第135話 文化祭編24
*
文化祭が始まる前に私は高城さんと話をした。
私は自分の気持ちを正直に彼女に打ち明け、謝罪した。
お互いライバル同士、ギスギスした感じになってもおかしくないのだけど……。
「井宮さん、あのクラスのチョコバナナやってるよ!」
「へぇ~結構人も並んでいるわね」
「並びに行こうよ! 一本100円だし!」
「いいわよ」
特にそんなことはなかった。
高城さんは私を笑って許してくれた。
許してくれたというよりも私を正式にライバル認定したのだ。
『負けないからね!』
屋上でそういった彼女は笑っていたが、目は本気だった。
本当にいい子だと思う、最初から私は不利だ。
彼女は馴染で性格も良い。
私はゲームしか脳のない残念女子。
勝負をしても負けは見えてる。
でも……それでも私は……あいつを奪われたくない。
「美味しいね」
「そうね」
チョコバナナを食べる高城さんを見ながら、私はそんなことを考える。
この子とならもしかしたら、あいつを取り合った後でも良い友人になれるかもしれない。
なんてことを考えるけど、今の状況じゃ私が負けて終わりね……。
「なんか、見られてるね……」
「まぁ、こんな格好だからね」
私たちはそろってレディーススーツ姿で目立っている。
コスプレ衣装を見たとき、まさか同じコスプレとは思わなかった。
高城さんもしっかりあいつの好みを聞いていたようだ。
「やっぱり変かな?」
「そんなことないわ、私より似合ってるわよ」
「いやいや、井宮さんの方が着こなしてるよ。私なんて着られてる感じがすごいもん」
高城さんのスーツ姿はなんだか可愛い。
女子の私がそう思うんだから、きっと男子もそう思っているだろう。
正直すごい破壊力だと思う。
「おーい、二人とも~」
私たちがチョコバナナを食べながら歩いていると、遠くから美佳が魔法少女の恰好でやってきた。
「美佳、あんたも休憩?」
「うん、私も混ぜてよ」
「いいわよ、高城さんもいい?」
「うん、大勢の方が楽しいし」
「ありがとう、店の方はどう?」
「うん、前橋君のおかげでとんでもない売り上げになってるって笹原君言ってたよ」
確かにあの感じだと、商品を出さなくても写真撮影だけでかなり稼げそう。
あいつはかなり嫌がってたけど。
まぁ、私もあまりいい気はしなかったし、気持ちはわからないでもないけど……。
「それであいつは? まだ店で写真撮影?」
「ううん、店から逃げ出して今はどこにいるかわからないわ」
「あぁ、逃げたのね」
まぁ、あれじゃぁ逃げるしかないわよね。
今頃何をしているのかしら?
私たちの気も知らないで……。
「そういえば二人ともミスコンに出るの!!」
「そうよ、情報早いわね」
「文化祭のゲート前に写真が飾られてたよ、二人とも結構良いところまで行くんじゃない?」
「さぁ? どうかしらね」
「わ、私なんてダメだよ」
「えぇ~そうかなぁ~?」
ミスコンに参加することになったのは最初賞金が目当てだった。
欲しいゲームがあったのもそうだけど、本当は服とか化粧品とかも欲しい。
最近は学校以外でもあいつと会うことも増えたし、身だしなみにも気を付けないと。
ま、でもあいつが気が付くとは思えないけど。
でも、高城さんも出るとなると賞金はあきらめるしかないかもね……。
「そういえば男子もすごかったよ! 三年のサッカー部のエースに二年のイケメン先輩! かなりレベル高かったよ!」
「そう、別に興味ないわ」
「そう? 前橋君も出場するのに……」
「「え!?」」
私と高城さんは思わず声を上げてしまった。
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