第126話 文化祭編15
「そんな事ないよ……私なんて……」
ヤバイわね、気を落としてるわ……。
まぁ、好きな人を取り合っている相手が人気アイドルだなんて知ったら、誰だって気を落とすわよね?
私も結構ショックだったし。
「あのさ、一つ聞いても良いかな?」
「え? なに?」
「宿泊学習の時から思ってたんだけど……井宮さんって前橋君の事、本当に好きじゃないの?」
「え……」
その問に対して、私は包丁を持ったまま高城さんの方を見る。
高城さんの目は真剣だった。
*
いよいよ文化祭が明日に迫った日、俺は朝から姉貴に迫られていた。
「明日は文化祭だね」
「ソ、ソウデスネ」
「お姉ちゃん、明日は学校だから明後日学園祭に行きたいの……入場券頂戴」
「嫌だ」
「なんで?」
「絶対に面倒になるから」
「大丈夫よ! 絶対大人しくするから!」
「いや、姉貴は居るだけで大変なんだよ……」
俺の姉貴は容姿だけは完璧だ。
だからこそ俺は姉貴を文化祭に呼びたくなかった。
クラスの男子連中は絶対姉貴に目がいくだろうし、最悪俺を処罰しようとしてくるだろう。
そんなの絶対に嫌だ。
しかもこの馬鹿姉貴は何を言い出すかも分からない。
こんな爆弾を抱えて文化祭なんか出来るか!
「なんでよ! じゃぁ分かったわ! お友達と一緒に行くから!」
「それもだめ!」
姉貴の友人達もかなりの美女揃いだ、類は友を呼ぶなんてよくいったもので、姉貴の知り合う女性は綺麗な人ばかりだ。
「じゃぁなんだったら良いのよ!」
「だから来ないでくれって言ってるんだよ、頼むから」
「良いじゃない! お姉ちゃんも圭ちゃんのコスプレみーたーいー!」
「はぁ……」
こんな事になるなら文化祭の事を姉貴に離さなきゃ良かった。
うちの文化祭の一般入場には制限がある。
まぁ、規模が大きいので制限しないと人で溢れて大変らしい。
なので、うちの学校では生徒一人につき4枚の入場券が配布され、一枚で三人まで入場が出来る仕組みになっている。
「とにかく、頼むから来ないでくれ」
「ダメだよ!」
「何がだよ……悪いけど姉貴は大人しくしててくれ」
「あぁ~ん! 圭ちゃんの意地悪ぅ~」
「姉貴も早く準備しないと遅刻だぞ」
俺はそう姉貴に言って家を出た。
文化祭は明日、一応両親には一枚づつ入場券を渡したが来ないだろう。
忙しい人たちだし。
残る二枚はどうせ使わないだろうし、鞄にでも入れて置こう。
文化祭の前日である今日は文化祭の準備で一日が終る。
クラスの出し物以外にも部活や委員会の出し物がある生徒も多く、土壇場になって忙しくなる生徒が多いからだ。
ま、俺は部活も帰宅部だからなにもないので、クラスの出し物の準備が終ったらさっさと帰ろう。
「にしてもやっぱり俺は普通の制服みたいだな」
「お前が選んだ服だろ?」
「それにしてもお前は随分体張ったな……全身真緑じゃんか」
「まぁな、女子が結託してアンタは芋虫の恰好をしろって」
「着ぐるみとかじゃなく、肌にペンキを塗るタイプのコスプレか……ちょっとペンキ臭いぞ」
「うるせぇ! まぁでも女子のコスプレには期待しろ! かなり良い感じに仕上がってるぞ!」
「俺は別に興味ない。衣装も合わせたし着替えてくるわ」
「そうか、じゃぁ俺もシャワーでペンキを落としてくるか」
「あ、シャワー室だけど、なんか故障とかで使えなくなってたぞ」
「え?」
まぁ、真緑の馬鹿は放っておいて俺はさっさと着替えてしまおう。
この衣装合わせが終ったら後はやる事ないし帰るだけだ。
「ん? あれって井宮と高城か?」
着替えをしに更衣室に向かっていると、屋上に向かう井宮と高城を見つけた。
なんだか二人とも神妙な面持ちだが、何かあったのだろうか?
気にならないでもないが、果たして俺が気にして良い問題なのだろうか?
まぁ、確かに二人とは一応友人関係ではあるが……。
「こういうので悩むのが面倒なんだよなぁ……」
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