!


「お前ら、埋めるなら放課後にしろ! こいつはうちのクラスのドル箱だぞ!」


「お前やっぱり最低だな」


 結局俺に味方なんていなかった。

 クソ、英司の奴やっぱりそう言う奴か!!

 不本意ながら俺は解放された。

 しかし、放課後には再び拘束され校庭の花壇の脇に埋められるらしい。

 なんでうちのクラスの男子はこういう時だけ団結力があるんだ……。


「たく……朝からさんざんだぜ」


「ま、前橋君」


「あぁ高城か……おはよう」


「朝から大変だったね」


「あぁ、あいつらこういう時だけ……」


「ね、ねぇ前橋君」


「ん? どうした?」


「あのさ……今日もし暇だったら私と文化祭を回らない?」


「え?」


 昨日一通り回った気がするのだが?

 まぁ、でも確かに暇な時間はあるしなぁ……。

 でも、確かに見てないフロアもあるし、ステージも昨日とは違うらしいから気になるっちゃきになる。


「それなら、井宮も誘って……」


「あ、えっと井宮さんは今日は忙しいって」


「え? そうなの?」


 そう言えば朝から姿を見ない。

 あいつも友達付き合いとか色々あるのかもな。


「じゃぁ、二人で回るか?」


「う、うん! じゃぁ後でね」


「おう」


 高城と二人で文化祭か……。

 未だに高城とは昔みたいな感覚で話しが出来ないし、これを気に昔見たいに話せるようになれれば良いんだけど……。

 

「さて、文化祭も二日目! みんな、今日も気合入れて行こう!」


「「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」


 池内の掛け声に皆が反応する。

 皆さん元気が会って大変結構ですね。

 正直俺は勝とうが負けようが正直どっちでも良いので。

 まぁ、勝って後片付けが無くなるのは嬉しいけど。


「ふふっ、盛り上がっているようだね」


 クラスで盛り上がっていると、教室のドアにもたれ掛りながら誰かがそう言ってきた。


「お、お前は!」


「誰だっけ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る