第138話 文化祭編27

*



「姉貴」


「なぁに? 今明日着ていく洋服選んでるんだけど?」


「どこ行くんだよ」


「え? 文化祭」


「………」


 まぁ、こんな事だろうと思ったけど。

 姉貴の事だ、俺が入場券を渡さなくてもどこぞから入手して来る事は容易に想像が出来た。

 だから俺は諦めて姉貴の力を借りる事にしたのだ。


「姉貴、俺さミスコン出る事になったんだけど……」


「え!? ちょっと待って、今から一眼レフ買いに行って来るから!」


「何でだよ」


「だって、圭ちゃんのカッコ良い姿を写真に納めないと!!」


「スマホのカメラで良くね? てか写真はやめて」


 はぁ……なんかこの時点で明日の文化祭が面倒な事になる予感がする。

 まぁでも、この人を頼らないと俺はステージで晒しものだからな……。


「悪いんだけど、姉貴俺をまともにしてくれないか? イケメンにしてくれなんて言わねぇから」


「え? まとも? ………いや、お姉ちゃんから見ても圭ちゃんはもう十分イケメンさんだけど? なんだったらお姉ちゃんと結婚しましょ」


「いや、そういうひいき目じゃなくて、一般的にだよ。あと、結婚は無理」


「まぁ、良いけど……お姉ちゃんがメイクしたら、圭ちゃん超イケメンになっちゃうからなんだか心配……」


「どんだけ自分の腕に自信があるんだよ……まぁ、でもまともに見えるに越したことはないから頼むよ」


「じゃぁ、今日はお姉ちゃんと一緒にお風呂に入って、お姉ちゃんと一緒に寝てくれる?」


「やっぱりいいや、自分でなんとかする」


 そこまでの事は出来ない。

 仕方ない明日は自分でなんとかするか……。


「あぁぁぁ! 嘘嘘! 学際に行く許可くれたら、してあげるからぁ~」


「最初からそう言ってくれ……」


「うぅ……圭ちゃんとお風呂……」


 なぜ泣く……。

 この姉もそろそろ弟離れして欲しいものだ。

 これが無ければ、俺にはもったいないくらいの出来た姉なのだが。

 

「じゃぁ、まず髪のセットとメイク教えるね!」


「え? 今から?」


「当たり前でしょ? ミスコン前にセットが崩れてもお姉ちゃんが直しに行けるとは限らないもの、まぁ圭ちゃんのお願いならお姉ちゃんは飛んで行くけど……」


「教えて貰う方向でお願いします」


 飛んで来られても面倒だからな……。

 こうして俺はその日の内に姉貴に髪のセットとメイクの仕方を教わった。

 モデルでもあり、カリスマ女子高生とも言われる姉貴だ。

 教え方も技術も素人にしてはかなり上手い方だ。

 これで当日はなんとか見てくれぐらいはどうにかなるだろう。

 

「てか、圭ちゃんがミスコンなんてどんな風の吹き回し?」


「え? あぁ……ちょっと勝負を挑まれまして」


「ポ〇モン勝負?」


「なんでそうなるんですか……なんか自称ライバルの奴が居まして、そいつにちょっと……」


「へぇ~人気者なのねぇ~」


「どこがですか」


「でも、まぁ流石お父さんとお母さんの子よねぇ~? 直ぐに人気者になっちゃう」


「その遺伝子は姉貴が全部持って行ってるでしょ」


 俺は出がらしだっての。

 あの親からまさかこんな不細工が生まれるなんて、親戚一同思ってなかっただろうな。


「あ、明日はお父さんとお母さん休み取れそうだから、文化祭行こうかなって言ってたわよ」


「え!? ま、マジですか……」


 どうせ来れないだろうと思って、一応入場券だけ渡して置いたけど……まさか本当に来る気なんて……。

 しかも姉貴も来るんだから、恐らく騒ぎになるぞ。


「今更来るなとは言えないしなぁ……」


「何悩んでるの?」


「いや、うちの家族は俺以外全員目立つから……明日の文化祭が心配で」


「大丈夫よ! お姉ちゃん絶対に目立たないから!」


 アンタは居るだけで目立つんだよ……。

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